推しの子 MEMちょの発言を税理士が簡単解説 YouTubeで写したものは経費にできるのか?


概要

はじめまして。税理士の安藤寛です。いきなりですが、最近プライムビデオで推しの子にはまっています。その演出の一シーン(シーズン2 第10話)に、一税理士として疑問が生じましたで、少々解説してみたいと思います。まずは漫画の一部分をご確認ください。

引用元(赤坂アカ×横槍メンゴ「【推しの子】 7 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)」2022年 集英社)

解説

”私物が全て経費で落ちます”について、結論、そんなことはない!!難しいしやめたほうがいいという回答なのですが、その理由を追って説明いたします。

MEMちょも、星野ルビーも、有馬かなもすべて芸能人として個人事業主に該当します。

個人事業主は、個人の事業活動で得た利益(正しくは「事業所得」といいます)に対して税金がかかります。
(サラリーマンは給与に対して所得税がかかります。)

つまり、MEMちょも、有馬かなも、芸能活動で得た利益に対して税金がかかります。(余談ですが、有馬かなは苺プロダクション所属ですが、サラリーマンではありません。)

芸能活動で得た利益とは、[芸能活動での売上]-[芸能活動に必要な経費]をいいます。

ここでいう、[芸能活動に必要な経費]とは何を指すでしょうか。これについては所得税法37条に規定されていますが、要約すると次の通りです。

「その年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。」

→もっと大胆に要約すると、

「事業の経費にできるものは、売上を得るために必要なもの」です。

つまり税を知るものからすると、私物って事業に必要なもの?という疑問が生じてしまいます。

結論

①私物であるのであれば、まず経費に計上すること自体が難しいです。

②私物で利用しようとしたけど、気持ちが変わり、テレビ撮影用やYouTubeの撮影など、芸能活動のみに使用するいわゆる小道具であれば、事業収入を得るための経費として認められると考えます。(一方で小道具でも価値が一定金額を超えると減価償却資産というものになり、全額がその年の経費にならないので注意が必要です。)

③芸能活動にも利用したいし、私物としても利用したい場合。この場合は利用の頻度数に応じて、経費按分をします。例えば10万円のカバンで、5日に1日撮影で使う。あとはプライベートで私用している。その場合は10万円×5分の1の2万円を経費に算入することを検討します。

免責事項
この記事は2024年10月2日現在の税制度に基づいて投稿しております。
また税制度の適用につきましては個別の判断が必要です。
なお、当事務所にお問い合わせいただいた場合、顧問契約のないお客様への回答はできかねますので、ご留意ください。


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