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スネークオペレーター〜特別諜報捜査官〜#6

前回までのあらすじ

国内最大級の極桜組へ帰参した元神戸極桜組若頭の花田誠は、以前兄弟分である大内 大斗(ひろと) 極桜組 若頭補佐 桜生会会長の預かりとなって、極桜組内若頭補佐率いる桜生会の舎弟頭として、三次団体組長といて復帰した。だが一度極桜組から割って出た事もあり、カメレオンであると見なされなかなか昇進しなくてイライラし、もう一発花火を上げて男になると誓ったある日、正体不明のヒットマンに襲われ、なんとか交わしたが情夫の詩織が射殺されてしまう。一方、堅気になったヤスは矢崎の経営する晴海運送でトレーラーの運転も慣れ、仕事をこなしながら合宿免許で知り合った今井ミミと連絡取りながら仲良くなっていく。


「おはよう。ちょうど会社に着いて少し早かったから車で点呼の時間待ちしてた少しならいいよ。」

ミミには、最初は上からものを言っていたけど、いつの間にか優しく接するようになっていることに最近気づいた。

「内藤さんさ、昨夜言おう言おうと思ったけど、きっかけなくて言えなくて・・・。私、内藤さんに嘘付いていたことがあって、早く言わなきゃ、早く言わなきゃって焦ってたら、今になっちゃった。」

とミミが言うが、話のトーンに大胆なことではないと分かる。それを聞いて嫌いになるとか、まだ付き合っている訳でもないし、そんな雰囲気はまだ無い。言うならばお兄さん的な感じでもある。

「もしかして、彼氏できちゃったとかじゃ無いよな?」

と少し俺が気があるジャブを出しといた。

「そんな訳ないよ。彼氏はまだ作んない!そんなんじゃなくて・・・。内藤さんに初めて会った時、あっ、あの時の宿で知り合った人にも上場企業の社員だって言ってたでしょ?まっ、会社が上場しているので、嘘じゃないんだけど、実は私、女優やってて、売れないと思ってたんだけど、去年ね、ドラマの仕事で寝る暇もないくらい撮影して、コマーシャルと他にも色々で始めるから言っとかないと内藤さん驚かれたらとか、あいつ嘘言ってたのかとか思われると困るなと。会社からも親にも言わないように・・・って言われたからゴメンね。今になっちゃった。」

と、ミミは申し訳なさそうに言ったけど、

「凄いじゃん!おめでとう!うわー嬉しいなぁ、芸能人と知り合いって初めてだわ。」

とヤスは大きな声で言った。その反面、俺には手が届かないじゃん。ミミは・・・と思って残念だった。

「さっきね、テレビ見てたらCMで私出ててびっくりして電話した。」

「そうだったんだ。でも、良かったね。夢だったんでしょ。いいな夢叶ったって。」

「うん、ありがとう。でも、内藤さんとは同じ関係でいたいし、正直、早く会いたい。本当だよ。もっともっと内藤さんのこと知りたいよ。こんなこと自分から言ったことないからなんか恥ずかしいけど。」

ヤスは驚いた。告白されたみたいで嬉しかった。

「そんなこと言ってくれて、ありがとう。あとで土日と夜ならいつでもいいんで空いてる候補日をいくつかライン入れといて。お祝いしよう!すぐ会える日決めるから。」

と点呼に少し遅れつつあるので焦るヤス。

「分かったぁ〜、入れとくね。ゴメンね。仕事遅れるんじゃない?じゃー、ラインしとくね。ありがとう!」

と早口でミミは言うと、

「んじゃ、ラインで!」

と言って切った。サニトラの助手席から財布やカード入れとか、色々入れてあるトートバックを取り肩に掛け走って事務所に入る。一番に会社に着いた筈なのに点呼は最後だった。

「車で二度寝か?昨夜飲んでないだろうな?」

と矢﨑はいつものように平静に言いながら、アルコールチャッカーに息を吹きかける。
ピピピッと0.00mgと表示される。

「OKだぁ。今日は昨日、希江ちゃんから聞いたと思うが〝東京税関青海コンテナ検査センター〟に寄ってレントゲン検査があるらしい。茂原の三協さんの客には言ってあるので、遅れても大丈夫だ。終わったら進捗を無線か端末で知らせてくれ。」

