皮下埋没型中心静脈ポート(CVポート)手術を受けました
初めての抗がん剤治療のために10日間入院しました。
点滴で抗がん剤を投与します。
血管を探って針を指すためにあらかじめルートを作る、ポートを作るという説明をされて、
そのために簡単な手術をすると、
ものすごく簡潔に説明を受けました。
図に書いた説明と軽やかな話術で、
簡単な手術なんだなぁと認識しました。
さらっとしか話を聞いていなかったし、
抗がん剤の副作用の話でもないし、
それ以前の話なので全く気にしていませんでした。
入院初日、もうすぐ消灯時間というときに、
主治医の後輩の若い医師から話があると別室に呼ばれました。
例のポート埋込手術のことでした。
まず、場所は鎖骨の下でした。
話をちゃんと聞いていなかったので
まともに聞いて、
びっくりして椅子から倒れ落ちそうになって、
医師に支えられました。
右側鎖骨下に、そこに装置を埋め込むのです。
14歳の時に宇宙人に連れ去られて探知機をうめこまれた以来です。
なんて冗談も浮かびませんでした。
たいした美しい体ではありませんが、
それでも肌も白いし、首から胸元にかけては
大きな傷やあざもなく
毎晩マッサージをしていました。
そこに、明日、装置を埋め込むだと⁉︎
この世の終わりだと思いました。
2人目を早産で帝王切開した23歳のときも
この世の終わりだと思いました。
この世の終わりから35年も経っているのに
再びのこの世の終わりでした。
がん告知を受けても
余命宣告をされても
一切泣きもせず、落ち込みもしなかったのに、
ポート埋込み手術しますよには大泣きしました。
それでも手術に同意しないと治療はできないので
サインをしました。
若い医師に何度も何度も大丈夫だと言われ、
勇気づけられました。
麻酔をかけるのならば、
手術は眠っている間に済ませてほしいとお願いしました。
部分麻酔でするけれども、わかりましたよ、
ではそうしましょう、
手術の後半には目が覚めてるかもしれませんと言われました。
なるべくならば知らないうちに済ませてくださいと念をおしました。
ベッドに戻ってからは、布団の中でよよと泣きました。
看護師さんも心配してくれましたが、
みんな受けてる手術だから大丈夫よと。
『この、この白い柔肌に埋込まれるのよ!うわーっ!(泣き声)』
どんだけ自意識過剰なんでしょう。恥ずかしい。
『なんでこのギリギリの時間に
明日の手術の話を…
副作用が怖くて抗がん剤から逃げようとしたからさ、
手術が怖くて逃げないように
直前に話したのかなぁ。
それも主治医の後輩の若い先生にさぁ。』
と泣き言を言ったら看護師に
『うん!うちの先生はそんな感じ!』
と明るく応えられて、
泣いていたのが笑いました。
手術は午後からでした。
不機嫌な泣き顔で、
歩けるのに車椅子で運ばれました。
車椅子を押す助手さんは
『私と同い年ですね。39年生まれです』と話しかけてくれました。
泣いてたのが、急に親近感がわいて
『じゃ、金八だ。誰のファン?』と聞いたら
『マッチ!それからジャニーズにハマって嵐は毎年娘と行ってる!』と。
『そうなんだ!わたしね、郷ひろみ!
だからね、ひろみのライヴが終わってから検査入院したの!』
『好きなスターがいると頑張れるよね。
私はね、吹奏楽部でクラリネットをやってて
高校時代は陸上で中距離やってたの!』
助手さん、トークが止まりません。
でも、こうして明るい話をしてくれたので、
手術室に入るまでは恐怖を忘れられました。
手術室では昨日説明してくださった医師がお仲間の看護師さんと笑顔で話しています。
いつもの感じで〜と言うのも手慣れた手術なんでしょうが、わたしにはやっぱり恐怖に感じました。
麻酔を打たれてからは記憶がなくて、
医師から声をかけられて
もうすぐ終わりますよ、
このまま寝てていいですよと言われました。
わたしはそのとき、医師が
『学生時代は落研だった』とお仲間の医師や看護師と話しているのが聞こえてきたので、
そんな無駄話をしながらやっちゃうくらい
簡単な手術なんだと思っていました。
麻酔がよく効いて夕飯も食べることなく
ずっと眠っていました。
つまりこの日は朝ごはんを少しとあとは何も食べませんでした。
それでも病室に運ばれてきてから
自力でベッドに移動させられたので
結構頑丈な体でした。
夜に手術をした医師が回診にきて、
傷口を診てくださいました。
『先生は学生時代落研だったんですね』と話しかけたら
『えっ?違いますよ。誰から聞きました?』と。
『手術の最中にそんな話が聞こえてきたので…』
『そんな話はしてませんよ』
じゃ、わたしは夢をみていたのか…
それにしても
なぜ、落研…
診察が終わって帰り際に医師は
『僕はバドミントン部でした』
と言って帰られました。
ポート埋込手術は
バドミントン部出身の医師により
無事終わりました。
この日は助手さんの吹奏楽部、陸上部、
医師のバドミントン部と
お世話になっている医療従事者が
学生時代になんの部活をやっていたかを知った日でもありました。
🐈⬛きりこ🐈⬛