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保育園看護師のお仕事紹介シリーズ ⑧‐2「与薬対応の実際」

こんにちは!現役保育園看護師のチロです。

保育園看護師の仕事の楽しさや専門性を発信していく『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』!

前回に引き続き、保育園における「与薬対応」について解説していきます。

実践編ということで、これまで実際に対応してきたケースを元に、意識したいこと、気を付けるべきポイント等をまとめてみました。

これまでのノートも含めて、ご参考いただけたら幸いです!


与薬対応の基本(前回のおさらい)

簡単に前回のノートで解説した内容をまとめると、保育園における与薬対応は下記の3点がポイントとなります。

  • 原則、保育園では与薬対応をしない

  • しかし、状態等によっては与薬対応すべきケースもある

  • 与薬対応するには医師の指示が必要不可欠

与薬対応を開始するまでの流れ

実際に保育中に与薬を必要とする場合、自分はいつも以下の流れで対応をしています。

  1. 【相談】 保護者から相談を受ける(※緊急時対応の場合は別途)

  2. 【検討】 園内で与薬すべきケースか改めて検討する

  3. 【書類作成】 保護者に与薬指示書等の提出を依頼する

  4. 【書類確認】 必要書類が提出されたら内容を確認する

  5. 【個別マニュアル作成】 医師の指示に合わせて与薬マニュアルを簡易的に作成する

  6. 【周知】 全職員に情報を周知する。与薬担当者にレクチャーする。

  7. 【承諾・開始】 与薬承諾書を作成。与薬対応を開始する。

  8. 【確認】 与薬により症状が改善しているかどうかを確認するために、指示期間内に再通院を促す。

簡単に各過程について追記していきます。

1.【相談】

何度も言いますが、原則は与薬対応をしません。そのため、登園してきて「飲ませてほしい」「塗ってほしい」と急に保護者にお願いをされても対応はできません

これは特に新入職員に覚えていてほしいことですが、もしそういった依頼が保護者からあった場合は、必ず管理者あるいは看護師に報告・相談するようにして下さい。断り方を間違えるとクレームにつながることもあるため、その場で対応が難しい場合はすぐ報告しましょう!

2.【検討】

保護者から依頼があった場合、その与薬対応が本当に保育中も必要なものかどうかを園内で検討します。

検討するときも、必ず管理者に報告・相談してください。看護師だけの判断ではなく、必ず「園の判断」をするようにしましょう。これは、一人職場である看護師自身のリスクヘッジでもあります。

例えば、「乾燥が気になるから園でも保湿してほしい。」というケース。よくある相談の一つですが、実はこの相談のほとんどは対応できないことが多いです。

理由はいくつかありますが、一番は「与薬しないことで生活に支障をきたすかどうか」という線引きを超えていないからです。

本当だったら保湿剤を塗ってあげたいです。園児の健康のためには塗ってあげた方がよいことは間違いないからです。しかし、保育園は集団生活の場です。もしこのケースを承諾してしまったら、ほとんど全園児の保湿をしなくてはならなくなります。

そして、日中保湿剤を塗らなくても、生活に支障をきたすことはほとんどの場合はありません。故に、お断りさせていただくということになります。

ただし、乾燥具合が生活に支障をきたすレベル感で強くあり、主治医が日中の与薬を指示しているような場合は別です。その場合は、「医師の診断上、保育中でもやむを得ず与薬すべきケース」ということで対応する必要があるでしょう(「保湿」だけというのは、経験上はそう多くありませんが…)。

また、緊急時用薬の場合も別です。食物アレルギー児の誤食時対応としての抗アレルギー薬エピペン🄬、熱性けいれん児の発熱時対応としての坐薬などが代表例です。

この場合、多くは主治医から指示されます。しかし、保護者の方のアレルギー等に関する知識が不十分な場合は、リスク管理として園側から情報提供をする必要があると認識しています。

緊急時用薬の対応は急に開始することも多いため、【相談】【検討】をとばして【書類作成】の過程からスタートすることもあります。

3.「書類作成」

保護者に与薬に関する書類の作成と提出を依頼します。口頭指示だけでは証拠不十分のため、医師の指示は必ず書面でもらいましょう。

自園では以下の3つを提出するようお願いしています。

  • 【与薬指示書】 医師が記載。医師の指示を確認する書類。

  • 【与薬依頼書】 保護者が記載。園に対して与薬を依頼する書類。 

  • 【薬剤情報提供書のコピー】 薬局でもらう書類のコピー。与薬する薬の概要が記載されているお薬の説明書。

特に、「薬剤情報提供書のコピー」は案外忘れがちです。医師の指示と処方された薬に整合性があるかどうかをダブルチェックしているような感覚です。また、管理者や保育士等に薬の効果等を説明する際にも便利です。

