スネークオペレーター〜特別諜報捜査官〜#14
【前回までのあらすじ】
芸能人になった今井ミミとデート中に付き纏うパパラッチの排除を機に、ヤスは自分が特別諜報捜査官である事を打ち明ける。ニュースで大々的に報道していた茂原の倉庫の事件がヤスの仕業であることも教えた。一方、黒沢会の若頭で実質トップとなった上田公二の動きが今後コカイン密輸ルートと関係かるのか気になるところだ。
〈第十章〉
銀座の高級クラブサードフロアのカレンから久々に連絡があった。カレンはやす のS(スパイ)である。
「ヤスさぁ、全然最近音沙汰なしじゃん。ミミちゃんとばっかりじゃなくて、たまには付き合ってよ。」
と聡子の事件以来会えていないカレンは茂原の摘発の進捗も知りたいのか連絡して来たのだろう。実際、茂原の摘発から花田の取り調べを主にヤスがやっていた。
「いや〜っ、色々と忙しいのは分かってくれよ。情報が錯綜しすぎて、俺の頭の中の情報を全てまとめてしまうと日本は沈没してしまうのではないかと思っちゃうよ。」
と基地で書類を整理していたヤスはカレンに言った。カレンも予想して、これまで連絡を遠慮していたのだ。
「私は、ヤスにも言った覚えがあると思うけど、ネネが暴露系ユーチューバーの配信に写り込んでたのが腑に落ちなくて、最近また頻発する様になった配信でも意味深なことを言ってるのよ。」
そう言えば、ネネの情報でその暴露系ユーチューバーのナンシーを昔から知り合いであることや、何か企んでいることは調べでも聞いていた。その企みでも北朝鮮の諜報員の話が出る。
「ナンシーはね、日本国民も参院選挙でも見て分かるように俺は支持されているし、これまでの選挙のあり方や日本の政治が、いや日本の政府が不良政治家のハリボテのバラック小屋だと言ってね。やられたことはやり返すと、何か訳わ何ないこと言ってるの。なんか、ナンシーが言うと正論に聞こえちゃうのよね。私の予想だけど、北朝鮮の人たちと何か考えてるんじゃない?って思ってる。北朝鮮だけじゃないわよ。中国人もなんか最近銀座にも大金使って遊んでいるらしいわよ。」
「カレン、ありがとう。いつも色々心配してくれて、カレンの予想は何でも当たるから驚くよ。占い師でもなったらどうなの?」
といつも饒舌に店で客が話している事を教えてくれたりする。さらに、
「なんかねぇ、最近は浦安のマンションや土地を中国人が買い占めたり、あのオリンピック選手村だったマンションの晴海フラッグが転売ヤーのせいで、売値が買値の2倍で売って儲けてるらしいよ。まあ、金持ちの日本人も乗っかって儲かってるらしい。湾岸エリアは凄いよ今。」
ヤスも裏は取ってないが、中国の日本への侵略は今の俺たちの仕事であるため、カレンの情報は芯を食っている。
「カレン、いつもありがとな。そうだな、そろそろ動かないと本当バラック小屋の政府になっちまうな。」
とヤスがカレンに俺を言って近いうちに店に行くと約束し電話を切った。そろそろネネも見付けて、行確(行動確認)し、アジトを見付けなきゃだ。そのユーチューバーのナンシーと一緒にいるのか?北の人間と何か企てているのか。茂原で摘発した7人からも北の人間のボス黄(ファン)とそのバディである宗(ソウ)と他にも何人か北の人間が都内に散らばって活動しているらしい。
午後からエリーラインハート様が小会議をやるとアルフレッドとヤスが呼ばれた。
茂原の摘発から初会議だったので、何か新しい情報やプロジェクトがあるのかと思った。アルフレッドもいよいよ北の本丸に乗り込むんじゃないですか、とか怖い予想を言って脅かす。
いつもの様にエリー様が登場。今日は、真っ赤なワンピースにツヤツヤのボブヘアーだ。ダイヤモンドと思われる石をチェーンで耳からぶら下げている。何かいつもどこかかっこいいポイントを創作して背筋を張って大股に歩いて来る。
