もっともステキだった依頼人
note初投稿が、彼女に振られた、俺はメンヘラだぁなんて書いちゃったもんだから、二投目が書きづらくて仕方ない。
いろいろと綴りたいので、探偵をやってた時に出会ったステキな依頼人のことを書こうと思う。
依頼の多くは浮気調査だった。
奥さんが浮気をしていたとき、だいたいは離婚に至る。男って直情的なところがあるし、自分の稼ぎがあるから離婚を決意しやすいのかもしれない。
夫の浮気が確定したとき、これがすぐに離婚に繋がることは私の経験上では少なかった。
もちろんDVだったり金遣いが荒かったり、浮気以外に要因がある場合は別だ。
裕福な家庭だったり、依頼人(この場合は妻)がブルジョア志向だったりすると、まず離婚はしない。
今の生活レベルを落とすことは考えられない、と多くの依頼人が話してた。ではどうするかというと、定期的に調査をして証拠を集め続けるのだ。
浮気の期間が長いほど慰謝料が高くなる傾向もある。
浮気している夫を泳がせ、その場の過ちだった、なんて言い逃れできないくらいの証拠をキッチリ固めてから引導を渡す。
そんなしたたかさは女性ならではじゃないだろうか?
私はこうして人間不信になっていき、メンヘラ気質に…の話はとりあえずいいか。
こどもは居なくて、旦那はそこそこ稼いでて、でもそんなに派手な生活はしてなくて、第一印象はむしろ平凡で地味な感じだった依頼人。
浮気調査の結果は依頼人の読み通り、クロ。
報告書を冷静に読み終えた彼女が私にこう言った。
「ネリケシさん、ヒットマン紹介してください」
凄みすら感じ、気の利いた返しもできずにいたら、
「冗談ですよ。私がいま眉間を撃ち抜いてやりました。ここで」
と自分の胸の辺りをトントンと叩いて、笑いながらそういうと
「お世話になりました」
と一礼して事務所から出ていかれた。
あの笑顔は心の底からのものに見えて、でもそれが私が彼女の思わぬお願いに焦った様子をおかしがったのか、心の中でけりをつけた清々しさからだったのかは、今となってはわからない。
ただ、冗談にしてもあんなにストレートに心のなかで浮気した旦那を葬り去った潔さに、したたかな依頼人しか見てこなかった私にはとてもかっこよくステキに見えた。