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スネークオペレーター〜特別諜報捜査官〜#17

前回までのあらすじ
成田空港近くの佐原に北朝鮮諜報員の基地がある事を発見したヤスたちはSWATと陸上自衛隊にも協力してもらって監視を続けている。アメリカの民間軍事会社ワグネル所属傭兵が入国したという情報も入り緊張が走る。また追跡していた他社のボルボトレーラーオーナー中井が佐原サービスエリアで怪しい動きをしている。一方、ヤスの彼女今井ミミはマスコミにヤスの事を叩かれる。今井ミミは堂々と記者会見をする。ヤスの過去の武勇伝をYouTubeで紹介している奴までいた。


朝、ミミより先に目が覚めたので、今日の任務のコンビニの店員の制服を着て準備していた。まだ外は暗い。
アルは相当疲れていたので暗くなった頃ぐらいには寝たと思うから、既に起きてスタンバイと準備をしていると思う。
一度フロアに出てみたら大型モニターにコンビニの秘密の入り口と中井のボルボトレーラーのコンテナ開閉扉を写している。
アルはヤスに気が付き

「やっぱ、昨夜、中井に動きがあった。」

と言いながら、中井のモニターに巻き戻す画面が写し出された。ヤスが

「なんだこいつ、北のS(エス)じゃねぇか?積んでるのこれ何だ。相当でかいぞ。」

中井のコンテナの扉が全開、そこに大型のゲート車がバックで尻どおしを着けて、大型トラックの木で構ってある大きな荷物をパレットの上に梱包してある何かの部品をハンドジョッキでコンテナの奥から積んでいく。
安定よく木の土台に固定してあり、ビニールで包み、パレットの大きさに木箱みたいになっている。
カメラから見える位置からはしっかり中身は見えないが恐らく飛行機の形をしたドローンMQ9だと推測する。
組み立ててれば、裕に3機分はあると思う。
アルが早送りする。積み込み完了して送りだす。早送りしながらどこへ行くのか・・。
するとフロアの入り口ドアが開く

「おはようございます!あっ、アルさん!」

とミミが起きて来た。アルが慌てて

「あら、居たんですか?昨日は大変でしたね。お疲れ様でした。」

するとミミも慌てて

「あっ、ご迷惑おかけしてすみません!」

アルが
「すでにヤスはコンビニでも声かけられてました。」

3人で笑った。ミミが

「今日は、記者会見の翌日とか関係なく、ドラマの撮影あるんで仕事なんです。マスコミ冷たくあしらわず、ちゃんと答えながら嵐が過ぎるのを待ちます。」

とミミが言うとアルが

「自宅、港区港南なんでしょ?大丈夫、パパラッチ」

ミミが

「そうなんですよぉ。すでに三脚いくつか立ってて長期戦でヤスがくるの待ってるのか、私の写真撮りたがるんですよ。アルさん、私、基地にしばらく居て仕事に通っていいですかね。」

アルは、

「良いと思いますが、指紋認証を設定しないとですね。エリー様に許可もらわないと。」

ヤスは

「この前、今井ミミちゃん連れて来なさい!ファンだからって言ってたから、多分騒動も心配してると思うんだ。ちょっと電話してみる。」

スマホをダイヤルして、エリー様に電話する。

「おはよう、任務上手く行ってる?その前にミミちゃん大変ね。ヤス大丈夫?」

するとヤスが

「エリーキャップ、実は今ここにミミ居るんですが、しばらく基地から仕事行かせていいですか?湾岸スタジオだし、出入り口分かんないので、しばらく私の部屋で・・。」

矢継ぎ早に

「もちろんよ!スピーカーにして。ミミちゃん、エリーラインハートよ。私がそこの責任者。しばらく、ヤスんとこ居なさい。指紋登録すれば出入りできるから。今回は堂々としてて良かったわよ。ゆっくりしてってね。」