4.「書類確認」

提出された書類を確認します。最も重要なことは、「医師の指示が明確かどうか」です。

保育園での与薬対応は、医師の指示に従って対応することが重要です。そのため、いつどんな時に服用すべきか、1日に何回塗布すればよいのかなど、可能な限り具体的に指示をもらいたいです。

保護者経由で主治医に伝えてもらったり、書類にメモを書いておいたりするなど、主治医に理解してもらうための工夫も必要でしょう。

医師の指示が不明確、あるいは、指示された薬品と処方されている薬品が異なる場合等は、もちろん対応不可です。改めて医師に確認し、再提出をお願いするケースもあります。

5.「個別マニュアル作成」

書類を確認したら、実際にいつだれがどのように与薬するのかを簡潔にまとめておきましょう。

僕はいつも、簡単な個別マニュアルを作成しています。緊急時用薬の場合はしっかりと対応フローをまとめていますが、そうではない場合は手書きでもいいので作成します。

なぜかというと、自分(看護師)以外の保育士・管理者でも同じように対応できるようにするためです。内服薬であれば、飲ませ方、水の量、観察ポイントなども簡単に共有しておきます。塗り薬であれば、初回は関係者全員に同席してもらって、具体的にこの部位にこれだけこうやって塗るんだというのを見てもらいます。

要は、自分(看護師)がいない日でも対応できるようにしておく、ということです。これは、与薬対応だけではなく自分が担っている業務のほとんどに関連しているテーマでもありますね。

口頭で伝えるだけでなく簡単でいいから文書にしておくことで、ヒューマンエラーを防ぐことにもつながります。

6.【周知】

与薬対応に関することは、全職員に周知しています。特に緊急時用薬を預かる場合は、いつ何時発生するかわからないため、本当だったら職員講習等を通じて実施訓練もしたいところです。

大切なポイントは、どの園児が、どんな状況にあって、与薬対応している(あるいはする必要がある)かを簡潔に理解してもらうことと、薬がどこにあるか全員が分かることです。

特に、薬の管理場所は監査でも確認が入ることがあります。必ず、事務所等の鍵付き書庫で管理するようにしましょう。一番いいのは、看護師が使用している棚があれば、そこで管理することが望ましいと思います。

ちなみに、保育室内で薬を管理することはやめた方がよいと思います。以前、監査にて指摘された園がありました。理由は、子どもが触れる可能性があるから、という至ってシンプルなものでした。

要するに、必ず子どもの手が届かない鍵がついている棚で管理することという指導なため、薬の扱いに関してはリスクマネジメントを第一にすべきということだと認識しています。

7.【承諾・開始】

保護者に対して、与薬することを承諾する書類を作成しています。承諾書に関しては、園内での書類確認のダブルチェックを兼ねています。

8.【確認】

緊急時用薬の場合は、当たり前ですが使用時=緊急時なので、使用する場合は即通院(即お迎え)あるいは救急搬送になります。与薬した薬と時間、その前後の様子などを記録して、保護者あるいは救急隊員に渡せるように準備しておきましょう。簡単な記録のフォーマットを作成しておいて、緊急時にはメモしておくという方式がおすすめです。

緊急時用薬以外の与薬対応をする場合は、与薬指示期間内に再評価できるとよいと思います。要は、園での与薬により症状が改善されているのかを確認するため、可能なら指示期間内での再通院を保護者に促します

再通院して与薬が継続(延長)になる場合は、指示書の再提出が必要となるため、事前にアナウンスしておきましょう。

まとめ

今回は、保育園における「与薬対応」の実際の流れについて解説してみました。もちろん、ケースバイケースなことも多いですが、基本的な流れは同じです。ぜひ参考にしてみて下さい!

大切なことは、必ず医師の指示を明確にすることです。どんなケースであっても、これだけは落としてはいけません。しかし、案外医師の指示が不明確だったり、字が読めなかったりすることもしばしばあります…。

ここは、保育園看護師としての腕の見せ所!保育園看護師は、保育園に勤める唯一の医療従事者として、保護者と医師とのコミュニケーションを仲介するような役割を担うこともあります。これは、一種の専門性を生かした業務でもあると思っています。

むしろ、主治医との仲介に保育園看護師が役立てるのであれば、地域医療の一端を担うこともできるのでは…と少し思います。

最後まで読んで下さりありがとうございました!

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