見出し画像

フジテレビと共産主義の共通点

ご存じの通りフジテレビが大炎上中だ。
そして、この問題を耳にして、ある疑問を持った人もいるかもしれない。
それはフジの天皇と揶揄される日枝久取締役相談役が、何故かくも大きな権力を持っているかだ。
ユニクロの柳井社長やソフトバンクの孫社長は、自身が創業者で大株主だ。故に権力があって当然だろう。
しかし日枝相談役は、オーナーどころか大株主ですらない。
取締役会での票は、他の取締役と同様に一票に過ぎない。
もし他の取締役が結束すれば「解任」も可能だ。
しかし記者会見で見た通り、誰も「日枝天皇」の首に鈴をつけることは出来ないようだ。
大株主でもない只の取締役が、なぜこれほど大きな影響力を発揮できるのだろうか?

共産主義との共通性

この日枝氏の不釣り合いとも言える権力・影響力の謎を解くカギは「共産党」との類似点だ。
もっと直接的に言うと「スターリン」や「毛沢東」との共通点だ。

人事による支配

このスターリン方式の支配のカギの一つが「人事」だ。
本来人事は、能力に応じて行われれうべきだが、スターリン方式では、能力より「忠誠心」が優先される。自分に諫言するような「ウザい」部下は直ちに排除される。
フジテレビのような企業では、昇格を遅らせたり子会社への左遷により経営陣から排除が行われる。

反体制派の分断

もう一つ重要なのが、反体制派を分断することだ。これは文字通り「物理的に分断する」必要がある。
例えば僻地の支社に飛ばされた反体制派は、東京にいる仲間とは連絡が取りにくくなる。
スターリンや毛沢東は、シベリヤや新疆の僻地に反体制派を追放した。これも反体制派を物理的に分断して協調行動を妨害するためだ。
連絡が取れなければ、自分に対して「クーデター」を起こされるリスクは少なくなる。
※ただしSNSが普及した現在、この手法がどこまで有効かは疑問だ。

スパイによる情報収集

もう一つ重要な点は、スパイによる情報収集だ。自分に反旗を翻しそうな人間は、早めに特定する必要がある。
そのためには、組織の各所に「スパイ」を配置する必要がある。
情報網を張り巡らし、日ごろの言動や交友関係から反体制派を早期に炙り出し排除するのだ。
例えば役員秘書などに対しては、誕生日にブランド品を贈ったり、それこそ訪問の度にスウィーツを買っていくだけで懐柔してスパイにできることもある。銀座のクラブのママなども同じだ。
同じような例としては、役員専用車のドライバーを懐柔し自分に定期的に情報を報告させるようなことも頻繁に耳にする話だ。ドライバーの子供の大学入試や就職の世話をすることでスパイにする手法はよく使われる。
このように社内に情報網を張り巡らして、日ごろから自分の潜在的なライバルを監視する。
フジテレビでも政治家や財界人の子弟などの縁故入社が異常に多いとよく耳にする。彼らの中にも、日枝体制を支える情報網が張り巡らされているのは想像に難くない。

飴と鞭

もう一つが、自分に忠誠を誓う部下に対しては、「特権的な利益」を与えるだ。
フジサンケイグループ関連でよく聞くのが「ゴルフ会員権」だ。
多くの企業で未だに役員に会社所有のゴルフ会員権の利用を認めている。
因みにフジサンケイ・グループでは、役員が利用できるゴルフ場にランク付けがされているようだ。
当然ながら「運転手付きの車」や「秘書付きの個室」、さらに「銀座のクラブ」や「高級レストラン」などを社費で自由に利用できるなどの特権が提供される。
この「特権」の付与を支配者が恣意的に行うことで、役員や管理職はお互いに自身の特権と他の役員が得ている特権を比較することになる。
その結果、役員の間には嫉妬が渦巻くことになる。この嫉妬心から役員たちは、支配者への忠誠を競うようになる。
この男の嫉妬の感情を利用して、権力者は自身の支配を盤石なものにすることができる。
この現象は、実は動物園などの「猿山」でよくみられる光景らしい。ボス猿は、自分の権力を維持するために、取り巻きの猿に、ご褒美としてフルーツなどのご馳走や、雌猿との交尾のチャンスを与えるそうだ。因みに餌や雌を独り占めにすると、即座に反乱が起きてボスから引き摺り下ろされるらしい。
やはり人間は猿の仲間の様だ。

役員は室内犬

独裁制が持続する要因としてもう一つ考えられるのが、役員の流動性の低さだ。
一部IT系の企業などでは、役員の転職が当たり前になっているが、多くの日本の大企業では、依然としてプロパーから昇格した役員が大半だ。
彼らは多くのリーマンと同じように、プロの経営者としての訓練を受けていない。
経営者としていのスキル不足から、今いる会社から放擲されると外では生きていけない
丁度、飼い猫や室内犬が外では生き残れないのと同じだ。
このため一度、独裁者の人事によるトラップに捉えられると脱出が出来なくなる。当然、反乱も起こせなくなる。
昨日テレビで見たフジテレビの経営陣は、例えばユニクロの役員に転職して生き残れるだろうか?
無理だろう。

