走る!

走る!

走る!

駅を出る!

走る!

走る!

カルディを目指して!

走る!

走る!


…母の日のプレゼントを買うんだ!

ワインを買うんだ!

間に合え!

母の日!

間に合え!

営業時間!

ワインが好きな母

母の日にはスーパーや、それこそカルディで、ワインを買ってプレゼントしてきた

今となっては何の疑問も持たなかったことがびっくりなのだが、単純ににそれで良いと思ってた

どこにでもあるスーパーに並んだお酒の、さらに買いやすい値段に絞られた数本の中から、なんとなく良さそうなラベルと名前と、直感で渾身の一本を選び、喜んでくれるかな〜、とのんきに思ってた

けれど今日ふと、気づいた

(ちゃんとした専門店の、高級なワインを買って渡すべきなのでは、、?)

母は大人だし、私もプレゼントにちょっと良いワインを買うくらい何の違和感も無いほどには大人だ 

きっかけもなく気づいたことにびっくりした一方で、

今まで気がつかなかった、ということにもびっくりした

大人になれていたようで、そうでもなかったということか

早速、都内のワインショップをいくつか調べ、新宿の専門店に目星をつける

いつなら行けるか。
突然の思いつき故にもう母の日まで時間がない

しかし、、


それとは別にふと浮かぶ懸念点。

突然の思いつき故にその出費は想定外だった。

今週は飲み会がある、見たい有料配信もある

(母にはいつもお世話になっているが、一緒に住んでいるんだし、当日じゃなくても渡せるし、なんなら今月じゃなくたって別に…)

そんな思考がよぎる

渋ったまま、なんと当日になってしまった
そんなばかな

遅い、遅すぎる
判断も行動も遅いところは私の悪いところなのだ

でも言い訳はある
時間が無かった、あとお金も無かった
よし、別日にしよう

私は腹を括った


ーつもりだ。お母さんは多分何とも思わない。
今日は仕事だ。もう買いに行く時間がないんだ。
でも本当にそれで良いの?……仕方ないからー

職場にて
母の日は何かするのか、という話題から会話が始まる
先輩は離れてる実家に花を送り、同僚はお母さんのためにケーキを手作りするらしい

私は…何も準備してないんです〜となんでもないことのように告白する

時間がなくて…とかなんて言い訳もしてみる

そしたら先輩が、

「今日早く上がって良いから買いに行きな〜!
ちょっとは期待してると思うよ!」

と言ってくれた


びっっくりした
鳩に豆鉄砲、いや、罪悪感に優しさ

その一言で、私の腹は括り直した

そして冒頭に至る

流石に早く上がることはしなかったので、急ぐ

買うと決めたら気持ちが楽になった

そうだよ、大事なのは"気持ち"だ

よく考えたら高いワインを別の日に買うとしても、今日は今日で用意すれば良いじゃないか

スーパーもカルディも、誰かが自信を持って選んでくれたものが並んでいるんだ、良いワインだ

お母さんがいつだったか「飲みたい」と口にしたのと同じ名前のワインを手に取って、レジに並ぶ

お母さんが喜ぶかもしれないと思ったらお金は惜しくなくなった

というかそもそも私が飲み会や配信にお金をかけられるのは、誰のおかげなんだという話だ
恥ずかしいったらありゃしない

なにより大事なのは「ありがとう」の気持ちと、それが伝わるように行動することだ

来月でも良くなんかない、
いつだって今しかないし、今日しかないんだ


家に帰っていの一番に、言葉と一緒に渡した

そしたら、「嬉しい〜」って大好きな笑顔で笑ってくれて

心の底から、"今日"渡して良かった、と思った


お母さんのためにお父さんが買ってきたケーキを食べながら、今日のことを話す

お母さんは今日、私からみておばあちゃんに、家族の写真を貼ったボードをプレゼントしたらしい

テーブルには可愛らしいピンクのカーネーションが飾ってあり、これはどうしたの?と聞いたら、妹が買ってきたんだ、と言った
生意気盛りの妹だと思っていたのにね
妹の精一杯の心遣いになんだかキュンとした

まるで当たり前のような誰かから誰かへの優しさに、胸がいっぱいになった

先輩、ありがとうございます

カルディさん、ありがとう

家族、ありがとう

母の日、ありがとう

お母さん、いつもありがとう



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