「あっ、エリーさん今井ミミです。いつもお世話になってます。お会いしてないのにいつもすみませんでした。よろしくお願いします。」

「いえいえ、堅っ苦しいことは今日までよ。近々、行くわ!パパラッチ気をつけてね。ではまた、会った時にでも!」

「はーい!ありがとうございます!」

とミミ。ヤスが

「それでは、今日は佐原ベース侵入して来ます。それでは失礼します。」

と言って、スマホを切った。アルが指紋登録してくれた。朝飯はトーストとベーコンエッグなどヤスが作った。
ミミが、アルとヤスがコンビニの制服なので笑いのツボに入ったらしい。
モニターの続きを見る。
中井は、上り線のサービスエリアに居たので、東京方向に向かうが、成田空港で降りて下道をしばらく走り、筑波サーキットの近くの倉庫でフォークリフトで全部降ろした。
そして、空車で佐原パーキングの同じ位置に停車し、時間待ちしている。多分、2回以上は行ってるのだろう。
下り線のコンビニ入り口は、8時から9時と一時間間隔で荷物が届く。これはもう、佐原サービスエリアの地下基地で組み立てをしているのだろう。

「では、先に出動するからミミ、気を付けて仕事行ってね。入室退室はOKだよね。」

「うん、気を付けて行って来てよ。アルさんもそれではいってらっしゃいませ。」

と満面の笑顔で見送られた。アルが基地を出たら、

「うわーっ、やっぱ可愛いよね。考えてみるとスッピンの時しか会ってない。テレビで見る顔よりめっちゃ可愛いね。ヤス、いいなぁ〜!」

ヤスも自慢げに
「今は、ミミが居ないと仕事したくないほどだよ。ミミのために無傷で帰って来たい。いつもこんな武装してるけど、今日は絶対やばいだろ。」

とアルに言うと

「俺も待ってる彼女が居るとバリバリ仕事して日本は平和の国になってるよ。今よりもずっとね。」

とヤスを見ながらアルは言う。今日はアルの運転だ。
段取りは、前の入室した車が、退室して出て行ったら約40分くらい、10分程度早く入室して、あとはエレベーター降りたら一人ずつ結束バンドで拘束していく。人が多過ぎたら撃ち合いになるだろう。
今日も重い防弾チョッキ着て来た。あと、佐原SAに入ったらコンビニ見えないところで後ろのラッピングをシートで隠すことから始める。
それで、時間待ちする。アルが

「どうか、エレベーター降りたら2〜3人で受付っちゅーか、あんま人が居ない事を祈る。」

「そうだな。やりずらいもんね、最初から戦争ごっこじゃ。」

とヤス。

「いずれ今日も戦争ごっこなるよ。今日は弾玉のマガジンめっちゃ持って来たもん。本体焼けちゃわないか心配。あとは、相手の武器を拝借するけどな・・。」

とアルが言うと俺も張り切らなきゃと思った。
何かの情報収集と北の目的。今のところは、いつか分からないけど、葛西臨海公園の横、ハッピースターパークらしいが。と色々考えていると佐原SAに着いた。
この際、大型と大型の間が空いてたから突っ込む。外出て箱ピッタリのシートを被せ、ゴムバンドで4点止める。隠したら少し前へ行き、時間待ち。
カメラで見てたので、今ちょうど前のトラックが退出前だ。
今回はヤスは顔バレしてるかも知れないので台車の中はヤスで、アルが運んでエレベーター降りる役目だ。なんかワクワクして来た。
あっ、今、前の車が退出して行った。40分カウントダウンだ。
銃の手入れもして来たし、今日はもう一丁、警察庁からの支給品んシグ25口径を腰に挿している。昔はSWの日本仕様ニューナンブの回転式拳銃なのだが、もちろん今も制服警官はニューナンブを腰に認めているが、刑事はシグらしい。シグは小さいし、女性警官が使っているらしい。
そうしているうちに時間になったので、コンビニから見えないところで、シートは剥がし普通に到着して後ろのドアを開けながらわざと腕時計とか見て早かったかなぁ〜みたいなふりをする。
ヤスはさっきシートをはいだ時に横ドアから入って台車に入り準備完了。
アルがゲートを下げて台車を押しながら、カメラで見ているように真似して入って行く。
扉の鍵はバッチリだ。ロックを外す。エレベーターに乗れた。
アルも銃に手を掛けている。B1のランプが点いて開いた。暗かった。
先の方に受付みたいな窓があるようだ、今のところは誰も目にしてない。ヤスに合図する。喋らない。隅に台車を置いてヤスを出して2人で中に侵入して行く。
早く中に入って行かないと10分ほどで次の車が来てバレるので早めに片付けて行かないと。アルが親指を行き先に指す。小走りに底姿勢で行く。ちょうど2人、入り口に受け付けのように居た。
ドアを急にガーっと開け声を出されないように口で手を塞ぎ銃で威嚇する。2人とも驚いたようにこちらを目だけ見る。後ろ手に結束バンドで結束する。アルが小さい声で

