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自公大敗の本当の理由・・・つくばエクスプレスに負けた公明党石井代表

10月27日に行われた衆議院選挙で、まさかの自民・公明の大敗が話題となっています。今回の選挙では旧安倍派による「裏金パー券問題」などの政治と金を巡る問題も争点でしたが、もう一つ見逃せない要因が「10増10減」という衆議院の定数是正による影響です。この選挙区改定が自公にとって大きな痛手となり、20年以上続いた自公の支配的な枠組みが揺らぎ始めています。
(動画にもしています)

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埼玉14区

10増10減による選挙区の構造変化の影響が特に大きかったのが、埼玉14区です。埼玉14区は以前は、埼玉県東部の江戸川流域エリアである旧庄和町や吉川市、旧鷲宮町や栗橋町、幸手市などが含まれていました。それが今回の区割り変更で従来からの三郷市、八潮市、そして草加市が加わりました。
このエリアには、近年人口動態の劇的な変化があり、選挙結果を大きく左右することになったと思われます。今回は、そんな埼玉14区の特徴とともに、政治構造の変化についても掘り下げてみます。

ボロ団地と公明党

新たに区割りされた埼玉14区は、草加市、三郷市、八潮市の3市で構成されています。そして草加市は「松原団地」、三郷市は「三郷団地」という超巨大団地を抱えるエリアで、団地に住む有権者は共産党、公明党の支持が厚い地域です。
特に三郷団地は、最寄駅が武蔵野線で、都市には直結していません。都心への通勤が不便で、築50越の「ボロ団地」が立ち並び、住民の大半が貧困層の高齢者です。一部では「限界集落」扱いされています。実際に三郷市では、過去の選挙で共産党が30%近い得票をたたき出しています。当然ながら公明党も強いエリアです。

産廃銀座の八潮市

八潮市も鉄道の通っていない首都圏では珍しい「鉄道空白地」でした。そのためか市内には「産業廃棄物処理所」や中古車解体の「ヤード」が林立し、お世辞にも環境がいいとは言えない場所でした。口の悪い人に言わせると「東京のごみ捨て場」「産廃銀座」などと揶揄されていたエリアです。

過去の衆議院選挙に関しては、幸手市出身の元農協で自民党の三ツ林議員が親子二代に渡って議席を独占してきました。この地域は、元々都心への鉄道アクセスが弱い「鉄道空白地帯」でした。そのため都市型の住民が、他の埼玉県の市町村より少なく、昔ながらの農協や地主が強い基盤を持っていました。首都圏ですが、何方かというと、地主が支配する典型的な田舎の選挙区でした。

つくばエクスプレスの衝撃

しかし、2005年に開通したつくばエクスプレス(TX)が八潮市と三郷市を都心直結のベッドタウンとして急速に発展させ、新しい人口層が流入しました。
特にこの20年で三郷市と八潮市の人口がそれぞれ10%近くも増加。この結果、高学歴・高収入のいわゆる「パワーカップル」やファミリー世帯が急増し、埼玉14区の有権者層は大きく様変わりしました。TX沿線に住む新たな住民層は、従来の自民党支持層とは異なり、聖域なき改革を唱える維新や、現役世代に寄り添った合理的な政策を主張する国民民主党などを支持する傾向が強く、結果として今回の選挙に大きな影響を与えたのです。
イメージとしては、夫婦そろって正社員の共働きで、タワマンに住み、電動自転車で子供を毎日保育園に送っている「ワーキングママ」世帯です。

公明党石井代表がまさかの落成

埼玉14区には今回、公明党の石井代表が比例区との重複立候補なしの「一本勝負」で挑みました。これまでならば、草加や三郷の団地を基盤とし、創価学会支持者からの票に加えて、選挙協力関係にある自民党の全面的バックアップを受けて、余裕の勝利が期待されました。しかし実際は1万票の差で国民民主党の鈴木候補に敗北。皮肉にもこの票差は、ちょうど過去20年間でTX沿線に増加した人口数とほぼ一致していたのです。

つまり、TXの開通によって流入した新しい住民層に支持を得られなかったことが、石井氏の敗北に繋がったと考えられます。TX沿線で増加した高収入高学歴のパワーカップル層の票を取りこぼし、創価学会の支援に頼ってきた公明党にとって痛恨の一撃となったわけです。 

自公の枠組みが崩壊に向かう?

埼玉14区での自公の敗北は、長年の自民・公明の連立体制に大きな波紋を広げました。10増10減による定数是正は、地方の少子高齢化による人口減少と、都市部での人口増加を反映しています。これにより、地方では議席が減少し、自民党が議席を維持するのが難しくなりつつあります。特に和歌山県や山口県では議席が1つずつ減少し、地方に強い自民党にとっても厳しい状況です。

一方、東京や埼玉、千葉など都市部の選挙区は増加。これまで公明党が都市部の貧困層を支持基盤としてきましたが、TX沿線のように新たな住民層が流入する都市部では支持が弱まりつつあります。若いパワーカップルやIT関連の新興富裕層は、合理的な政策を求めて国民民主党や立憲民主党に票を投じる傾向が強まり、自公の枠組みは都市部で崩れ始めています。

地方での自民党の盤石な基盤をもとに、自民党の支持層が脆弱な都市部で公明党のアシストを受けるという「自公の枠組み」自体が陳腐化しているのです。

タワマンに嫌われた丸川珠代、港区で敗れる

こうした変化は、裏金大臣で注目を集めた丸川珠代元五輪大臣の東京7区(港区)でも見られます。過去10年で港区の人口は13%以上も増加し、その多くがタワーマンションに住む新興富裕層やパワーカップル層です。港区のタワマン住民は、株や不動産で資産を築いた新しい富裕層が多く、従来の自民党支持層とは一線を画しています。こうした層は、保守的な自民党支持よりも、現実的で改革を掲げる政党に支持を向けており、今回は立憲民主党や国民民主党が大きな支持を得ました。

日本政治の新潮流:「れいは新選組」と若い貧困層の支持

また、都市の若い貧困層も従来の支持政党から流れが変わりつつあります。特に「れいわ新選組」が若い世代の間で支持を拡大。従来、共産党や公明党が基盤としてきた貧困層に、れいわ新選組が訴求力を発揮しています。れいわ新選組の勢力拡大は、格差が広がり続ける日本社会で、今後も進むと考えられ、次世代のキャスティングボードを握る存在となる可能性があります。

結論:陳腐化する自民党と台頭する国民民主

少子高齢化や人口動態の変化により、日本の政治構造は大きな転換期を迎えています。これまでの自公の枠組みは、時代遅れであり、次第に陳腐化しつつあります。次の10年で、国民民主党やれいわ新選組が台頭し、新たな二大政党となる可能性さえあります。次世代の政治構造はどのように形成されるのでしょうか。ひょっとすると10年後には、「玉木総理」や「山本太郎総理」の誕生が現実のものになるかもしれません。

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