美しい心は、悲しみが人を育てることを知っている
冬の枯木は、悲しそうに見えませんか。
本格的な寒さが都立木場公園を覆うようになり、憩う人影も疎らです。
すっかり葉を落とし黒々とした枯木が枝をむき出しに張りだしにして、静止画像のように立って「寂しくて足早になる枯木かな」です。枯木は、風にも揺れず、悲しく静まって、じっと何かを考えているように見えます。
ダンテの言葉に「惨めな時に幸福を思い出すことほど大きな悲しみはない」「楽園への道は地獄から始まる」があります。
実際、国立がんセンターの某医師のセミナーで聴いたところでは、罹癌者の自殺の傾向として、癌の宣告を受けて、怒る期間の長い患者は自殺率が高く、悲しむ患者は自殺率が低いと語っていたことを覚えています。
心理学では、怒りは感情で、悲しみは理性として扱います。
出来事に対する怒りは、速く悲しみに転換することによって、理性が働き、地獄から這い上がることができることをダンテは知っていたのです。
ダンテの言葉に「美は魂を覚醒させ行動を起こさせる」とあります。
美しいと感じるものを見たり、美しい心に触れることが元気を取り戻すことになります。
枯木に美を感じたら元気モードになっていると言うことで、「静けさや枝美しき枯木かな」と切り替えました。
美しい心は、悲しみと同根の理性なのかも。