「大きい声出したら殺す。この先に何人居る?ボールペンや鉛筆を10本くらい机に転がし、これくらいか?」

と言うと首を横に振る。一本づつ引いて行くと7本残ったところで頷く。ヤスが小さい声で

「そろそろ次が来るだろう?エレベーター止めとけ。とりあえず。」

この先7人なら楽勝だろう。制圧しよう。
ひとまず、この2人には、寝といてもらおう。
奥は広いが天井が低い。やっぱりドローンの部品ばかりだ。
なんで、こんなところでやるんだろ?インカムでアルにそう言うと多分高速道路ごと乗っ取って、ドローンの滑走路にでもするんだろう。さっきの2人北の人間だったな。

「おっと、これはあちこちで作業しているんで別れて俺は左回り、ヤスは右回りに。」

とインカムでアルが言うと

「了解!」

それを合図に一人ずつ倒れて行くと合計2人倒したところで銃撃して来た。さっきの奴に聞いた7人だと言うと2人倒したので5名残っていることになる。しかし、上り線のSAに繋がっていると言うことは連絡して応援が来てるかも知れない。
アルもヤスもジリジリ進む。発砲して来る方向には応戦する。
今のところ発砲して来るのは4人だ。早く倒さないと応援が来て制圧できなくなるので少し急いだ。ジリジリ前進して行く。ヤスがアルに

「向こう側の出口に逃げると思うから急ごう!」

今度はアルが

「了解!」

4人発砲していたのが、こっちの応戦で必死なのか2人しか応戦してこなくなった。
今度は走って前へ進んだ。応戦して来た2人を結束した。
日本語で話しても通じない。あと3人居ることになるが発砲して来ないので前へ進む。
ヤスが急に発砲されるが応戦して倒す。残る2人だ。
発砲音がした。ゔーーーっとと唸り声。

「アルっ、アルなのか?」

とヤス。

「あーっ!!」

と叫んだアル。

「アルッ、どうしたー!」

とヤスが叫んだ。
わざと消してあった天井の電気が一斉に点けられる。
アルが肩あたりを撃たれ、その上を軍靴で蹴られたから叫んだのだ。
5人居た。その中に中井も居た。ヤスが

