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断捨離

昨日は月一の団地の全体掃除があった。

朝9時に有志が集まり、エントランスや自転車置き場を掃いたり拭いたりするのだが、私は近頃、仕事と被ってしまい、しばらくぶりの参加だった。

毎回、30分も経てばやることもなくなる程度のイベントだが、同じ棟に住む人たちの元気な顔が見られるのは嬉しい。

新しい住人もいるみたい。

ドレッドヘアのお父さんが息子を伴ってゴミ拾いしてる姿は新鮮だった。

みんなの動きが緩慢になり出し、最後に集まって棟長さんからの連絡事項(80%はご自分の体調について)を拝聴したら、お隣さんからの目配せ。

「このあとちょっとお茶でもしようよ」に、喜び勇んでジャージを脱ぎ捨てた。

今回、車で連れて行ってもらったのは少し遠くのパン屋さんで、ここはカレーパンが有名。天気も良く、テラスでの話も弾んであっという間に時間が過ぎた。

お隣さんは運転もおしゃべりも得意だが、同時に楽しんだせいか昨日は帰り道に迷い、広大な畑の真ん中でナビを押しまくっていた。

その時、「実は最近、断捨離を始めたんだけどさ、私のはちょっと異次元だよ」と言い出し、本当に異次元すぎる話しに驚いた。

彼女はまだ専門学生の娘さんが同居している50代前半の女性だ。終活には早すぎる。

しかし、思い立って本棚、食器棚、あらゆる家具を捨てたということだった。

「私が死んだら残された子どもが荷物の始末に困らないように」と、基本、ビニール袋で捨てられるものしか部屋には残ってないそうだ。

しかし、それでは自分が死ぬまでの、そして残される前の子どもの生活が不便で味気なくはないのか?

私などは全く煩悩の塊にして「何割引」の計算だけは100点の頭しか持っていないので、賢い人は絶対に買わないような、ちょっと変わった形の、重ねるのに不便な食器、あとは季節の終わりに来年のためと買いだめる割引品などで、棚もタンスも中はグラグラのぎっちぎちである。まあ、確かにこれは不便だが。

そこで、「ぜーんぶ捨てて、毎日の掃除の時間が半分になったら、貯金は倍になるよ」

の言葉に完全にやられた。

‥はい。捨てます。私も異次元に捨てます!

そしてさっそく、今朝は40リットルの燃えるものの袋3つと燃えないもの、リサイクル品をいくつか捨て、粗大ゴミを2つ収集してもらえるようネット申し込みをした。

しかし、それらは今や別居する子どもたちの服や布団、それからもう使わないのでベランダに出していたサビたハンガーラックなど、異次元というよりとっくの昔に捨てるべきものばかりであった。

なので多分、貯金は増えないし掃除の時間もこれまでと変わらないであろう。

気分だけはとてもすっきりしたけど。

思えば5年前に子どもたちと、1人1つずつのスーツケースにとりあえずのものを突っ込み、夫の元から逃げた時は思いもしなかった。

こんなに普通に暮らせるなんて。


着物も好きだと公言してれば人からもらえるし、中古なら千円からでも買える。

花器もNARUMIのティーカップも、鎌倉あたりを歩けばダンボールで「ご自由に」なんて捨ててある世の中だ。

ものは減らすのは難しいが、煩悩をメラメラさせながら歩く限り、ほとんどのものを手に入れるのは簡単だった。

だったら貯金なんて倍にならなくてもいいのかも。

大事なのは物欲だ。

大事なのは物欲です。

掃除もちょっとは大事だけど。

なので、私が死んだら子ども6人で、喧嘩しながらなんとかしてもらうことにする。

それまではいろんな趣味を始めたりやめたりしてデタラメにガラクタに生きたい。

やっぱり断捨離はやめ。





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