夢の先の未来
私は何に対してもやる気がなかった。子供のころからそうだった。
親の言うままに過ごしていれば安心だ。先生の言う通りにしていれば問題は起きない。
そうやって安心していた。大人になっても何もしないのは変わらなかった。
会社の仕事で5人をまとめるリーダーをやらされるようになってとても辛い。
どうすればいいかわからず部下と上長に聞きまくっていた。
だんだんと億劫になってきていた時だったか。夢で知らない人が私を助けてくれるのだ。
こういう時はこうすればいいと教えてくれた。困惑した。
なぜこんな夢をみるのかがわからない。未来で自分のことを助けてくれるのか。
夢なので朝になると忘れているのがつらい。
会社で部長が新しい人を入れてくれた。夢で見たあの男だった。
上司もわからないことがあれば男性に聞いてほしいと紹介してくれた。
そこからはがむしゃらだった。予定を立ててフィードバックしてもらう日々だった。
かなりきついだめだしばかりだった。夢でも頻繁に男性がでてきてレクチャーを受ける始末。
人間成長するもんでやっと上長にもよくなったと褒められるようになった。
上長から会社の定例報告会で報告者をしないかと打診された。
上長がやるべきことだがその日は別の打ち合わせが入ったとのことだ。
私はできないと思った。いくら何でも人前で話すのは無理だ。
逃がさないとばかりに新しく入社した男性が呼ばれた。
彼が君の報告の練習に付き合ってくれるように依頼しているようだ。
にげられない。覚悟を決めた私はやると伝えた。
そこからは、仕事を減らすように部下へ回して報告会の練習の日々だ。
AIに最初聞いてみて、そのあと部下に確認して、最後に男性に見せて評価を受けるという流れだ。
ゲロを吐きそうだった。会社辞めたいと本気で考えた。
また夢に男性が出てきて私にレクチャーしてくれるのだ。
夢でも逃げ場がないなんて災難だ。
発表当日、部下からも男性からも頑張ったのでおそらく問題ないと伝えられた。
報告会では膝が震えていたが、夢の中でみた、おなかに力入れろという助言は覚えていたのでそれを実行した。
報告会は多少のミスはあったし、返答できないところや見当違いな返答したところもあった。
それでも上長に報告したら、私も答えられない質問があると言ってくれて胸をなでおろした。
次からは君に任せるね。上長から伝えられた。
私はそこまでやる気はないので断りたかった。
今回学んだことを生かせばしっかりできるから問題ないと言われた。
指導してくれた男性に対してもお礼を言った。あなたがいないとダメでしたと。
夢にまでレクチャー受けてましたと笑い話をした。
そしたら相手も自分を指導している夢を見たらしい。すごい縁だなあと思った。
私もこれからは人前にでて説明するという機会が増えていくだろうと思う。
そのたびにこの経験を思い出すのだろう。