「分かりました。昨日説明書見たら建屋の中に入って鉄板の上にトレーラー、台車ごと載せて、待合室で待っていれば自動でやってくれるらしいですね。」

矢﨑は、うんうんと頷きながら、

「その通りだ。場所も埋立地新中防と言って、東京ゲートブリッジの近くだ。」

と事務所の東京湾の地図を指しながら言う。ヤスは、チェック表を書き終わって出ようとしていた。

「了解っす。行ってきます!」

一号車のポジションランプが点いた。ヤスがリモコンキーで操作したのだろう。そのうち運転席に飛び乗り、エンジンを始動する。再び降りて来て始業点検をする。燃料は昨日帰りに近くのスタンドで入れてある。いつもの有明に向かって出て行った。矢﨑がそれを目で追って、さぁ、これが始まりだよ・・・と心の中で思いながら、口の片方の口角をあげた。
 
〈第三章〉
 
「えーっと、トンネルを出て、信号を左っと・・・橋を渡ってすぐ左に入ってすぐ右側。あったあった。」

と独り言を言いながら、門に〝東京税関青海コンテナ検査センター〟と書いてあったので、右ウンカーを点けて入ろうとすると、対向車がすぐ止まってくれる。なぜか海コンの人たちは税関関係に弱いらしい。中に入るとすぐ人が出てきて、窓を開けると偉そうな言い方で

「EIRは?」

黙って手渡すと、

「左から壁沿いに矢印が地面に書いてあるから、その通り進んで、あの建屋に裏から入れ」

建屋に指指しながら、命令口調で言う。お前誰だよ・・・。

「・・・・・・。」

無言で発信した。ぐるっと回った形で建屋に入って行くと、電光掲示板に

「前進!」

表示が出ている。アイドリングで徐行しながら真っ直ぐ入ると掲示板が「停止!」となったので、停止した。掲示板に「エンジンストップ!」と表示されたので、エンジンを切った。ドアを開けて降りようとすると、スピーカーで女性の声が聞こえて来た。

「そのまま運転席のドアを再び閉めて待っていると、後ろのシャッターが閉まったところで、トレーラーごとエレベーターみたいに下へ下がり出した。あれ・・・と思いながら、そんな仕組みになっているんだろうなと思って、ぐんぐん下がって行く。多分、地下3階くらいだろうと思うけど、いつの間にか止まり、またスピーカーで女性の声で

「そのまま一旦降りてください。」

と言われ、言われた通りスマホだけポケットに入れて降りると、前方のシャッターが開き眩しいくらいの証明に包まれた中に大きなテーブルが並んでいて、テーブルの先に背の高い女性と、ペルー人みたいな外人が立っていた。

「えっ、ここですか?」

とヤスは当たり前のように開いた。

「内藤靖さんね。ここは国の機関には変わりないけど、国税のレントゲン場が入口の国の秘密機関です。詳しくお話しますからこちらへどうぞ。」

とペルー人らしき人間の隣の高級そうな椅子に座れと促す。言うとおり歩いて行って座るとシャッターが閉まり、トレーラーが横にスライドして行く。おーっと思って、整備工場みたいなところに移動する。

「内藤さん、こちらがアルフレッド中渡瀬。あなたをサポートする係です。」

と女性が言うと、アルフレッドが

「よろしくお願いします!」

と言ったあと女性が、私はエリーラインハートよ。

「ってか、茂原、あれ届けないと・・・。」

とトレーラーの方に指さす。

「あー、あれは明日でも明後日でも良い荷物。それより、茂原の荷物怪しいから、レントゲンどころか、コンテナもスキャンしなきゃなのよ。前から目を付けてたの。矢﨑さん乙仲の三協さんから2年前に仕事を競り落としたのよ。あのコンテナの中、何も怪しい物が無いと良いですけど、2日くらい預かるわ。矢﨑さんに言ってある。その間、色々やることあるからよく聞いてくれる?」

少し驚いたが断る余地もなさそうな感じだ。なんなんだ。この広い会議室なのか整備工場なのかわかんないところと、背の高いハーフみたいな気の強いと思われる女性、日本語ネイティブなペルー人のアフフレッドだっけ・・・意味わからんぞ?