「お前が黄(ファン)か、それとも宗(ソウ)か?」

「お前、死にたいのか?まず銃を置け。そしてこっちに蹴れ」

言う通りにした。
一人の男が駆けて来て体を身体検査される。シグも見付かった。マガジンも4本取られる。俺の持ってた結束バンドで結束された。

「日本のヤクザは使いものいならないし、お前ら諜報員も邪魔ばっかしやがる。在日朝鮮人の方が言うこと聞いていいよ。」

と愚痴を言って、中井に北の人間が近づいて

「こいつらどうすんの?黄さん。」

と興味津々で聞く。話してるのが黄だと分かった。黄は、

「そうだな。邪魔者は殺しとかないとこっちがやられちゃうからな。」

とニヤニヤしながら続ける。

「一緒にどかーんといってもらうか?ハッハッハッ!」

と笑うと中井が、

「早いとここれ運ばなきゃですね黄さん。」

と中井は回りに組み上がった完成前を4分割したぐらいの大きさの木箱に向かって言う。

「もう、ここに見えてる荷物運んだら終わりだろ。組み上げはすぐだから明日テスト飛行してスタンバイするか!」

とヤスとアルを捕まえたので邪魔者は居ないと安心しているのだろう。ヤスが

「お前ら、俺らが連絡付かなくなると諜報捜査隊とSWATが動く、止めといた方がいいぞ!」

「そう言うと思ったぜ。そのまま人質になってもらって一緒にどかーんと行ってもらう。お楽しみにな!」

と黄は言うと、中井へ

「早く運ぼう。組み立て班も待ってるし、このお客さん来たから楽しみが早くなったようだ。ナンシーにも早く報告できそうだ。」

皆んなパレットリフターで次々と上りSAに運ぶ。
アルとヤスは大きい犬小屋みたいな部屋に入れられた。
クソーッ!まんまと捕まってしまった。
今はジタバタしても仕方ない。アルも一緒に考えろ!と二人は小さく呟く。鉄製の錠付きの台車が現れた。
人を監禁するために作ってある物だ。1人用を2個持って来て、それに各々
入れられ錠を掛けられる。まるで手品のイリュージョンみたいだ。
積荷のドローンと思われる品は全部中井のコンテナに積んだ様だ。最後にフォークリフトで木のパレットに各々載せられ、中井のコンテナの後部の方へ積まれた。
コンテナの扉を閉められ真っ暗んなる。漆黒の闇だ。やがて、動き出す。
奴らは俺たちがどこへ行くのか知らないと思っているが、中井の車にIPカメラを仕掛けていたので筑波サーキット近くの倉庫に行くのは分かっている。恐らく、特別諜報捜査隊の方では、俺たちが身に付けているGPSを追っていることだろう。
捜査隊では体内に個人情報とGPSのチップが肩に入っている。防弾チョッキにもあらゆる隊の着衣にチップの充電器(非接触型)が付いているのでGPSは微少だが出ている筈だ。コンテナで真っ黒の中でアルが聞く。

「ヤス、着衣で敵に見つからなかったもの何かあるのか?」

「靴の中に小型ナイフならある。アルは?」

とヤスが言う。

「俺も靴の先のナイフとピッキングのピックならある。」

とアルが言うとヤスが

「なんとかなりそうか?筑波までそんなに遠くないが・・。」

アルがすぐ

「楽勝でしょ!ちょっと待っててねヤス。暗いから手探りなんだ。」

アルはすでに手の結束を外しているらしく、檻の錠を見付けているらしい。俺も何とかもう少しで結束は外れそうだ。
アルの方からカチャカチャと音がして

「クソッ、暗いから勘が頼りだよ。解錠できるのはミスターマリックぐらいじゃねーか。」

と笑いが出るぐらいイライラしながら、ピッキングやってるがこんな時は余裕の証拠だ。俺もなんとか両手は使えるようになったが、ピッキングを勉強してないので、その技術も持ってないし、ピックも無い。
普通、ピッキングは2本のピックが必要だが、どうにかして1本でやっているのだろう。

「おし、イケたかも!今の状態で、マスターが回れば・・・。おしっ!外れた。」

とアルが言うとカチャッと扉が開いた。手探りで俺のところへ来てくれた。

「さっきと同じように解錠できると思うけど、少し待って・・。」

とアルが安心させるように言って、カチャカチャ始めた。
俺はアルにまずひとまず手遅れにならないよう状況を見て基地に帰って再度武装して・・・とかパターンをいくつか考えていた。

中井のボルボトレーラーの助手席で黄(ファン)が仲間の宗(ソウ)に連絡する。

「宗、こっちは良い獲物を捕えたぜ!諜報捜査官の2人だ。邪魔者は筑波からトラックに乗せ替えて、スターパークへそのまま送る。早速だが、そろそろ始めよう!まずはナンシーに重大情報があるとまず告知させろ。今すぐだ。今日決行するから、夕方17時には着弾できると思う。」

と宗に黄は早口のハングル語で言うと、宗も途中からスピーカーフォンにしたらしく、赤坂のアジトが騒がしくなる。ナンシーはすぐ配信準備を始めた。宗は黄に

「さすが兄貴。あの2人を捕えたんなら200%成功間違いなしだ。傭兵たちもお待ちかねだぜ!17時に着弾と言うことは約1時間前で十分ですかね兄貴。」

と宗は黄に傭兵たちの仕事の段取りを聞く。黄は、傭兵5人に宗の電話を通じて

「宗、今スピーカーフォンか?傭兵たちにも聞こえているか?」

と聞いて確認を取った上で、黄は流暢な英語で

「諸君!お待たせした。今から作戦開始する。それについて、ハッピースターランドを18時までに制圧して欲しい。客とスタッフ全員をなるべく遠くへ避難させて欲しい。まず、スターランドの放送室を制圧、そこのスタッフへ避難する旨を日本語、ハングル語、英語で言わせるんだ。そいつらの避難は1番最後で良い。あと、諸君は武装して、スターランド内に人が残っていないか確認を頼む。17時ちょうどに着弾するんで、それに合わせて諸君も逃げてくれ。連絡は以上だ。終了したら成田空港へ向かってくれ。」

