東大卒がいない日本の高年収ランキングと「運」の重要性
〜成功は才能ではなく、運が決める？〜
1. 東大卒が高年収ランキングにほとんどいない理由
日本の「お金持ちランキング」（上位50名）を見てみると、意外なことに東京大学の卒業生がほとんどいません。
一方で、慶應義塾大学出身者は複数名ランクインしています。
普通に考えれば、日本で最も優秀な人が集まる東大の卒業生が、多くの成功者を輩出していてもおかしくないはず。しかし、実際には東大卒よりも慶應卒の方が「超富裕層」に多いのです。
これは単なる偶然ではなく、実は「才能と運」に関する数学的な研究が示す現象と一致しています。
2. 成功は「才能」ではなく「運」に左右される？
この話を考えるうえで参考になるのが、イグノーベル賞を受賞した「才能 vs 運」の研究です。
イタリアの研究者たちは、成功がどのように生まれるのかを数学的にシミュレーションし、「最も才能のある人よりも、運のいい普通の人の方が成功しやすい」という結論を導きました。
この研究では、以下のようなシンプルな実験を行いました。
3. 実験の仕組み
【実験のシナリオ】
1000人の架空の人を用意し、それぞれに「才能の数値」を割り振る（才能は普通の人の間でバラバラに分布）。
全員が同じお金を持った状態でスタートし、40年間働くと仮定する。
ランダムに「幸運」と「不運」のイベントが発生し、それが人々に影響を与える。
幸運イベント：良い仕事のチャンス、投資が成功、成功する出会いなど
数学的操作・・・資産を二倍にする不運イベント：病気、会社の倒産、失敗など
数学的操作・・・資産を半分にする
才能が高い人ほど幸運を活かせる確率が高いが、それでも運が重要な役割を果たす。
何度もシミュレーションを繰り返し、どんな人が最も成功するかを調べる。
4. 実験結果：何度試しても「普通の才能＋運が良い人」が一番成功した
この実験を何度繰り返しても、以下のような結果が出ました。
最も成功したのは「普通の才能＋運が良い人」。
最も才能がある人は、実はあまり成功していない（運が悪いと成功できない）。
運が良ければ、そこそこの才能の人でも大金持ちになれる。
一番才能のある人が成功するわけではなく、むしろ「才能が中くらいで運が良い人」の方が上にいく。
富の八割は上位20%に集中した。「パレートの法則（80:20の法則）」これは、現代の経済格差の傾向とも一致しています。
5. これが東大卒と慶應卒の違いを説明する？
この結果を日本の高年収ランキングに当てはめてみると、東大卒が少なく、慶應卒が多い理由が見えてきます。
東大卒のキャリアパス
東大卒の多くは、官僚、大企業、学者など安定した職業を選びがち。
こうした職業は収入の上限が決まっており、急激にお金持ちになりにくい。
つまり、「運の要素が少なく、安定はしているが大成功しにくい環境」にいる。
慶應卒のキャリアパス
一方、慶應卒は経営者、起業家、投資家などリスクを取る職業を選ぶ人が多い。
こうした仕事は、成功すれば大金持ちになれるが、失敗すればゼロになるリスクもある。
つまり、「運の影響を大きく受ける環境」にいるため、一部の慶應卒が爆発的な成功を収めることがある。
このように考えると、東大卒が高年収ランキングにいないのは「才能がないから」ではなく、「運の影響を受けにくい職業を選んでいるから」と説明できます。
6. 結論：学歴よりも「運を活かせる環境」にいるかどうかがカギ
この研究と日本の高年収ランキングを照らし合わせると、成功するには次のようなポイントが重要だと分かります。
✅ 才能は大事だが、それだけでは成功できない
✅ 運を引き寄せる環境（起業・投資など）にいることが成功のカギ
✅ 安定志向（東大卒のキャリア）よりも、リスクを取る人（慶應卒のキャリア）が大金持ちになりやすい
✅ 過去の成功者を見ると、「才能のある人」よりも「運が良かった人」が多い
つまり、「学歴が高い＝成功する」とは限らず、むしろ運の影響を受けやすい環境にいるかどうかが、成功を左右しているのです。
これからの時代、自分の才能を伸ばすだけでなく、「運を活かす方法」を考えることが、成功への近道なのかもしれません。
参考文献
TALENT VERSUS LUCK: THE ROLE OF RANDOMNESSIN SUCCESS AND FAILURE ALESSANDRO PLUCHINO, ALESSIO EMANUELE BIONDO and ANDREA RAPISARDA
日本長者番付 2024
By Naazneen Karmali, Forbes Staff
With reporting by Anuradha Raghunathan and James Simms.