「茂原以降、色んな情報が出ている様ですね。分かってはいると思いますが、裏取りが必要です。私が独身で警察機関と裏取りして、確認できたものが何点かあります。まず、ネネこと根本京子は、木更津市にあるキャバクラ〝ミント〟に現在在籍で不定期ですが、週に2〜3回出勤しています。彼氏の上田ですが、たまに店にも顔を出すし、店に来た日には木更津のネネが借りたと思われるマンションに宿泊して帰ります。なお、この仮宿ですが、北の人間ほか、何故かドバイに居るはずのユーチューバーナンシーが居たとの情報もあります。ナンシーの情報としては、ナンシーに逮捕状を発布した所轄が確認中でそろそろ、ナンシー容疑者における常習脅迫罪についてはドバイに居たら時効はストップしているのですが、あのあとに何らかの方法で帰国していたのなら、帰国したと判明した日から3年が経過していたとしたら時効が成立するので、ナンシーに関しては他の容疑で身柄を取るしかないわね。ナンシーは放っておくとして、ネネが北の人間のアジトに度々足を運んでいるわ。木更津市の奥地にある壮大な盆地にある工場跡地よ。大きな草原で手前はキャンプ場。キャンプ場を通り過ぎたあたりに工場はあるんだけど・・・。」
とエリー様は言いながら、大型テレビに衛生写真を写し出す。レーザーポインターを使って説明する。
「ここが国道から入った筋道をグングン進むと途中から砂利道になるの。工場に入るにはこの道を入るしか無いわ。砂利道を進んで行くとゲートがあって関係者以外は入れないようになってる。ちなみにSWAT部隊に入り口が他に無いのか、調べてもらったけど、網格子で囲まれていて、四方八方にカメラ塔が建っていて厳重になっているらしい。SWATが網のゲートの下から穴を掘って入れるんじゃないかと言う意見もあったが、試してはないそうよ。それで、これを見て。」
と工場の回りのゲートから、工場の建屋を写す。
「建屋の屋上に何人か監視がいるけど、武装していると考えて良い。また、建屋を取り巻く様に5箇所に監視塔があるわ。迷彩に塗装してあるから良く見ないと分からないわ。あとリポートの横にロケットの発射台が出て来るような感じのある四角い穴があって、今は鉄板で塞がっている。防衛省からもここは重大危険地帯と見て常に衛生で監視してるわ。こういうところにネネが頻繁に出入りしてるの。」
とエリー様は一気に言い、何か意見は?と言わんばかり間を取った。ヤスが聞く。
「やっぱり、ナンシーが最近配信していることと、北の何かの企みがどうも結びつくと思いますが。ナンシーは何を配信しているんですか?」
エリー様が
「それに関しては、私自身が興味なくて見てないの?ヤスもアルも見てないの?」
両者とも首を横に振る。
「じゃあ、これから2人で視聴会して。それと今日からでもネネの行確始めるように。」
2人揃って
「了解しました!」
エリー様が以上と言い去って行った。アルが
「お腹減ってないっすか?」
とヤスに言う。
「そう言えば、今日は朝から何も食べてない。」
アルが
「じゃあ、いつものあんま美味しくないけど、中華料理でも食べませんか?ナンシーの配信見ながら作戦考えて、一度木更津に行きますか?」
ヤスがあまり気が進まなそうに
「ネネって何時に仕事終わるんだ。アル、店に出勤してるか聞いてみてよ。アルが飯を注文したらミントに電話入れてみます!」
ヤスが
「じゃあ、お願い。武装も少しして行った方が良さそうだな。」
とアルに言うと、中華屋に電話中で
「エビチリ要ります?あと、麻婆豆腐は?」
ヤスは
「任すよ。どうせ、いつも食べきれないほど頼んで余るし・・。」
ヤスはいつも中華料理だと、チャーハンを取り分けしてもらって食べたら他が食べれなくなる程大盛りだ。アルは腹減ってると機嫌悪いから何も言わず任す。アルが注文終えてネットのユーチューバーナンシーを検索しながら
「やっぱ武装はして行きましょう。ネネの行確もそうですが。北のアジトも気になる。今日は出勤していました。」
ナンシーの動画も見付けたらしい。最新から見て行く。ナンシーが黒い日焼けした顔で言う。
