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沢木2.2 幕間 オーストラリア上空
13.It looks like mars
飛行機が離陸し、オーストラリアの大地が眼下に広がる。窓から見える景色は圧倒的だった。ひび割れた大地が広がり、その赤い地面はまるで別の惑星のように見えた。文明の跡がどこにもなく、川だったと思われる痕跡が曲がりくねって大地を縫っている。その対照的な風景に、地球に存在する自然の多様さを改めて感じた。空の青さと大地の赤さがコントラストを描き、僕はしばらく窓に張り付いたままだった。火星にいるような感覚。それが最も近い表現だったかもしれない。
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やがて飛行機は海の上へと進み、赤い大地が水色に変わる。水面に浮かぶ無数の火山島が目に入り、これがインドネシアの島々なのだろうかと想像する。大地の荒涼とした赤から、豊かな緑と青の風景への移り変わりは、どこか映画のシーンのようだった。
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そんな景色に見入っていた僕は、急に思い出した。「そうだ、コリオリ!!」立ち上がってトイレに駆け込み、手洗い場の水を流すと、排水が時計回りに渦を巻きながら吸い込まれていった。これが南半球でのコリオリの力かと、つぶやいた。
自分の座席に戻ると、海の上に白い点々が広がっているのが目に入った。最初は何かわからず目を凝らしてみると、それらはすべて船だった。その数の多さに驚きながら、「ここは海洋国家シンガポールに近づいているんだな」と思った。海の青と船の白が織りなすその光景には、どこか人間の営みの力強さが感じられた。
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