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#11 午後3時

ただの惰性からパソコンを立ち上げた。

外からは、下校時間の訪れを知らせる子ども達の無邪気な声。
ママチャリを颯爽と漕ぐお母さん。前後は空席で、いまから子どものお迎えに行くのでしょうか。
外気温35°の中を耐え抜いた洗濯物を手際よく取り込むおばさん。
ガソリンスタンドで愛でるように車の水気をタオルで吹き取るお父さん。
軽快でリズミカルな夕刊配達員のお兄さん。
ゆっくりとした足取りで整骨院に吸い込まれていくおじいさん。
空調服を着た工事作業員の方の立ち姿からは疲労がうかがえる。
その横で背の高いひまわりもぐったりしている。
街路樹脇に生い茂る雑草は、風に吹かれるたびに車道に頭を垂れ、幾度となく車と衝突を繰り返す。その度に種髪が散布する様は、種の存続に暇がない。

以上が、今日見た午後3時です。

きっと明日は、車を愛でるお父さんには会えないでしょう。
きっと明日は、整骨院に別の誰かが吸い込まれていくでしょう。
もしかしたら明日、車道に頭を垂らした雑草が刈り取られているかもしれません。

同じ日常は二度とない。
だから大切に大切に愉しんでいこうと思います。


靴箱の上に置かれたどんぐりから生命が誕生していて「ひぃー」となった、わたしの午後3時。


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