「倭人王」 蘇る若葉22 (若木神の詔である3枚の若葉。いま豊浦宮にて蘇り大木となる)
コラム(とんぼ)
昨日、私が住む地域は、初冬の雨で霙が降ってくるほどの
寒さでした。
辺は真っ暗で強い風の中、靴を濡らして部活から帰ってきた息子の
足先と耳は冷たくて真っ赤でした。
子供の耳が寒さで真っ赤になると、何故あんなに可愛く見えるの
でしょうか。
まさしく「小夜時雨」の中を走って下校してくる子ども達の声は
雨を跳ね返すような力でそこらここらにこだましていました。
私はというと夕方、郵便受けまで。
庭の葉は冷たい雨の中、さらに凩に吹かれ
いつもより輪郭がハッキリとして見えました。(写真はその時に)
一瞬、あたかも自分があの凛々しく逞しい庭の葉になったような気分
になるも、部屋へ戻るとやはり寒く、熱めに沸かした湯で淹れたお茶
を飲み、冷えた体を温めながら、窓の外の葉を羨ましい様な目で眺め
るのであります。
「蘇る若葉」で描かれているように
木の葉には、瑞々しく逞しい生命が宿っているのだと改めて気付か
されますね。
<前回のエピソード>
潮(うしお)によって磐座に据えられた3枚の若葉。
1枚の葉からは瑞々しい蒸気が立ち
それはまるで若木神の御姿のようであった。
かしこねの姫神の手により
3枚の若葉は一体となりて
さらには新芽が天空へ向かい
幾筋もの根は大地に深く沈んだ…
蘇る若葉22
原作 秋津 廣行
「 倭人王 」より
さらに、かしこねの姫神は磐座(いわくら)の若葉に寄り添い申された。
「この若葉は、まさしく若木神の御印(みしるし)である。
秋津洲(あきつしま)の命の源(みなもと)なり。
豊浦宮(とようらみや)の磐座(いわくら)に根付きて
若木神(わかきかみ)の依代(よりしろ)とならん。」
そう申されると、若葉は一層、勢いづきて、次々に青々とした新しき芽が噴き出し、茎となって天に伸びた。
さらに、若葉の付け根からは、幾筋ものか細き根が生え、磐座を伝い
地中深くに潜り込んだ。
また、茎の先からは新たな芽が生え、大きな茎となり天に昇った。
たちまちの間に、三枚の若葉は大木となり天にも上る神木となった。
その様を見ていた秋津洲の皆々は目を丸くし、口を開けたまま、驚きと
喜びの声が漏れてきた。
つづく 23