宇宙一分かりやすい 保全処分 2
繰上請求の基本と要点
繰上請求は、国税債権を守るために、通常の納期限を前倒しして納税を求める手続きです。納期限が納税者の権利として設定されている一方で、財産の散逸などの危険がある場合には、期限の利益を奪って早期に徴収を確保します。
1. 内容
背景: 納期限は、納税者の「期限の利益」を守るためのものです。しかし、財産が失われるリスクがある場合には、国税の完納を待つ余裕がありません。
目的: 繰上請求によって、国税の保全を図り、徴収を確実にするための措置です。
2. 繰上請求の要件(国税通則法第38条第1項)
繰上請求を行うには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
(1) 納税者が以下のいずれかに該当すること
財産に強制換価手続が開始された場合
→ 差押えや競売が始まり、財産が失われる可能性があるとき。相続人が限定承認をした場合
→ 納税義務者が死亡し、相続人が限定承認を行うことで財産に制限がかかる場合。法人が解散した場合
→ 解散により法人の財産が処分される可能性がある場合。信託が終了した場合
→ 信託の終了に伴い、財産の帰属が変わるとき。納税者が納税管理人を定めず、国外に転出する場合
→ 納税管理人を設置せずに日本を離れることで、徴収が困難になる場合。偽りや不正行為によって国税を免れようとした場合など
→ 脱税行為や滞納処分の回避が認められる場合。
(2) 納付すべき税額が確定しており、納期限までに完納されないと認められる場合
→ 納付されない可能性がある税金が確定していることが条件です。
3. 手続き(国税通則法第38条第2項)
繰上請求は、以下の手続きに従って行います:
繰上請求書を送達
納付すべき税額、繰上げ後の納期限、納付場所を記載。
源泉徴収税に関しては「請求する旨」を付記した納税告知書が用いられます。
4. 繰上請求の効果(国税徴収法第47条第1項)
納付期限を超えた場合
繰上請求で設定された期限までに完納されない場合、税務署長は直ちに納税者の財産を差し押さえなければなりません。迅速な対応
通常の督促・差押え手続を省略し、滞納処分に移行します。
ポイントまとめ
繰上請求の目的: 国税債権の迅速な保全。
要件: 納税者の状況(財産散逸リスクや不正行為)+未納リスクのある税額が確定していること。
効果: 納付がなければ即座に差押え可能。
繰上請求は納税者にとって大きな影響があるため、適用には厳格な条件が求められますが、税収確保の観点から極めて重要な手段です。