保育園看護師のお仕事紹介シリーズ⑤ ほけんだより
こんにちは!現役保育園看護師のチロです。
保育園看護師の仕事の楽しさや専門性を発信していく『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』!
第5弾は、「ほけんだより」について解説していきます。
多くの保育園では、毎月様々なお便りを作成、配布(あるいは配信)しています。「ほけんだより」はその中のひとつで、主に保健や健康に関するトピックスを保護者の方に向けて情報発信するためのお便りです。
「ほけんだより」の作成は、保育園看護師の定例業務の中ではかなり自由度の高い業務だと思っています。簡易的に発信することももちろんできますし、こだわり抜いて作成することも可能です。そのため、各園の特色や作成者(保育園看護師)のキャラクターなども見えてくると思っています。
今回は、「ほけんだより」を発行する目的、作成するときに意識していることなどをまとめてみました。
これまでのお仕事紹介シリーズと合わせて、ぜひご参考いただければ幸いです!
「ほけんだより」を発行する目的
「ほけんだより」について、冒頭では保護者の方に情報発信するためのお便りだと紹介しました。しかし、情報発信はあくまで「ほけんだより」を発行する目的の1つに過ぎません。
保育園看護師である自分としては、「ほけんだより」のポテンシャルをもっと発揮することで、保護者や園児に行動変容を促すことが真の目的であると考えています。
情報発信としての「ほけんだより」の内容と盲点
保護者の方に伝えたい保健に関する情報をまとめると、下記のようなものが考えられます。
リアルタイムな情報
地域や園の感染症状況
流行している感染症に関すること
季節に関すること(熱中症・花粉症・防災関連等)
最新の保健に関するトピックス など
乳幼児の生活に大切な情報
生活リズムに関すること
風邪の予防や体調不良時の対応について
食事・睡眠・運動・排便等に関すること
爪の切り方・応急手当・歯磨き(虫歯) など
園の行事に関する情報
保健行事(健診・健康教育等)のお知らせ
プール・運動会に関すること
園のルールに関すること(薬の扱い・体調不良時の連絡等) など
多くの「ほけんだより」は、これらの情報がいくつか組み合わさってA4用紙1枚程度にまとまっていると思います。
そして、実際に毎月「ほけんだより」を作成し続けていくと、ある時ふと毎年似たような内容を書いているということに気が付きます。
何故かというと、季節・行事・乳幼児にとって大切なことは、基本的には変わらないからです。
つまり、情報発信だけを目的に「ほけんだより」を作成していると、毎年同じ内容を伝えることになるためマンネリ化してしまう可能性が高いということです。
行動変容を促すための「ほけんだより」とは
上記に記載した情報は、すべて大切なことです。そして、知ってほしいだけではなく、実践・改善してほしいことでもあると思います。
つまり、「ほけんだより」を通じて情報発信することの本当の目的は、園児や保護者に行動変容を促すことだと言い換えることができます。
情報発信を目的にしていると、『単発』というイメージがあります。端的にまとめた保健的トピックスを羅列して終わり、という感じです。
行動変容を促すことを目的に据えると、同じテーマで作成したとしても、保護者に届いている(≒行動変容につながっている)かどうかという視点で必ず見るようになります。作成した「ほけんだより」について反省し、次に生かしていこうとするため『連続』していくイメージです。
記載する内容やテーマが毎年似通ってしまうことは致し方ありません。しかし、行動変容を促すことを目的にして「ほけんだより」を作成することを意識すると、自然と同じ「ほけんだより」にはなりません。
より質の高い「ほけんだより」を作成することは、より質の高い保育の提供にもつながっていくものだと思っています。
「ほけんだより」を作成するときのポイント
情報発信だけではなく、行動変容を促すことを目的として「ほけんだより」を作成する際のポイントは下記の4つだと考えています。
伝えたい相手を具体的にイメージする
記載する文章は最小限・シンプルを徹底する
図やイラストを効果的に使う
PDCAサイクルを回して作成する
①伝えたい相手を具体的にイメージする
情報発信が目的の場合は、伝えたい情報が先にあります。それらの情報をまとめる作業が「ほけんだより」の作成になります。
行動変容を促すことを目的にした場合、伝えたい相手(保護者・園児)が先にいるはずです。その相手を具体的にイメージして、どこに課題があってどうしてほしいのかという視点から、情報をまとめ直すという作業に入ります。
伝えたい相手や現状の課題が具体的であればあるほど、「ほけんだより」の真価が発揮され得ると思います。
②記載する文章は最小限・シンプルを徹底する
伝えたい情報を1から10まですべて書いてしまうと、文章を読むことが苦手なタイプの保護者には読んでもらえないことが多いと感じています。
せっかく作成しても読まれなかったら意味がありません。自分は、読まなくても目に入る・頭に直結で入っていくくらいの文章量を意識して作成することが多いです。「ほけんだより」を読むハードルを下げる努力とも言えます。
もちろんこれも、情報発信を目的にする場合はあえて詳細を書くこともあります。興味のある人に読んでもらいたいときとか、必要だから絶対に確認するような内容の時は細かく書きます。
行動変容を促すことを目的にした場合、作成する文章が届けたい相手にとっては興味がないもしくは読みたくないような内容である可能性を考慮すべきだと考えています。
コツは、実際にしてほしい行動(動詞)を強調することです。実践するハードルをできる限り下げたいため、できる限りシンプルで分かりやすい単語やセンテンスを、見やすく、効果的な色や強調を使用して記載します。
全体的な量感を考慮すると、やはりA4用紙1枚、多くても裏表で2枚分にはまとめたいところです。
③図やイラストを効果的に使う
②で記載した動詞と連動した図やイラストを使うことで、視認性を上げて直観的な理解を促します。
また、イラストがあることで、文章だけのものよりも読み手のハードルを下げる効果も期待できます。
僕自身は絵を描くことが苦手なので、「ほけんだより」を作成するうえでフリー素材のイラストを見つけてくることが一番時間のかかる作業でもあります。案外しっくりくるイラストがない場合も多く、絵を描ける人がうらやましいといつも思います。
④PDCAサイクルを回して作成する
実際に発行した「ほけんだより」を通じて、実際に課題が解決されたのかを評価・反省することが大切です。
行動変容につながったのであれば、「ほけんだより」の真価が発揮されたということです。
逆に、課題が解決されていない場合は、「ほけんだより」だけではない取り組みを考えたり、伝え方や記載方法を工夫してみたりと、次に生かすことが大切です。
つまり、PDCAサイクルを回すことでよりよい「ほけんだより」を作成していくことは、よりよい保育を提供することにもつながっていくということです。
まとめ
各園によって看護師に求められてる業務や責任の範囲は異なるため一概には言えませんが、保育園看護師が保護者に向けて改めて保健について発信する機会というのは、決して多くはないと思います。
「ほけんだより」は数少ない保育園看護師と保護者をつなぐツールの一つです。ただ情報を発信するだけではもったいないです。限られた就業時間の中でも、「行動変容を促す」という視点を持つだけで「ほけんだより」のクオリティは変わると思っています。
「ほけんだより」の作成は、保育園看護師としての専門性にもつながる業務だと感じています。
今回紹介しきれなかった「ほけんだより」を作成する上で自分が意識していることがまだまだたくさんあります(紙で配布するときと配信するときの違いなど)!また、実際に自分が作成している「ほけんだより」の実例なども参考にしていただきたいので、別の機会にノートにまとめたいと思っています。
最後まで読んでくださりありがとうございました!