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保育園看護師のお仕事紹介シリーズ④ 身体測定
こんにちは!現役保育園看護師のチロです。
保育園看護師の仕事の楽しさや専門性を発信していく『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』!
第4弾は、「身体測定」について解説していきます。
保育園では毎月園児の身体測定をしていますが、改めて身体測定に関する関連法規について、身体測定の目的、保育園看護師として意識していることなどをまとめてみました。
これまでのお仕事紹介シリーズもぜひご参考いただければ幸いです!
毎月の身体測定は”義務”ではない
冒頭にて毎月測定していると紹介しましたが、実は毎月実施することを義務付けられているわけではありません。
園の運営や保育内容に関する基本的な考え方を示している保育所保育指針には、第3章「健康及び安全」の項目に下記のように記載されています。
1 子どもの健康支援
(1) 子どもの健康状態並びに発育及び発達状態の把握
ア 子どもの心身の状態に応じて保育するために、子どもの健康状態並びに発育及び発達状態について、定期的・継続的に、また、必要に応じて随時、把握すること。
つまり、指針上は「定期的・継続的に」園児の発育発達状態を把握することが求められているため、「毎月」ではなく例えば「ふた月ごとに」でもよいのだと読み取れます。
また、その名の通り保育園の運営に関する基準を示している法令である児童福祉施設の設備及び運営に関する基準では、第12条に下記のように記載されています。
第十二条 児童福祉施設(児童厚生施設、児童家庭支援センター及び里親支援センターを除く。第四項を除き、以下この条において同じ。)の長は、入所した者に対し、入所時の健康診断、少なくとも一年に二回の定期健康診断及び臨時の健康診断を、学校保健安全法(あげられると法律第五十六号)に規定する健康診断に準じて行わなければならない。
法令上は、少なくとも年に2回の定期健康診断(≒身体測定他)が義務付けられているとわかります。
つまり、法律上は毎月身体測定をする義務はないということです。
しかし、ほとんどの保育園は月に1回身体測定を実施しています。理由は様々あると思いますが、身体測定の目的を考えると理にかなっているなと納得できます。
毎月身体測定をする目的
身体測定をする主な目的は、保育所保育指針に記載されている通り園児の発育・発達状態を把握するためです。
発育・発達状態を把握するためには、身体測定を通じて以下のような項目を意識的に観察したり、必要に応じて評価したりしていくことが大切だと考えています。
栄養状態の評価
疾病の早期発見(健康状態の確認)
虐待(ネグレクト・身体的虐待他)の早期発見
発達上の課題や特性に関する気づき
上記の項目を定期的・継続的に観察評価すること
年に2回の測定で上記1~4の項目を全園児分一気に把握しようと思うと、なかなか骨が折れます。特に2(疾病)、3(虐待)、4(発達特性)の項目に関しては、年2回では見落としたり発見が遅れてしまう可能性が高いです。
さらに、年2回の測定となると、実施回数が少ないため園児にとっては身体測定が非日常的な活動になります。慣れない設定や環境に対して不安を感じたり、拒否したりする園児が増えることが推測されるため、正確に測定することが難しくなります。正確なデータがないということは、園児の発育・発達状態を正しく評価できないということです。
疾病・虐待・発達特性等を早期発見・早期介入・早期治療につなげるためにも、園児の参加ハードルを下げて、可能な限り正確に測定・評価をすることが大切です。そのためには、月に1回測定するくらいの方が案外効率が良いのだと思います。
身体測定の手順や評価
詳細な手順・評価方法については乳幼児身体発育 評価マニュアルをぜひ参照してみて下さい。
このマニュアルは、乳幼児の身体測定を実施する方法だけなく、身体測定の意義や歴史、統計データ、評価方法などに関することが詳細に記載されています。保育園看護師としては、一度は目を通しておきたいマニュアルです。
保育園看護師ではなく保育士さんが身体測定を担当している場合、各園の慣習的な方法が引継がれていて、実は間違った測定方法になっているというケースも見受けられます。
マニュアルを一読して、改めて正しい測定方法についてチェックしてみて下さい!