株主の排除=民主集中制

フジテレビのような現代の大企業を恣意的に支配するためには、単純な飴と鞭方式だけでは不十分だ。
もう一つ必要なのが「株主の排除」だ。

実は共産党でも同じような方式がとられている。
それが「民主集中制」と呼ばれる方式だ。
昨今、日本共産党でも興味深い事件が頻発している。それは、何十年も共産党員だった古参の党員が、党中央を批判する現象だ。
例えば長年京都の共産党幹部として活躍した古参党員が、党内民主化と党首公選制を唱えた本を出版したところ、共産党を除名される事件が起きている。
また同じような事件は福岡県でも起きており、除名された古参党員を慕う福岡県の共産党員の間で騒ぎになっているようだ。
この事件は、パワハラとして訴訟になっており、共産党内部での異様な状況が図らずも暴露される事態になっている。

普通の組織では、定期的に「会員(党員)による選挙」が行われてトップの信任が行われる。
そしてトップが不適格と判断されれば「交代」させられる。先日行われた自民党の総裁選もその一例だ。
共産党で株主にあたるのが「党員」だろう。
しかし奇妙なことに共産党では、「党員による選挙」が行われていない。
「民主集中制」と呼ばれる奇妙な制度の元で、中央の人事は、全て中央で決定されている。
実質的に一般党員の権利は排除されている。

丁度、ポインズンピルなどと呼ばれる「買収防衛策」を使って株主を骨抜きにする日本企業の手法とそっくりだ。
またテレビ局の場合には、20%以上の株式保有を制限する「外資規制」と、特定の株主が30%以上の株式を保有することを禁止する規制により、実質的に株主の権利を制限している。
このため株主総会は機能不全に陥り、取締役会での決定が実質的に全てになる。
日本企業の多くは、共産党と同じような手法で運営されているのだ。

多くの日本企業は共産主義

実はフジテレビ以外の多くの日本企業でも長年「株主の排除」が行われてきた。
プロパーのサラリーマン経営者による支配が「善」であり、社外の株主が権利を行使するのは「反社会的行為」とさえ見られてきた
他の国には見られない「総会屋」と呼ばれる奇妙な人たちがいたのも、この理由からだろう。
今でこそ買収ファンドによるTOBなども頻繁に見かけるようになっているが、つい20年前ぐらいまでは、買収などは禁じ手と考えられ忌避されていた。
今回のフジテレビの騒動でも、従業員やスポンサーが話題になることはあっても、「株主」が話題になることは全くといっていいほどない
この日本という国は、表向きは資本主義国と称している。しかし株主の権利が、これほど蔑ろにされている現状を見るにつけ、実は一種の「封建制」のような姿ではないかと疑ってしまう。

フジの創業者は元共産党員

実は、そもそもフジテレビの創業者の一人である水野成夫氏も元共産党員だ。
しかも平の党員ではない。驚くべきことに今も続く共産党の機関紙「赤旗」の初代編集長だった人物だ。
その元共産党員が転向して、財界人として作った会社の一つがフジテレビだ。

日枝氏も元共産党

ちなみに日枝氏も、若かりし頃は共産党員だったらしい。そしてフジテレビ社内で労働組合活動に奔走し、経営陣から相当疎まれていたそうだ。
実は日本の経営者の中には、元共産党員だった人間が意外に多い。
例えば先日亡くなった読売新聞主筆のナベツネこと渡邊恒夫氏も元は東大共産党のリーダだった。
西武百貨店の代表で一代でセゾングループを築いた堤清二氏も東大時代は共産党員だったそうだ。
特に渡邊恒雄氏は、近代的な会社組織の運営方法として共産党時代に学んだ組織運営手法が役に立ったと公言して憚らなかった。

知らない人には衝撃的かも知れないが、日本の「保守系」メディアの代表である、読売新聞日本テレビとフジサンケイグループの経営者は、両方とも「元共産党員」だ。

自浄作用は無理

以上のように考えると、フジテレビの現在の役員が自浄作用を発揮するのは無理だろう。
丁度、スターリン時代のソ連で共産党員がスターリンの独裁に服従したのと同じだ。
フルシチョフがスターリン批判をしたのも、結局はスターリンの死後のことだ。
鄧小平も毛沢東が死ぬまでは動きが取れなかった。

株主総会が山場

共産主義的な運営が行われていたフジテレビだが、今回の騒動を見るにつけ、この共産主義的支配にも綻びが見えているようだ。
あまりに日枝氏による支配が長く続いたため、社内に反対勢力が一切存在しなくなっているからだ。
問題が発生するたびに、トカゲの尻尾切りを続けているうちに、とうとう「尻尾が短くなってしまった」ようなのだ。
一旦失脚したと見られていた、HDの金光会長と遠藤副会長が復権したのがその表れだ。もう在庫が切れたのだ。

仮にもし本格的な動きがあるとしたら6月の株主総会だろう。
既に一部の個人株主の間では、SNSで情報交換しながら協調行動をとる動きもみられるようだ。個人株主が一斉に外資の株主提案に賛成票を投じれば、今の経営陣が一掃される可能性も否定できない。
日本企業の閉鎖的な風土を打ち破るきっかけになるかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!