「いやいや、こっちが聞きたいくらいですよ。その話ぶりでは、叔父貴いや矢﨑社長も知ってのことみたいですね。」

「そうよ。順を追って説明するわ。」

「ここは、私たちの組織の参謀本部基地なの。諜報員いやスパイなんかの組織を排除する組織で、既に日本に侵略している海外アングラ組織を排除する組織と言えば分かりやすいと思う。その為には、その侵略して来ている者たちを把握し、マークする必要があるわ。状況に応じては、捉えて情報収集したり排除したりもする。いわば、その為の特許階級を有した組織なの・・・。そうね、警視総監、検察庁と法務省の間くらいにある非公開機関と言っていいわ。私たちは動きやすいように任務発令中はこれを所持して使用できますし」

と言うと、コルトガバメントの1911オートマチックの拳銃と、手帳を渡される。
ヤスは受け取ると、クソ叔父貴、こんな事してたのか?と思いながら、器用にマガジンを開き弾丸が詰められているのを確認し、再びセットし、スライドを引いてみる。ちゃんと弾丸が送られて安全装置を外すと引き金を引けるみたい。マガジンを取り出し、ラッチを開いて残ってる弾を出す。本物で、しかも未使用みたいだ。
手帳を手に取る。開いて驚いた。警視庁のバッチとヤスの名前の身分証明が入っていた。階級は〝警視〟となっている。27才で警視となると、上級キャリア試験に合格して、警部補1年警部1年で、いなくはないが日本でも数少ないのではないかと思う。びっくりしたが、本物なのか・・・と思うと察したのか、エリーは、

「ちゃんとした登録をしてある階級よ。あとで内藤さんの経歴書をスマホに送っとくわ。ちゃんと覚えておいてね。あと、トップからの危機管理発令が発令された時しか有効でないから気をつけて。それと本題はここから。」

ヤスが口を挟む

「これだけ揃っているのだから、危険な事やらされるんだろうなとは思うけど、大体察しはついてますよ。それがあってたらの話ですが、聞きましょう。俺も関わってそうだし・・・。」

「特に内藤さんは直接関わってるとは判断してないわ。現在、日本は政治家が無能なのか、世界から見れば何に対しても遅れを取っているわ。しかも、色んな国から、土地、企業、観光地、都内の区や地方の市とか、リトルチャイナやリトルベトナム、リトルフィリピンなど、リトルタウンがあちらこちらに散見されます。企業だって、上場企業の大株主が外国人企業なんてザラだわ。もう日本も乗っ取られそうになっている。コロナが終結して、5類になって、マスクも要らなくなり、インバウンドやら何やらで海外旅行者を歓迎ムードだけど、爆買いで余計なものまで買って行くありさまよ。ゴルフ場だってそう、ホテルだって。日本全部が買われそうな勢いよ。それを未然に阻止、水際対策をしようと言う秘密部隊が必要だと作られた実働部隊がこの組織です。今回の作戦部隊のキャップを私が勤めます。実働部隊のSWATから応援と警察庁からはSPが応援に来ます。今はまず本丸を全て掌握して一気に潰しに掛かります。そこで、内藤さん、耳に少し入っているかも知れませんが、コロナ禍の真っ只中の頃から、巷にコカインが蔓延しているのをご存知ですか?」

とエリーがスラスラと組織の概要を説明、質問するとヤスが、

「あっ、はい、後輩のキャッチの子から聞いたことあります。あとこのことで、シャブが売れなくなっていて、関東のシャブ屋の元締めが相当お冠とか。」

少し不機嫌そうな顔をしたエリーは

「このまま放っておいても両組織が抗争して無くなるだけだろうけど、北朝鮮がどうもこのコカインを他国から日本に回しているらしい。少し探りを入れてくれるかしら。あっ、仕事は心配しなくて良いわ。しばらくあなたの乗ってた1号車、アルフレッドに改造させるから、その間に街に繰り出してくれる?あまり派手に暴れないでね。わかってると思うけど・・・。あと、内藤さんの体力測定しないとだから、隣のジムにあるリングでアルフレッドとスパーリングしてみて。手加減無しよ。」

と言うと、エリーラインハートは立ち上がり、リモコンのスイッチをいれる。すると、スライド式に壁が開き、格闘技サイズのリングが現れた。リングの周りには、トレーニングマシーンが多数揃っている。トレーニングウェアや衣類、タオルもあり、奥にはサウナや浴室もあるらしい。ヤスは、