と黄が傭兵たちを労い、スマホを切った。その後、中井に

「この画面でインターネットの配信画面見れるか?」

とキャビン内にある大画面を指さす。中井は

「もちろんです。このリモコンでタッチパネル式です。」

と黄にスマホ型のリモコンを渡す。早速、タッチすると電源画面が現れ、「オン」にする。
検索画面が出る。〝ナンシー〟と検索するとナンシーの配信画面やインスタグラム、Xが出て来た。どれも緊急告知!と謳っている。配信画面に移動すると本人が、配信を始めている。

「え〜っと、今、100万人を超えたんで、配信始めます!聞こえてますか?んー(レビュー画面を見て)聞こえてるってことなんで配信始めます。あの〜、先日7月9日にハッピースターランドに行ったらあかんと言いました。それが良からぬ情報で今日の17時、午後5時やね。もしスターランドに行く予定の人、もしやその時間にスターランドに居る可能性がある人、17時やで、あの近辺におったらあかん!だから、18時くらいまでは離れとき!これ嘘の情報ちゃうで、ほんまに。俺は遠い遠いドバイに居るから平気やけど、ほんまのほんまに北朝鮮の上の人に聞いた情報や、言ってええのそんな情報を?って聞いたら、日本は嫌いだけど、日本人は好きって言うねん。と言うことはやっぱ老害政府やな。そんなことはあとでええわ。とにかくハッピースターランドに今日の17時以降におったらあかん!近くもや!情報によると、よう聞いとけよ!ICBMって言う弾道ミサイル2発。その他4機爆弾打ち込まれるらしいわ。ハッピースターランド一瞬にして無くなんで。まぁ古いからええんちゃう!人間さえ、犠牲にならなかったら。相手もそう言ってる。今日は遊びじゃないと。」

黄が納得したような顔で

「やっぱ、ナンシーは顔もいいし喋りが上手やな。後追いニュースもすぐ出るだろうな。」

黄はいつまでも画面に集中してあちこち検索していた。

一方のアルとヤスは何とか脱出に成功したがコンテナの中どうしようもない。アルが考えて考えついたのが、トレーラーの連結部分がコンテナの前方付近にあるので、ヤスに

「連結を切り離す時にさぁ、カップラの解除レバーを引くの覚えてるでしょ?」

とアルがヤスに聞くと、

「もちろん、切り離す時は台車の足を出して、エアーホース2本外して最後にカップラの解除レバー引くけど・・・。」

ヤスが頭の中で、あーそうか、何とかなるかも・・アルが

「ちょうど、この辺の下にレバーがあって、そのレバーを手動で引っ張る鍵と言うかレバーが引けるようになるワイヤー付のロックあるよね。あのロック引いたままカップラーの解除レバー引いたらどうなる?」

とアル。すぐさまヤスが

「そうか、信号待ちとかだったら、台車だけズドンと落ちるし、落ちたまま少し前に行くからホース2本ともちぎれて台車にブレーキがかかる。」

アルが

「そうと決まったら、カップラーの横あたりをナイフで掘ろう。コンテナは基本下が木だから穴すぐ空くよ。あとドローンの配線コードを切りまくろう!」

とアルは靴の先に付いたナイフを出して床を蹴り始める。
すぐ一部穴が空きコンテナの中が明るくなる。ヤスも小さいナイフを手にドローンの配線を次々と切って行く。中井には気がつかれない。
解除レバーを引く時は止まった時に一気に引かないと解除できないので、穴は空けても信号待ちを待つ。
アルも俺もコンテナがドスンと落ちてもその穴から出れるくらいの穴を空けとかないと逃げられないし、落ちて気がついた中井を倒さないといけないので、大きめに空ける。
真ん中あたりに体が入るぐらいの穴でも構わなかったけど、出た途端に後輪に引かれたらたまらない。
やっぱり、コンテナ落としてホースを2本切った方がリカバリーまで時間稼ぎが出来る。アルがちょうど良い大きさまで穴を空けた。ヤスが

