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東川町のゼロカーボンに取り組む宣言に関して思ったこと

 令和4年3月7日の東川町議会定例会において、東川町が2050年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指すゼロカーボンシティとして【ゼロカーボンに取り組む適疎な町宣言】を表明しました。

 宣言に際して町民の意見を求めていたので自分なりの考えをまとめて役場に町民の意見として提出しました。

 大事なことだと思っているのですが、町内でなかなかこのテーマを語る機会がないので私見をnoteにおいてみます。

以下役場に送った文章そのまま引用

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今回東川町でゼロカーボンに取り組む適疎な町宣言がされることに町民として賛同します。
個人の努力で解決できるレベルの課題ではないとの世界的認識の中、行政が市民と友に計画を実行することは必須であり、速やかに対策を打っていくには必要な取り組みだと考えます。


次に宣言の中身に対する意見です。
宣言後の町が取り組むこととして「ゼロカーボン実行計画策定」、「ゼロカーボンビジョンの推進」がうたわれています。
しかし、その前段階に必要な現状の把握、目標の設定を行う工程に関しての記述がありません。
第1期東川町地球温暖化対策実行計画(第2期分は確認できず)では巻末に町内「施設別エネルギー使用量」が記載されていますが、現在ではもっと細やかな自治体内の使用エネルギーの分析が可能になっています。(環境省地球温暖化対策地域推進計画策定ガイドラインには市町村別エネルギー消費統計作成のためのガイドラインがあります。https://www.env.go.jp/earth/ondanka/suishin_g/3rd_edition/ref3.pdf
また東川町では数年前に産業連関表を作成したのでそこからもより現実的なエネルギー利用の形が見えるはずです。
そのデータをもとにIEAや政府が見据えている目標に対してのアプローチを組み立てることが長期的に見てロスのない戦略になると考えます。時間と投入可能資源は多くありません。最低でも1年程度の策定会議を実施しそれをもとに実行に移すべきと考えます。


3つ目に東川町におけるゼロカーボン戦略に対する個人的な提案です。
取り組みの方向性として大きく分けて3つが考えられます。①小エネルギー社会の構築。②脱化石燃料。③炭素の固定です。

資源エネルギー庁HPから
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2017html/2-1-1.html


①小エネルギー社会への変化と技術の利用
北海道においては移動と熱利用の改善の余地があります。車の省エネルギー性能を上げる以前に車に依存しない街づくり(東川町ではすでにコンパクトシティとして取り組みは開始)、再生可能エネルギーの導入よりも熱効率の高い住宅の建設。これらは技術の進歩を待つまでもなく政策としてすぐに実施可能です。前者は町の賑わいを、後者は快適な住環境をうむうえ、共にウエルビーイングを向上させることが明らかになりつつあります。

表にあるように私たちの利用エネルギーの約1/4は運輸に使われています。一か所で大量に生産し、世界中に流通させる仕組みに頼りすぎることはリスクが大きいことが今回のパンデミックで露見しました。過度に外部依存しない。地域内で無理なく生産できるものはできるだけ生産する。レジリエンスの高い、地消地産(地産地消ではない)型の暮らしへの転換が始まっていると考えます。
すでに東川町は都市から多くの移住者を迎え、来るべき社会の住まい方を実践できる自治体だと考えます。余暇を使って我が家と共に荒廃した山林の手入れを行ことで炭素を固定し、薪の利用で化石燃料に頼らない暮らしをつくろうとする若者もいます。
具体的な提案としては
農村部における多世帯混住型の集合住宅建設
既存建築物の省エネルギー化
東川町産木製高断熱サッシの製品化
町内食品事業者からの食品ロスの飼料化・肥料化
施設園芸において加温しない中国式温室の導入

②脱化石燃料は地方が豊かになる時代への幕開け
現在私たちはエネルギーの多くを海外に依存し、暖房、移動のために北海道では年間○億を支出しているが海外へ流出している。それらを地元資本の再生可能エネルギーに転換した場合この資金が町内に還元される。手元にある資料では平均家庭一戸あたりエネルギー支出は27万円/年(2019年北海道石油システムセンター調べ)東川の世帯数が約4000戸なので家庭内での消費支出のみでも10億円程度を支出している。これには自動車、産業用電力・軽油などは含まれない。
2021年に農水省が出した「みどりの農業システム戦略」では「化石燃料に代わる乾燥調製方式を2020年代半ばから実証試験に入る」ことが明記されている。一方現在農協で計画中のCEではそのことに対する検討が明記されておらず対応が急がれる。
また同戦略では「2040年をめどにトラクターなどの電動化」を工程表に入れているが、すでにアメリカでは電動トラクター、重機は実用化され、アマゾン出資による大型車両に特化した電動車両メーカーが誕生している。他国からは遅れているが日本でもクボタが2024年に小型のものから市場に投入する。これらが進んだ時、農家は自分の敷地で発電し、充電した電力で営農が可能となる。
具体的な提案としては
営農型太陽光発電を利用した自己託送型町内電力融通システム
太陽光発電ヒートポンプ・森林端材のバイオマスハイブリッドの蓄熱システムによる小規模エリア熱供給(団地レベル)
地熱利用
用水路・小規模河川による小規模水力 
圧縮空気による蓄電(揚水発電よりも小規模開発で済み、低コスト。アメリカでは実証実験開始) 
忠別川河川敷利用

③植物による炭素の固定
樹木のみならず植物の根が貯える炭素の大きさが再評価されており、2021年に農水省でだされたみどりの農業システムでも不耕起栽培、裸地での緑肥利用は推進されている。
農業で生きている東川としては未来志向で取り組む価値がある。

具体的な提案として
農地への有機質・バイオ炭の投入(堆肥、バイオ炭などの土中の炭素分を使用して微生物が窒素やリンを利用できる形に変えているが、化学肥料栽培では炭素を土中に還元しなくても栽培可能と考えられている)
有機物マルチ
不耕起栽培
荒廃山林の手入れ(山林の適正な生育が炭素の固定につながる)
山林内の下草と遊水池の畦畔を草食動物による管理、畦畔の草地管理、

最期に
IEAの報告書では2030年までに現状の技術で大幅な削減を実行し、それ以降は新技術で対応を詰めるロードマップを選択しないと2050年にゼロカーボンは困難であると表記されています。以下の文献にもあるように現在ある技術で対応可能なことは多くあります。2050年ゼロカーボンが達成可能か否かは効率良く手順を踏むことだと考えます。
2050年は地元にある資源を生かして地元の人間の暮らしが豊かになる。年配の方々にとってはどこか懐かしくもある、新しい技術に支えられるレジリエンスな社会にすることが私たち世代の責務だと考えます。

ファームレラでは1990年代から持続可能社会の構築を経営目標として取り組んできました。今後の削減計画策定に関しては町民として一助になれと幸いです。。

参考
International Energy Agency: IEA https://www.iea.org
農水省・みどりの農業システム戦略https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-7.pdf
Kiss the ground  https://kissthegroundmovie.com
ドローダウン https://greenz.jp/2021/01/13/draw_down/

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