不満足なソクラテスに
皆さんは、ソクラテスという方をご存知ですか?簡単に言うと、「自分が知っていると思い込んでいることは、実は深く突き詰めるとわかっていない」ことが分かる、という「無知の知」を提唱した人です。
では、タイトルにある、「不満足な」ソクラテスは、何が「不満足」であるのでしょうか。
世の中で「普通」と呼ばれる人は、多数派の考えの集合体である「常識」を持っています。例えば、○○なケースの場合は大多数の人が△△に思う、など。
しかし、多数派にとっては正解だと思われても、個人ベースで話をした際には、個人の背景や状況によって正解とは違う反応がかえってくるということはあることでしょう。
であるので、○○なケースがあった場合の正解は、「わからない」が正解なのです。なぜならば、相手の背景や状況を鑑みなければ物事の正しい理解には及ばないからです。
しかし、「わからない」と答えた場合、「常識がない、普通ではない」または「そんなこともわからないのか」など否定されることが結構あります。「わからないことがわかる」ことは、「学術的には大正解」なのですが、「普通の感覚を作り出した大衆にとっては不正解」となってしまうという本末転倒なことが起きているのです。
ソクラテスはそれを唱え続けた結果、悪意ある民衆の手によりこの世を去りました。しかし倫理の教科書で必ず学習する偉人として、広く名を残しています。
現代も、それが分かっている「賢い」層は、処刑こそされないものの、「普通」の感覚を持つ大衆に迫害され、窮地に追い込まれます。
しかし、確固たる信念を持って教えを説き続けることが、未来世代への財産となります。
そういう意味では、「不満足なソクラテス」として過ごすことは大きな意義があるのかもしれません。