「今、やるんすか?」

とエリーとアルフレッドを見る。アルフレッドは、ヤスにボクサーパンツとボクシングウェアを投げ、ミットも15オンスほどのグローブを投げて渡すし、アルフレッドは、用意していたかのように上着を脱いでパンイチになる。自分のミットである15オンスのミットをはめ出した。
やらなきゃやられるだけと諦めたヤスは、パンツを履き替えグローブをはめる。アルフレッドはヤスの刺青に目を丸くする。先にヤスがリングに上がり、アルは少しストレッチしながら、リングに上がって来た。
上がり終わって顔を上げるところでヤスがゴングも鳴ってないのにアッパーをアルフレッドに一撃かました。

「ボクシングルールよ!MMAは、次回からにして!」

と声を轟かせたエリー。

「卑怯な挨拶だな、ヤスさん。」

と言いながらアルフレッドは、リング外に血の唾を吐き飛ばし、ヤスに突進していく。体は一回りアルフレッドが大きい。身長差17cmと言ったところだろうか。ヤスさんは、173cmほどだ。両者軽快にステップを踏む。基本のワンツーを出して来るアルフレッドのパンチの速さがやけに早い。
再度、ワンツーが来た時、ヤスが左ボディを当てたところで、相手の右フックが素早く左頬にヒットする。そんな重くなかった。
続けてボディにフェイントを掛け左フックを出した。アルフレッドは軽く左によけ、左フックと右ボディを出して来た。両方ヒットしてしまった・・・。倒れたヤスは、立ち上がりがむしゃらに突進して行ったが、ダメージを負っているためパンチは全て交わされる。そこでエリーがゴングを鳴らした。アルフレッドが立ち上げようと手を出すと振り払い、自分で起きてリングを降りた。椅子に座ると、

「チクショーー!!」

何のトレーニングもしていないから予想はしてたけど、体力無さすぎだわ。自分で情けない。こんなんじゃ敵に殺されて終わりじゃねーか!

「しばらく、トレーニングね。アルフレッドお願いね。」

と言うと、

「1週間で整えて。銃もそうよ。内藤さんはフルコンタクトの空手のだん持ち出し、グレーシー柔術を取得しているので、すぐ整うわよ。あとは喧嘩慣れしてるから卑怯でも勝ちは勝ちだから頑張ってよ!」

と言うとタブレットを持ってきて、

「これに人差し指をタッチして。」

するとピッピッピッと青く光る部分があり、それを確認すると、

「これで、このフロアー内やエレベーター、あなたの行けるところは全てロック解除できる。解除できないところは、行けないところだと思って。通路やエレベーターは内藤さんが指紋タッチすると画面に行けるとこの地図が毎回出るわ。そうね、ここからだとお台場までの無人シャトルもある、食事とか。このタブレットから色んなことできるから、全部説明は割愛するわ。詳しくはアルフレッドにでも聞いて。アル、お願いね。」

と立ち上がり、踵を返し奥のドアに消えて行った。どんな構造になってるんだろう。本当、基地みたいだ。なんか楽しそうだ、だが、体力が全然ないのには驚いたと考えているところに出されたミネラルウォーターを飲んでいると、

「分かっていると思いますが、実戦よりをまずは基礎体力を付けましょう。筋力が付いたら、実戦やって銃も何種類かありますから練習しましょう。」

ボルボトレーラーからトートバックの荷物を取ると、アルに

「一度帰ってくるけど、どうしたらいい?」

「会社に内藤さんのサニトラありますから、いつまでも置いておいたら不自然なので一度、会社に私が送ります。その後はここを出る時入口教えます。入口は湾岸警察署です。」

えっ、あんなとこまで地下が続いているとは相当広い基地みたいだ。

「ここって泊まることは可能なの?」

とヤス。

「もちろんです。窓が無いけど広くて、Wi-Fi飛んでるし快適ですよ。私はここが自宅みたいになっちゃったけど・・・。」

と快適さをアピールした。食べ物のメニューも豊富で食べ放題だし、無い物は無い感じだと。あと高級車からトラックなどの車両、服とかも全てあるスパイといえばスパイなんで何でも揃ってるらしい。必要で発注すれば何でも手に入るみたいだ。

「そうなんだなぁ〜。でも、毎日帰んないとなぁ〜。毎日通うことにするよ。ミッション終わるまで。いつ終わるかも今は分かんなさそうだから、湾岸警察署以外にも入口ある?」