「俺は、俺をこんなところへ追い込んだ日本の政府に仕返しをしてやるつもりだ。パスポートを失効させたり、国際手配することか?少なくとも俺を支持し、参院選で当選し、国会議員になりました。YouTubeで暴露話をして興味持った人がこんなにいたとは思いませんでした。でも国会に行けなかった。正確に言うと帰国させてもらえなかった。某有名人が警察と裏社会に手を回したためです。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。ある人間から裏社会とは話が付きました。警察の方は、ハシゴ外してやるつもりです。あと日本政府の方。参院議長のロシアのスパイジジイはどのでもいいねん!今の日本がどのぐらい海外から侵略されているのか見せつける時期が来たと思う。俺は首になったけど、一時日本を代表する政治家になれた。良く考えて欲しい。国民が一致団結すれば老害政治家をを国政から追い出し、日本は若返った方がいい。成人と言う年齢も18才からという時代です。もっと日本を変えようと言う意識を持って若い人たちで選挙に行って、政治家になりたい人はユーチューバーになって皆んなで豊かで住みやすい日本作って行こうよ!頼むわ!それと来月は浦安のハッピースターパークには行かんでくれ、これほんまに言うとるから!7月9日や日曜日。2度と言わんで7月9日日曜日やハッピースターパークには言ったらあかん!俺が言ってる事が本当か嘘か分かる日や。ほなまた。」
すごいエキサイティングな配信は終わった。
アルフレッドは酢豚の肉を食っていた。ヤスはチャーハンを半分ほど食べたところで、食欲が無くなって来た。嘘なのか、本当なのか?ナンシーはいつもこんな訴え方で喋るのか、遡って見て行った。確かに芯を食った事を言っているように感じる。ハッピースターパーク葛西臨海公園の隣の大きなアメリカにもあるテーマパークで1日に何万人もお客さんが訪れる。あそこで何かあると大惨事になる。ハッタリでもナンシーが配信した100万人以上はいるだろうからハッピースターパークには行かないと思う。このことがさらに他のYahooニュースとか新聞、テレビとかで拡散されると、ハッピースターパークも1日の収益にも響くだろう。とりあえず、アルフレッドとこれからネネの行確に行って何か情報収集してこないとだ。敵のテリトリー内に入って行くには、できればアジトまで制圧したいものだ。茂原の事件が摘発できたので、アジトも見付けられた。摘発した7人が7人とも似たような計画であるのは分かるか、全部が裏取りができておらず、木更津は何らかのアジトであると確信したと言う事で、きっかけがあればアジトに侵入したいとも思っている。
とりあえず、SWATにも待機してっもらっている。さぁ、出発しよう。アルと2人共迷彩模様が入ってない戦闘服に車には重機もある程度載せた。今回はアルの使っているベンツのGクラスゲレンデ。最近は乗っている人も多いので、そんなに目立たなくなった。
「アル!準備OKだけど、行くか?」
親指を立てて運転席に向かったアル。さぁ、何が待っているのか?相手もいつか来ると思っているから訓練してるだろうな。
〈第十一章〉
木更津市内に入ってきた。時刻は午前1時40分。
ミントの看板はまだ電気が点いていた。店の裏は住宅となっている為、前に店の入り口があって、横に調理場の扉が1つある。左横には階段がある。調理場の扉から今1人外に出て来て、丸いパイプ椅子に座ってタバコを吸っている。タバコと言えば、この任に就いてから加熱式タバコをすっかり辞めてしまった。
街中に喫煙場が少なく、ボルボも禁煙にしてあるので、特に吸わなくても良くなった。基地も禁煙で喫煙場もあまり人を見なくなった。
店の監視をする位置も決まった。アルもヤスも肩のところにカメラが装着されている。トイレとかプライベートな時は任意に一時停止できるが、あまり長いと撮影が再開される。時刻が午前2時ジャストになった。
少し早くミントの看板は消えていた。多分お客さんが切れないが、帰らないかのいずれかだった。今頃ママが、丁重に閉店事案の告知と会計用紙を出されている頃だろう。午前2時20分過ぎた頃、入り口のドアが開き5〜6人の客とホステスも同数ほど一緒に出て来た。ドレス姿のネネが居た。
