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車とおでんと旧友
運転免許を取得してから、30年以上が経ちました。
その間、一度も車を持たない期間がなかった私ですが、特に車大好き!というわけではないし、修理はある程度できるぜってこともまったくない。
でも今、子供の頃から乗りたかった車を手に入れて、しょっちゅうアチコチ壊れるおかげで修理の腕も上がってきた。
必要は発明の母、じゃないな。どっちかというと、窮鼠猫を噛む(笑)
僕らの世代は、車を持つことがモテル男の条件の一つだった。
モテル、モテナイに関わらず、とりあえず車の免許をすぐに取ってオヤジの車でも何でも乗り回さないと、一人前の男ではなかった。
とにかく18歳になったらすぐに車の免許を取るのはごく自然なことだったけど、当時から自動車免許取得費用は高くてたぶん15万円くらいはかかったと思う。
当時の私たちは、それぞれ小遣いを貯めたり、バイトをしたりしてお金を自分で用意してた。親に出してもらった友人は一人も居ない。
今思うと、そうして目標を持ってなんとかしてお金を用意して、自分の力で運転免許を取る、
その行為こそが学生気分から大人へと一歩進める経験だったのかもしれない…。いまオヤジになってやっとわかった(笑)
そうは言ってもさすがに車をすぐに買えるわけじゃないから、結局家の車を借りて乗るしかなかったんだけどね。
私が初めて自分の車を持ったのは大学生になってからだ。
物流倉庫で半年バイトをして、そこの社員の兄さんから売ってもらったセリカXXが私が最初に手にした車。
その兄さんがちょっとヤンチャな人だったので車高はガッツリ落としてあったし、うるさいマフラーに替えてあったし、
なぜかエンブレムだけスープラに付け替えてあるという、今思うとなかなか痛い車だった。それでも初めて自分の車を持てたことが、嬉しくてしょうがなかった。
同じ学部の当時一番仲が良かった友達で、その頃からすでにおっさん思考の変わった男がいた。
そいつも私も貧乏学生だったので、その時フトコロがあたたかいほうが飯を提供するという暗黙のルールがあった。
けっきょくお互いにいつでも金欠で、おまけにろくに料理もできない二人だったので、二人とも年中おでんを食べていた。
どちらの家に行っても食べるのはおでんだ(笑)
暑い暑いと扇風機を取り合いながら真夏でもおでんを食べていたことを思い出す。今思うとなんてアホで微笑ましい野郎二人なんだと笑えてくる。
私たちはほぼ同じ時期にバイトで貯めた金で自分の車を手に入れた。
車を買ったら見せびらかしあおうぜ
と決めていた私たちは、ある晩に山の頂上にある遊園地の駐車場で待ち合わせをした。お互いの車のお披露目である。
予定より早く着いた私は閉園後の遊園地をバックに、自分の愛車をニヤニヤして眺めながらタバコを吹かし、
「俺のダブルエックスよりかっこいい車を買えるはずはない、わはは」
なんて思いながら友達の到着を待っていた。
暫くすると麓の方からバリバリと野太い排気音が聞こえてきた。
「まさか暴走族か?」
と思ったがどうもバイクの音とは違うし、どうやら一台で走ってくる。
爆音としか形容できない排気音が夜の静寂をぶち破って近づいてくる。
そうして私の目の前に現れたのは、クリーム色のオンボロのサニー。
顔をひきつらせた友達が爆音サニーから降りてきてこう言った。
「出るの遅くなっちゃったからちょっとスピード出して走ってたら、道路に段差があって、ガリガリって音がしたと思ったら後ろにマフラー落ちてた」
わたしは、自分のオヤジがかつて乗っていたのと同じ型の古臭いサニーで、
おまけに途中でマフラー取れちゃって、暴走族よりうるさい音を撒き散らしながらも待ち合わせ場所まで頑張ってきてくれた親友を抱き締める…
はずもなく、窒息するんじゃないかってほど爆笑してやまなかった(笑)
車は欲しかったけどなんでも良かったという友達は、整備工場の端っこで8万円で売りに出ていたこのサニーを迷わず購入したそうだ。
にしても、初乗り(初めての遠出だったそうだ笑)でマフラー取れちゃうような、一昔前の8万円のサニーを迷わず買える大学生男子。この欲のなさ。
きっとこいつは大物になる…。
そんな私の予言は見事に外れ、そいつはいま、売れない漫画を書いてその日暮らしをしている。
年に一度、冬のこの時期に二人でおでんを食べながら飲み明かす。
前回会ったのはコロナ前だからもう長いこと顔を見ていない。生存確認はできている(笑)
金がある方が奢るルールはまだ続いている。毎回割り勘だ。つまりは二人とも金欠ってことだ(笑)
いつか漫画が当たって奢ってもらえることを夢見ているが、いつになることやら。
お互い、金持ちになってる姿を想像できないしな(笑)