するとアルが、モニターに地図を出して、レーザーポインターで

「湾岸スタジオ駐車場から入れますね。」

ヤスが

「おー、それはいい。」

何故かと言うと一般人が使ってもおかしくないからだ。とりあえず、アルに

「会社に送って。」

と言うと、

「了解!」

と言ってアルが歩き出す。ヤスは、後を付ける。テストにヤスが指紋認証をやって行き、駐車場らしきとこへ来た。
アルはベンツのGシリーズゲレンデの鍵を解除する。
その隣は、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、ベンツとか高級車だらけだ。

「ヤスさん、こいつら、たまに乗らないといけないので鍵付いているから乗ってください。誰も乗る奴、今のところいませんから・・・。」

ゲレンデの助手席に乗りながら、

「乗る必要ができたら乗るよ。」

と笑って言った。

「きっと来ますよ。」

とアルは言った。
 
会社に着くと助手席から降りてアルに手を上げたら、クラクションを鳴らした。会社を見たら社長がアルに手を挙げていた。
今になって、そんなことしてたんだあのおっさん。なんかかっこよくも見え、普通の運送屋のおっさんでは居てらんないんだと思った。
今日、聞いたことをしているか、逆の密輸とかか、どっちか手を染めてそうだ。
会社に入ると、社長が先に

「今日は大変だったなぁ、ヤス。レントゲンで税関には引っかかるわ。ヘッドは故障するわで・・・。」

とヘッドが故障と取り繕いでくれた。

「あと10日ぐらいで車検何で、アルフレッド中渡瀬に車検も入れさせとくよ。」

レントゲンの〝東京税関青海コンテナ検査センター〟の裏に民間車検工場もあるみたいだ。その情報知らなかった。

「はい、散々でしたけど、特に俺は待つだけで特に苦にはなりませんでした。それで、社長、明日から体なまってるみたいなんで、休みついでに道場通って来ます。」

と社長に言うと、

「そうだなぁ、俺も少しヤスの野郎ポッチャリして来たと思っていたところだった。車も少し長くかかるみたいだから、好きなようにしろ。毎日連絡だけ入れてくれればいいんで。」

と、最初は余計なこと言ったが、好きなようにしろって言われたらポッチャリって言った分許してやろう・・・。

「そしたら、行くとこあるので帰ります。お疲れっした!」

と皆んなに聞こえるように言う。
サニトラに乗り込み、お台場方向へ向かう。すぐ近くだ。歩いても行ける。湾岸スタジオの地下駐車場に滑り込む。借りて来たタブレットでは地下2階のB15〜17へ前進で停め、(そこは他車から死角になるところ)タブレットの指紋認証をし、リモコンを飛ばす仕組みだ。指をあて、送信としたら、前のドアが上へ開いた。青いランプが点いて進んだ。今度は赤でSTOPと点いたので停止し、タブレットに

「パーキングにして、再度ブレーキを引いて下さい。」

と出たので完了すると次へだ。
もうすでに後ろのドアは閉まっていた。次へを押すと

「しばらくお待ちください。」

と表示になり、右に行っているのか左に行っているのか分からないが、動いているのは確かだ。急に体の動きも止まり、前方のドアが開く。アルのゲレンデやマクラーレンのところに来た。前進してアルに聞いてるところへ停める。
何とか到着した。アルの車の横に確か入口の指紋リーダーがあったので、車の荷物を持ってそのドアの前で指を出す。問題なく開く。アルがツナギを着て油で汚れたままこっちへ来る。

「手伝わなくていいから続けて、俺まで汚れる・・・。」

笑いながらボルボへ戻って行く。何をやってるのか見に行く。ボルボのキャビンを上げてハシゴで天井に何か装着している感じだが全く分からず、タブレットで教えてもらった自分の部屋へ扉を次々と開けて辿り着く。
うわっ、めっちゃ広くて、ベットもキングサイズ、ソファーもL字でカウチも付いている。テーブルの上にリモコンがあるがボタンが無い。リモコン型をしたタブレットみたいなもんだ。ファクションでメニューを選択すると、空調やライティング、テレビ、何でもこのリモコンでできる。おっ、お風呂の水も貯まる。隣の部屋にトレーニングマシーンを全部移動して運んでくれたらしい。ドアを開けるとこれもなんと広く、あちこちタオルの棚とダストボックスもある。さぁ、走ろう!ヤスは、体を作り始めた。

(つづく)

#創作大賞2024


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