ヤスと会った時は、シルバーのスパンコールワンピースだったが、今日は青系の明るいやはりスパンコールワンピースを着ていた。ノースリーブで、膝上のミニスカだ。脚に自信があるのだろう。気に入ったお客なのだろうか、出口の扉を出たらハグをして両手でバイバイをしている。
アルが腕を腕でトントンする。黙ってアルの視線の先を見る。少し離れたところで目視では運転席が見えない距離に白いベンツのCクラスが停まっている。
望遠鏡で確認したら上田がいた。しかも、1人だ。ネネを迎えに来たのであろう。アルもヤスも上田が迎えに来るかもと想定して目視では見づらいところに監視位置を定めた。上田が店の近くまでネネをピックアップにい現れるのを想定した。
午前2時40分を過ぎた頃、ネネが真っ先に店を出て来た。予想通り店の前に近いところで上田のベンツがネネをピックアップした。遠巻きに尾行を遂行開始した。相当距離を保ち尾行している。しかし、何か嫌な予感がする。用心するに越したことはない。
数キロ離れたコンビニで何か買い物をしている間も止まらないで遠巻きに尾行した。街から少し離れた住宅街ではないところ広場に平屋建てのプレハブを立派にしたような建物の駐車場に入って行く。
ここがネネと上田の住処なのか。分かりやすく言うと一時的に作られた建設屋の事務所みたいな感じで部屋数も多い。駐車場には4〜5台2tトラックとかハイエースなどが停まっている。
脇道もあり、裏まで道が通じてる感じもするが、一度通過して考えた。アルと相談して、今日は場所が判明したので、次回は昼に電気工事屋風に変装して再び来た方が良さそうだ。多分、尾行されている可能性がある。アルとヤスの予想だった。そしてアルが
「もう少し先に行ったら左折して全部電気を消して停まるから、それから10分待とう。それでも車はばれてると思うから、上田のベンツにGPSを装着して来るよ。忍者みたいに草の中をそーっとね。」
と言いウインクして見せた。日本人はあまりウインクしないが、アルは良くする。音もさせないでしばらくジッとしていた。
「それじゃ、行って来る。」
と言って、身軽にGPSを持って出て行った。暗視スコープと赤外線スコープを装着して行ったから、トラップにはかからないだろう。GPSも装着してバレやすいところは車の後部トランク下と相場は決まっているが、そこにも装着。フロントグリル内にも2個ほどわざと装着して帰って来た。無灯火のまま幹線道路に出て、ひとまず基地に帰り、様子を見ることにした。次に行く時は、昼に電気工事屋の実際の看板を貼り付けした。ADバンを使用することにした。
後部座席より後ろは全て黒のガラスフィルムを貼ってって、外から荷物が見えない様にしてある。あと、車の上にキャリアを組んで脚立を積んでいくようにした。翌日、再び木更津に居た。上田の車のGPSは2個ともバレずに現在は東京にお出かけのようだ。
昨日ネネと一緒に入った住処の方を調べに調べ中にリビングを入れて7部屋あることが分かった。最新鋭の指向性盗聴器で窓の開いてる部屋からの声を収集、ネネとナンシーらしき人物の声、あとネネのハングル語、北の誰か分からないがハングル語が聞こえる。録音して翻訳ツールで解析した。
話によると、葛西、西葛西、浦安、ヘリポートのある若洲など中国や北の金で土地や建物を買い占め、日本のIR計画より膨大なリゾート開発を考えているとか、秋葉原の電気店は、ほとんどが中国系の仲間が買い占めて、日本人を使っている状態だとか。
それはそれはスケールのでかいことばかりが話に出て来る。ある程度、こちらの組織でも調査はしているが、残念ながら中国系にどこも侵食されてるみたいだ。それと話にも出た木更津のキャンプ場奥にある基地は、こいつらの中で木更津ベースと名前が付けられていて、他にも佐原ベースもあるらしい。
佐原ベースに関しては、新情報なので直ぐ調査開始している。成田空港が近いので、かなり危険である。
あと、日本の暴力団との繋がりだが、今、上田がいないので小馬鹿にしていて、何の役にも立たないと話していた。暴排条例や暴対法などで規制されていて、逆に一緒に居たら危険と見ているらしい。上田も金魚の糞みたいにネネがハングル語が出来るだけで何かおこぼれをもらおうとしているみたいだ。