また、使用する身長計・体重計は、厚生労働省の「計測器具及び計測方法(乳幼児身体発育調査必携より抜粋)」という資料を参照して、正しく測定できるものを使用しましょうね。
保育園看護師として意識していること
上述した5つの目的について、まずは正しく理解することが保育園看護師としても大切なポイントだと考えています。
他にも意識していることはたくさんあります。まずは実施時期と時間をなるべく一定にすることです。「第〇週の午前中」「月初めの活動時間」など、毎月の定例業務・活動として予定に組み込んでもらうことができるとやりやすいと思います。
そして、測定する時間は午前中(午睡前)がよいと思います。午後になると、食後だったり午睡明けだったりするため数値がぶれやすく正確なデータがとりにくい印象があります。
また、測定した数値から異常を発見するだけではなく、観察によって感じた違和感を言語化、数値化して職員と共有することも同じくらい重要です。
特に、虐待を疑うケース(体幹に痣、極端な痩せや体重減少、びくついた様子など様々…)は、すぐに管理者に報告、相談、対応する必要があります。保育園には虐待通告義務が課せられているため、見逃してはいけない重要な観察ポイントです。
また、身長、体重等の発育は個人差がとても大きいため、測定結果を他児と比較してもあまり意味がありません。測定結果は成長曲線上にプロットし、曲線内に入っているのであれば経過観察で大丈夫なケースがほとんどですが、たとえば数か月連続で身長や体重が横ばい・減少しているようなケースが注意が必要です。嘱託医に相談するか、その他症状があるような場合はかかりつけ医を受診するよう促しています。
成長曲線については「乳幼児身体発育曲線の活用・実践ガイド」という資料等に詳細が記載されているため、ご参照ください!
身体測定が苦手で、怖がったり拒否したりするお子さんも毎年必ずいます。中には、発達上の課題や特性が背景にあるケースもあるため、担任と保育士さんと共有・相談しながら進めていきたいところです。
ある程度は時間が解決してくれることではありますが、極端に服を脱ぐことを嫌がったり、素足で体重計に乗ることを拒否したりなど感覚過敏な様子が見られる場合には無理強いしないことも大切です。身体測定が嫌なものとインプットされてしまうと、その後ずっと苦手意識を持ち続けてしまう可能性があるからです。
園児の拒否が強く測定できなかったときは、「測定できなかった」という事実とその時の様子を記録するようにしています。記録をとることで次回は別のアプローチで測定に誘ってみたり、人や環境を変えてみたりと様々な工夫をすることにつながります。正しく測定・評価するために必要な技術の一つでもありますね。
また、自分は男なので、測定時は必ず女性の保育士さんがいる場所で測定するようにしています。特に年中・年長児くらいになると、男女の違いを意識したり他児を気にしたりするようになるため、着替え同様に身体測定も場所を分けたり仕切りを使用したりして配慮します。これは、健康教育や包括的性教育にも通ずることだと考えているため、より意識的に配慮するようにしています。
まとめ
保育園における身体測定は、ただ身長と体重を測るだけの業務ではありません。子どもたちにとっては、成長を実感して誇らしく思う時間でもあります保育園看護師としても、子どもと一緒に成長を感じられるかけがえのない場面だと思っています。
身体測定には保育士や看護師としての専門的な視点や観察ポイントも多くあるため、文中で紹介したガイドラインやマニュアルもぜひご参考いただけたらと思います。
ちなみに、年に2回頭位・胸囲の測定もしています。頭位胸囲測定に関しては、学校の方では徐々に廃止になってきているとのことです。保育園での測定も今後変わるかもしれません。その時はまた更新したいと思います。
また、昨今は外国籍やハーフの園児も増えてきています。成長曲線等は日本の子どもたちのデータをもとに作成されたものであるため、外国籍の園児にもこのスケールで評価していいのかな…と疑問に思うこともあります。こちらも、時代とともに情報が更新されていくことを期待しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!次回は「ほけんだより」について紹介したいと思います。