トランプ再選でAppleが直面する試練
アメリカ大統領選挙で11月5日にドナルド・トランプ氏が当選しました。トランプ新政権は、特に中国からの輸入製品に対して60%の関税を導入すると表明しており、全輸入品には10~20%の関税をかける予定です。これにより、海外生産に依存するAppleをはじめとするIT企業が大きな影響を受けると予想されています。
Appleの苦境
新たな関税政策で、最も早く影響を受けると見られているのがAppleです。AppleはiPhoneをほぼすべて中国で生産しており、アメリカ国内での製造は一切行っていません。また、Appleの利益の大半は税率が低いアイルランド法人に計上されています。このため、アメリカでの納税は非常に少ない状況です。これにより、トランプ政権はAppleに対してアメリカでの納税を強く求める可能性が高まります。
トランプ氏が公約通り法人税を15%に引き下げた場合、法人税そのものの影響は薄れるかもしれません。
一方で、仮にiPhoneの製造原価が販売価格の三分の一程度だとすると、iPhoneの輸入コストが関税によって20%前後上昇する可能性があります。
もしiPhoneのコストが20%も上昇すれば、Appleの現在の利益の大半が吹き飛びます。
このため、法人税減税の恩恵を受ける一方で、iPhoneの価格が上がるリスクも見極めなければなりません。
また、トランプ政権がiPhoneの一部をアメリカ国内で生産するようAppleに要求する可能性も示唆されています。
大統領選挙の前にウォーレン・バフェットがApple株を大量に売却したのも、この関税が理由かもしれません。
他のIT企業に吹く逆風
20年にわたり急成長を遂げてきたGoogleやMeta(旧Facebook)などのIT企業にも厳しい時代が訪れるかもしれません。
特にSNS関連の企業には、若者への影響やロシアや中国がアメリカ世論に介入しているとの疑惑が絶えません。
さらに、過去にはGoogleや旧Twitter(現X)が、保守的な投稿を削除したり、リベラルな投稿を優先的に表示したといった操作をしていたとの報道がされています。
SNSが世論操作に使われている疑惑があるため、トランプ支持者のイーロン・マスクを中心にSNS業界の情報操作に対する政府による調査が行われるかもしれません。
こうした圧力のもとで、SNS業界は今まで続いていた「バブル期」に終止符が打たれる可能性があると言えるでしょう。
場合によっては、アメリカ国内でも欧州と同様に巨額の罰金や連邦政府による訴追すらあるかもしれません。
日本企業への影響
トランプ政権の関税政策は、日本の自動車産業にも大きな影響を及ぼすでしょう。
自動車メーカーは米国市場への輸出に依存しているため、輸入関税の引き上げにより競争力が低下する懸念があります。
またメキシコからの輸入自動車に対する100%の関税は、日本の自動車産業の米国での生産にも大きな影響があるでしょう。
関税の影響で、日本からアメリカへの自動車輸出が激減すると、日本国内の自動車製造に壊滅的な影響を与える可能性すらあるかもしれません。
また、半導体関連企業も対中輸出規制の強化が続く中で、業績に影響が出る可能性が高まります。日本製鉄がUSスチールを買収しようとする計画も事実上停止するかもしれません。
現在の円安傾向が日本株を支えていますが、トランプの関税政策の全貌が見え始めると、市場が不安定になるリスクもあります。
トランプの関税政策の意外な結末
トランプ政権の関税政策は、アメリカと世界の経済成長に悪影響を及ぼす可能性があると多くの経済学者は指摘しています。
しかし、米国市場での売り上げを維持したい企業が多いため、最終的にはアメリカ国内での工場建設と生産拡大に向かうかもしれません。
これにより、1980年代以降に失われたアメリカの製造業が再び盛り返し、ブルーカラー労働者の所得が向上し、中産階級が復活する可能性すらも考えられます。しかも外国の資金でです。
もし実現すれば、過去20年のグローバル化は誤りで、トランプが正しかったことになります。
金融市場への影響
減税期待により株式市場が一時的に上昇するかもしれませんが、いずれ長期金利が上昇すれば株式市場は失速するリスクがあります。
特に時価総額の大きなAppleをはじめとするIT株が低迷すると、株価全体に影響を与えるでしょう。
もしかしたら米国株は長期間低迷するかもしれません。
米金利の上昇から為替市場はドル高が続く可能性もあります。
また、米国金利の上昇が新興国の通貨危機やヘッジファンドの破綻などのリスク要因となり、金融市場に混乱が生じる可能性もあります。
まとめ
トランプ再選によって、AppleをはじめとするIT企業や自動車産業が直面する課題は非常に大きいものとなるでしょう。
一方で、アメリカ国内の製造業復活が期待され、長期的にはブルーカラー労働者の所得向上や貿易赤字の解消に寄与する可能性もあります。
しかし、関税政策がもたらす負の影響も無視できません。