あと、ナンシーは情報の拡散力を買われていて、無駄な死人は出したくないのと、若い人を中心に日本の政治を変えて、防衛とか何か言ってないで、既にミサイルとかロケットとか武力で、反抗すると言ってる割には、土地や建物、会社などなど海外侵略がひどい。などなど、いかにもそうな事を話しているが、人命を守ることが我々の使命なので、もちろん諜報捜査が主なので、これ以上侵食させないように守ることと、状況掌握することが今の仕事である。
話は色々出るが、ナンシーが宣言した7月のハッピースターパークの事が出てこない。7月9日に何かをやろうとしていることは確かだと思う。
フェイクニュースであってほしいが、今まで彼は嘘をついていないと思ったからだ。上手い具合に話を盗聴出来ていたのだが、途中で窓を閉められてしまって、指向性ガンの盗聴器から声がしなくなった。
新しい情報としては、佐原ベースがあると言うことぐらいか。北や中国が買いまくってる土地建物については、確認済みなので放っておこう。どうすることもできない。
これは一旦、基地にもう1回帰り、本格的に木更津ベースあるいは、佐原ベースに侵入捜査しなくてはならない。
基地に帰ったらエリー様が待ち構えていた。多分、佐原ベースの件だと思う。エリー様が
「お二人ともお疲れ様!」
大型テレビを点け、いつものポインターを持って、ミミと先日行った成田空港方面の衛生写真を写し出す。
「あなた達が収集して来た佐原ベースと思われる場所が見つかりました。成田空港へ行く高速道路の最終点〝潮来(いたこ)〟インターの手前により線の佐原サービスエリアがあります。そこの近くの森林付近にそれらしいところが見えます。衛生写真だと農家のトラクターとか入れる倉庫に見えますが、少しその手前にある建物と違和感があり、現在SWATが、調査中です。恐らく、この森の中に基地があると思われます。調査が終わり次第、動きを考えましょう。それと、都内の暴力団がコカイン売買で多数逮捕されているそうです。花田が破門後、押収したコカイン以外の物が、関東の暴力団組織に流れていると思われ、恐らく上田が元締めで売人に流してると思われます。茂原のコンテナルートは摘発しましたが、他のコンテナルートもあると思われます。ヤード内にあるコンテナを1個ずつ調べるのは無理なので、上田ルートを摘発するしかないでしょうね。ネネのハングル語はネイティブね。翻訳してこっちでも聞いていたけど、本当日本はどうにかしないと、あと何年かで中国に乗っ取られてしまいます。なんとか阻止しましょう!」
とひとまず話すと、笑顔になってヤスに近づき
「ヤス?彼女出来たらしいじゃない。」
「はい、お陰様で。」
「仕事のことも話したの?」
とエリー様。話したことを伝えると、
「じゃー、結婚する気なのね。安心した。今度、紹介しなさい。私もファンなの。」
と言いづらそうにエリー様。
「えっ、そうなんですね。いつでも・・・。」
ヤスは驚いた。ってか、ギャップに萌えた。
「ちゃんと守ってあげないとね。以上!引き続きよろしくお願いします!」
と言い捨て、ハイヒールの音を立てて去って行った。
SWATからの報告によると、トラクターの停めてある小屋の奥に鉄扉があるとしか分からないと言う。裏は山になっていて恐らく地下基地があるのではないかとのこと。サーモグラフィーの装置でも反応は無いとは言っている。小屋の奥にあるとされる鉄扉には興味がある。早速、近くに監視用カメラを仕掛けに行こうと思う。今日は少し暗くなってから佐原ベース用の監視カメラ設置ともう一度木更津に情報収集に行かないと・・・とアルと思っていたら、突然、情報が飛び込んで来た。豊洲の方向で爆発があったと警察発表があった。すぐ、基地で使用している衛星画像を大型テレビに写した。アルが
「あれっ、ヤスん家じゃない?」
慌てて、ズームにして良く見ると俺のマンションだ。しかも、205だけ綺麗に狙ってミサイルが何かで撃ち込んでいる。
「うわっ、俺んちだぁー!行って来る。」
