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辞書攻撃とは?攻撃手法、ツール、そしてその対策方法を解説

インターネットセキュリティにおける重大な脅威の一つである「辞書攻撃」。これは、攻撃者が一般的に使われるパスワードや単語リストを使ってターゲットアカウントに不正アクセスを試みる方法です。この記事では、辞書攻撃の仕組みから攻撃者が使用するツール、実際の被害事例、そしてその対策方法について詳しく解説します。


辞書攻撃とは?

辞書攻撃とは、攻撃者が予め準備した単語リスト(辞書)を使って、ターゲットのパスワードを試す攻撃方法です。一般的に使われやすいパスワードや単語(例えば「password」や「123456」)を中心に試行していきます。総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)と比較すると、攻撃効率が高いため、広く使われています。


辞書攻撃の特徴と攻撃者の手法

1. 攻撃のスピードと効率

辞書攻撃は、攻撃者が事前に準備した辞書ファイル(単語リスト)に基づいて、パスワードの推測を行います。予測可能な単語がリストに含まれているため、数秒~数分で成功することがあります。特に「123456」や「qwerty」といった簡単なパスワードが多く使われているため、非常に効率的です。

2. ターゲット

辞書攻撃のターゲットは、一般的なパスワードを設定しているユーザーや企業アカウントです。多くのユーザーは「password」や「admin」などの簡単なパスワードを使いがちで、これらは辞書攻撃に対して非常に弱いです。


辞書攻撃に使用されるツール

攻撃者は、辞書攻撃を効率的に行うためにさまざまなツールを使用します。ここでは、特に有名なツールについて紹介します。

1. rockyou.txt

rockyou.txtは、最も有名な辞書攻撃用の単語リストの一つです。このリストは、2009年にRockYouというソーシャルメディアサービスがハッキングされ、その際に流出したパスワードリストから作成されました。現在では、何百万もの一般的なパスワードが含まれており、攻撃者によって広く利用されています。

例:

  • 123456

  • password

  • qwerty

  • letmein

これらは、rockyou.txtの中でも非常に多く使用されているパスワードです。攻撃者は、このリストを用いてターゲットのパスワードを迅速に特定します。

2. CeWL(Custom Word List Generator)

CeWLは、Webサイトから単語リストを生成するツールです。攻撃者は特定のウェブサイトをターゲットにして、そのサイトのコンテンツ(テキスト、タイトル、メタデータなど)からカスタムの辞書ファイルを作成します。これにより、ターゲットに関連したパスワード(例えば、企業名や製品名)を特定することが可能になります。

CeWLを使って作成されたリストは、ターゲットに非常に関連性が高く、標準的な辞書攻撃よりも成功率が高くなります。


辞書攻撃による実際の被害事例

1. Instagramアカウント乗っ取り(2019年)

Instagramでは、辞書攻撃により大量のアカウントが乗っ取られる事件が発生しました。多くのユーザーが「password」や「123456」といった簡単なパスワードを使用していたため、攻撃者は短時間で多数のアカウントに不正アクセスしました。

2. LinkedIn流出事件(2012年)

LinkedInでは、1億1700万件以上のパスワードが流出し、その後、辞書攻撃が利用されました。多くのユーザーが流出したパスワードを他のサイトでも使用していたため、攻撃者はLinkedIn以外のサービスにもアクセスできました。この事件は、パスワードの使い回しの危険性を強く印象づけました。


辞書攻撃の対策方法

1. 強力なパスワードを使用する

辞書攻撃に最も有効な対策は、強力なパスワードを設定することです。強力なパスワードは、長く、ランダムな文字列を使用しましょう。以下の例のような複雑なパスワードが理想的です:

  • 8Bs@12fH!2kX7w

こうしたパスワードは、辞書攻撃のリストに含まれることはほとんどないため、非常に強力です。

2. 多要素認証(MFA)を導入する

多要素認証(MFA)は、パスワード以外にもう一つ認証方法を要求します。例えば、SMSで送信されるコードや認証アプリを使った確認です。これにより、たとえ辞書攻撃でパスワードが解読されても、他の認証手段が必要となるため、アクセスは防げます。

3. パスワードマネージャーの利用

パスワードを強力かつ一元管理できるパスワードマネージャーを利用することが重要です。これにより、各サービスに対してランダムで強力なパスワードを設定でき、パスワードを使い回すリスクを減らせます。

4. パスワード変更の習慣化

パスワードは定期的に変更することが推奨されます。また、異なるサービスで同じパスワードを使い回さないことが重要です。

5. ログイン試行回数制限

システムにおいて、一定回数以上のログイン試行を試みた場合にアカウントをロックする機能を導入することも有効です。これにより、辞書攻撃を繰り返すことができなくなります。


まとめ

辞書攻撃は、簡単なパスワードを使っている場合に非常に効果的な攻撃方法ですが、適切な対策を講じることで防ぐことができます。強力なパスワードの設定や多要素認証の導入、パスワードマネージャーの利用など、基本的なセキュリティ対策を徹底しましょう。また、攻撃者が利用するツールや手法を理解することも、対策を講じる上で非常に重要です。

セキュリティは一度設定して終わりではありません。常に最新の攻撃手法に対して適切な対策を行うことが求められます。

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