グリムの手稿
我が盟友HHの研究成果の
断片をまとめたもの
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モルペウス ポベートール パンタソス
これを三羽烏という
言い回しに変えると、
神経によく馴染む。
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つい、数日前の話だ。
桜の木の下でギーゼラの
寂しそうな声を感じた。
風のような、涙のような音。
饒舌に語ることなく、
盟友たるヘルマンは覚えがあると答えた。
もはや呼吸が乱れた喉(のど)から、
初恋の少女との再会のような音を
経験したことがあるという。
・・・・・・その音が、
ヘルマンには
視覚や痛覚に近いものとは
気づかなかったのだろう。
悪夢となるほど、共鳴していたはずだ。
・・・・・・ギーゼラ、
君はずっと僕を想ってくれていたのだね。
僕は気づくことが、いつも遅い。
それでいて、出会うための動きはするのだ。