慌てて湾岸署の車庫からサニトラで自宅へ向かう。アルもゲレンデに乗って付いて来るつもりだろう。でも、何故俺ん家?茂原摘発の仕返しにしか考えられない。サニトラもいつもよりアクセルを踏み込む。自分でもこんなサニトラって走ったのかと思うほどの加速だ。カー部品専門店の方から入って、駐車場に入ろうにも消防車で入れないから路駐して中へ入って行く。すでに鎮火しているみたいで、警察が現場検証している。手帳を出して入っていく。現場で指揮していた警官が
「誰だあんた?ここの住人か?」
と言うので、そうだと言いながら手帳もついでに出す。指揮していた警官は警部補で2階級下なので
「失礼しました。内藤警視!残念ながら、計ったように205号室だけ全焼です。」
本当に隣には何の影響もなく角だけ砕けている。
「爆発と聞いたのですが、どういうことですか?」
とヤスが聞いたら、警部補が手袋をして
「これですよ。これで爆弾を爆破させています。」
黒く焦げているが、元は白だったのだろう。バラバラになっているが何分割かに割れていたけど、飛行機の形をしたドローンだ。警部補に
「このドローンを小さいものまで集めて本庁に回して下さい。コンピュータで再現してみます。」
とヤスが言うと、
「もちろんです。了解しました。」
と任を出されて喜んでいた。でも、何故俺を狙ったのか。最近のドローンだ。飛行機型の爆弾が搭載できる最小限のタイプだろう。マスコミのヘリが沢山飛んでいる。当局には誰の家と言っているんだろう。すぐエリー様から電話来た。
「安心しなさい。会社員の男性で報道してあるわ。」
続けて、
「ドローンの件も隠してある。目撃者はいないみたいだから。」
火の不始末とか、そんな報道で止めてあるらしい。高速道路の真横だから見た人何人かは居たでしょうに・・・。ヘリも出てるし・・・。
「あっ、分かりました!」
クソ!何で俺ん家なんだ・・、しかも、方向も爆弾の量もピッタリだ。下の階にも何の被害もないらしい。まっ、保険も効くから大家も心の中では喜んでいるはずだ。アルが
「ひとまず、帰りましょっ!」
と言ったので、
「俺ん家はここなんだけど・・。」
と言ったら、手で顔を隠して笑っていた。
「せっかく、一から揃えたのに全てを失った。あるのはサニトラだけだよ。」
まっ、このところ基地の服ばかり着てたから、服とか不自由しないけどね。官給品でも高級品だしな。
その時電話が鳴った。予想通りミミだ。電話に出ると
「ヤス、ヤスなの?あー、良かった!ニュースで見た。火の不始末って何やってんの?ビックリさせないでよー!!」
って安心してるのか、怒ってるのか、いずれにしろ心配してくれて電話くれたんだ。可愛い。ニュース通りってことにしといた。爆破されたとか言えない。
「ヤス、ホームレスになったね。基地の方が広いからいいじゃん。でも、あそこ窓が無いからねぇ〜。」
と自分と同じことを考えていた。急にミミが
「うちにおいで。港南だから近いし・・。スペアキー渡すよ。」
「うん、ありがとう!でも、今日は行けない。家事の手続きもそうだけど、仕事が忙しくて・・。」
佐原も行かなくてはいけないし、木更津ももっと情報欲しいから行かなくては・・。アルに
「今日は、アルが佐原の監視カメラから設置行く?俺、木更津に早めに行ってタイミング見て、行けたら盗聴器を設置したいから。」
アルは、
「どっちでも構わないっすよ。何か良い事思いつきました?」
「いや、もしかすると誰も居なくなるタイミングがあるのかも・・と思っただけだけど。」
アルが
「佐原ベースの監視カメラ、SWATでも誰でも頼みますか?俺も木更津早く行きたいっすよ。」
と俺が考えたことと同じことを言った。ヤスが
「アルさぁ、エリー様にそう言ってくれる?そのつもりで木更津向かおうよ。」
アルが
「俺っすか。木更津にワンチャンあるんで、佐原ベースの鉄扉監視カメラを誰かにってことで言いますよ。」
「はい、俺がっす。アルさんお願いします。」
アルが、火事で家なき子になったから今回は俺が言うと情をかけてくれた。今日、絶対何か情報を掴んでミミんとこ早めに行こうと思った。
(つづく)