「よし、信号待ちで止まったらアルはワイヤーでロック引いといてくれる。俺はカップラーの解除レバーを確実に引くわ」

カップラーのレバーは初心者は特に女性ドライバーは力が要るし、解除できない人が要るほどと、その時スピードが遅くなって、プシューとエアーブレーキの音がして信号待ちに停車した。

「よし、今だ!」

アルが、ワイヤーを引いている間に解除レバーを思いっきり引いて、解除位置に引っかかることができた。あとはスタートするのを待つのみだ。
先にアルが出る作戦で落ちた時に出来るであろう隙間を予測し待機。
おっ、スタートした。急にドーンッ!!と音がし、その次にプシューッとエアーの漏れる音が止まらない。
大概、エアーの音を止めようとそっちの方へ行きホースチャック外すかコルクレバーを止めるかする。
アルは予定通りスッと外に出た。続いて俺も外へ出てアルの方へ。アルは後続の車両が北の人間らしく、何が起こったか分からず、アルに2人とも制圧され、車を確保。
トレーラーで中井と黄はアタフタしている間に日本車のミニバンを拝借して先に現場を去った。車の中に乗っていた男のものなのか、ダッシュボードにS&W(スミスアンドウェッソン)38口径の回転式拳銃一丁とコンソールボックスに北朝鮮兵が使う黒星と言われる自動拳銃トカレフがあった。あと、スマホもあったが、ロックがかかっていた。アルが運転しながら、

「大概、官給品だか初期のまま皆んな使えるように0000とか9999の10通りだよ。」

と言ったので、まず0000としたら一発で解除できた。中は当たり前だが全てハングル文字だったので、これは日本語設定にして、基地に連絡した。すぐエリー様がでた。

「あらぁ、もうすぐ電話くると思っていたわ。基地の衛星カメラで北朝鮮の発射場所は発見したわ。こっちの手柄だからウチで撃ち落とす。早く帰ってらっしゃい。PAC3はお待ちかねよ。あと、筑波サーキットの方もカメラで見てると完成して、あなたたちが阻止した2機は間に合いそうにないから多分2機で何とかする筈よ。とりあえず、あと1台のPAC3は矢﨑さんに持って行ってもらう。場所はねぇ絶好の場所があったわ!東京ゲートブリッジよ。これから通行禁止にしとくわ。じゃー待ってるわ。」

と一方的に言われて切れた。アルがヤスと顔を見合わす。これは大仕事ではないか、急いで帰ってPAC3の移動から着弾地点予想から迎撃設定を生意気なAIとやらないと。時間的には全然間に合う。だが、スターパークの人たちは全員避難したのか?と色々心配している間に着いた。

中井はクソッ、やられた!と思った。

「黄さん、コンテナは足出して、エアーホースのスペア持ってるからチャックごと交換すれば、再度繋いで出発できますが、どんな感じですか?」

黄はコンテナの後ろの扉を開け、北の人間とハングル語で怒りを表していた。なんとコンテナの中のドローンに見えるコードと言うコードをナイフで切断されていた。ヤスがやったんだ。リカバリー不能に用心の為に。

「こんな線切られたら繋ぐだけで裕に1日掛かるわ。あいつらどうやって出たんだ?檻から出れたとしてもこんな手があったのか中井?!」

すると中井が

「あいつらトレーラーのプロだから、こんな事考え出すんだなぁ。よく考えたもんだ。」

黄が

「何、あいつらのこと感心してんだ!こっちは2機とも使いものにならんのだぞーっ!チキショー!」

中井が

「とりあえず、連結治ったので筑波行きますね。」

黄が

「クソッ!宗に何て言えばいいんだ!」

とだけ言って助手席のダッシュボードを足で蹴り飛ばした。

(つづく)


#創作大賞2024

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