探すをはじめる
あの日の病院の様子は
なぜかはっきり覚えてる。
蛍光灯がやけに明るいがらんとした待合室、
患者さん用のスリッパが散乱したままの玄関、
ドアを開けた時の外の空気の冷たさ、
夕暮れの暗い空と降り続く雪。
寒かったね。
一瞬息が止まりそうだった。
雪がかからないところに立って、
道路の先のずっと向こうまで
全力で伸び上がって見てみたよね。
遠くは雪でぼんやりかすんじゃうんだけど、
車が走ってくるたびに
ハッて思って
運転席にお父さんがいるかどうか探したね。
そんなことして風邪引いたらどうするの、って
今の私がいたらやめさせようとするけど、
あーちんの頭の中にはそんなの浮かびもしなかったね。
今のことだけで精一杯だったよね。