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団地日記2

Amazon スティック事件の続きである。

なっちゃん曰く、「ゴミ屋敷さんの遠方に住む息子さんが、アカウントも自分のを使っていいよって言って買ってくれたみたいなんだけど、なにせ古くて。
時々観れなくなるらしいんです。
でも接触の問題なのか、刺したり抜いたりすればまだ使えるんです。
それを時々、やってあげてたのですが、テレビの横に積んである新聞が崩れてきたりして‥。
自分で対処できる時もあるみたいなんですけどね。
ゴミ屋敷さんの仕事が介護系のシフト制だから、私もあちらの都合次第で夜遅くに呼ばれたこともあって、けっこう負担なんです。」とのことだった。

へぇ~、そんなのに付き合ってるんだぁ。えらいね、なっちゃん。しかし、さらに小さい声で言う。「あああ、あのぉ、も、も、申し訳ないんですけど・・・時々私の代わりに行ってあげてもらえませんか」と。

敬語で話されるくらい、私たちの関係はドラマとは違う。なっちゃんはこの団地が建設された当初からの入居者で、平成一桁からの団ちゃー(今、私が作った造語)であり、おどおどして声が小さく、「あああ、あの・・・」という枕詞を多用する割に押しが強く、プライドの高い人である。それでいて周りの豪華マンションに住んでいる人に、敵意ともとれるほどのコンプレックスを感じている、厄介な人だ。

そして私は新参者の団ちゃーで、もちろん現実社会の濃いキャラの一人なのだから、キョンキョンの様に美しくない。親切でもなく、沸点は低く、大学講師でもない。一介の日本語教師。だから私だって普通に低い自尊心を傷つけられるような時・・・例えば私が団ちゃーの方々と敷地内の公園で、何でもない立ち話しをして笑ってるときに、なっちゃんが「違いますよ、ノエチさん、それはね・・・」と、私をピント外れに人前で諭す役割として割って入ると、えー、なんで?とも思う。

だけど、私の幼馴染でもお友達でもないそのなっちゃん先輩はどうも孤独らしく、よく私にラインでどうでもよい相談や団地の誰かへのお節介に私を巻き込む。

まぁ辛抱強く付き合っているが、私はそんな自分を、ちょっとムリしてるなと思う。私は昔から、(一見)弱そうなキャラに振り回されるのだ。あー、班長、早く終わんないかなぁ。

そこで、私は折衷案として、なぜか家に余分にあった長めの延長ケーブルをゴミ屋敷さんに差し上げることを提案してみた。Amazonスティックはテレビの後ろに刺したり抜いたりするから大汗をかくわけで、そうじゃなければテレビの横で正座しながら裏なのか表なのかちょっと悩む程度で、ケーブルに何回か突っ込めばどうにかなるものだから。
私も何度も経験がある。耐震のためにテレビ台に固定した薄型テレビを、ガッタンガッタンとできる限り前に倒したりしながらあれを突っ込むのは苦痛だ。

だから、テレビの差込口と、そのコードのテレビ側に黄色いテープを貼り、反対にコードのスティックを刺す方とスティックにピンクのテープを貼って、手書きの説明書にも色テープを貼って渡したら、何かのはずみでコードが外れてしまったとしても、色と色を合わせれば元に戻せる。彼女に呼び出される可能性は低くなるのでは?と考えたのだ。

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