悟と傑

 悟と傑は、作者の中にある二つの意識をそれぞれ仮託したものだと思うのね。
 今さら言うまでもないことだけどさ。
 「猿は嫌い」と正直に話す傑は、才能のない人間や、いつも保身に汲々としていて、才能のある人間の足を引っ張り、時には迫害する凡庸な人々に対する芥見さんの憎悪を背負っていると思う。
 その一方で悟は、だからと言って凡庸な人々を皆殺しにして理想郷を創るなんて現実的に無理だし、というあきらめ=悟りを背負っていると思う。
 無理っていうか、悟にはできるんだっけ?傑は「君にならできるだろう」と言ってたよね。
 俺術式に詳しくないからわからないけどさ。
 悟の術式ってけっこうシンプルじゃなかった?蒼、赫、茈と領域、その応用で大量虐殺ってできるのかな?時間をかければできる?
 悟は呪力が切れないから時間をかければできそうだけどね。
 まぁ話それてるからいいか。
 悟はなんでそれを望まないんだろう?と一瞬思ったけど、傑はなんでそれを望むんだろう?って考えるほうがいいのかな。
 傑って最初はけっこう理想主義者だよね。呪術師は非術師を守るためにいる、って言ってたよねたしか。
 仮面ライダーライアみたいだよね。
 それが非術師の嫌なとこ見て、いわゆる闇堕ちしてくわけだけどね。
 闇堕ちって言葉嫌いだけどさ。
 なんか闇堕ちプロセスがちょっと無理ある気がするんだよな。
 猿どもの嫌なところ見て殺意覚えるのはわかるし、そいつらを殺すのはわかるけど、「非術師」を皆殺しにする、って方向に行くかなぁ。
 だって術師の中にだって嫌なやつはいるでしょ。
 それに術師だってふつうにコンビニのパンとか食ってるわけでしょ。
 それって非術師が作ったもんでしょ。
 傑って頭いいからそんなことに気づかないわけないと思うけどね。
 傑なんだしさ。
 だから
 猿どもの
 やなとこ見たり
 皆殺し
 っていうのはなんか頭悪すぎる感じするんだよな。
 傑だったらもっと繊細な復讐プランを考えると思うんだけどな。
 せめて「嫌な猿は皆殺し」とか、もしくは「術師だろうと非術師だろうと、気に食わないやつは皆殺し」とかのほうが理にかなっている気がするんだけどな。
 猿が嫌いだから殺したい、っていうより、「呪霊の生まれない世界を作りたい」っていう気持ちのほうが実は強いのかな。
 そのための手段として、九十九さんからも「アリ」と太鼓判をいただいたことだし、ではいきますか、みたいな感じで殺し始めたのかね。
 だとしたらやはり傑は理想主義者って感じするよね。
 自分自身もゲロ味の雑巾飲み続けなくていいわけだしね。
 まぁでもゲロ雑巾を避けるだけだったら自分が飲み込むのやめるだけでもいいわけだけどね。
 でもやっぱり能力ある人は、自分にできることがあるのに世界から降りるってのができないのかもしれないね。
 やる気あるんだよね傑は。
 そういうとこすごいよね。
 
 

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