見出し画像

ジャンダルム!

登山歴だけはそこそこ長いものの、元来高所が苦手なこともあってチャレンジできずにいたジャンダルム。ようやく一緒に行ってくれる仲間が現れ、ついに念願の時が来た!
時は10月中旬。一昔前なら紅葉も終わろうとしている頃で、北アルプスは厳しい時期を迎える頃。
装備の軽量化に励み、40ℓザックで外付けは無し、テントはステラ1、シュラフはモンベルの#7、マット無し、食料も行動食的ドライ系、着替えも最低限。でもチェンスパやカラビナ・スリングは一応持って行く。ちなみに靴は迷った挙句、5年目のモンベル・ワオナブーツ。

夜中に平湯に着いて仮眠。4:30に起きて、リーダーが予約してくれたタクシーに乗っていざ上高地へ。
あとで人から聞いた話、あかんだな始発のバスは未明からすごい行列で、チケットを買うのに1時間かかったそうな。

釜トンネルのゲート前ではすでに多くのタクシーが列をなしている。待つこと数分、5時にゲートが開いて続々と上高地へ。流れ込んでいく。

岳沢から

準備を整えて5:15に上高地を出発。
今回の山行は一泊しかできないので、今日は岳沢小屋から天狗のコルに上がり、ジャンダルム経由で穂高岳山荘をめざす。
岳沢は20年近く前に奥穂からの下って以来。あの時は確か雪崩か何かで小屋がなく、石垣しかなかった。

岳沢小屋は人が多かったけど、天狗沢に向かう人は意外に少ない。というかほとんどいない。ここからはいよいよバリエーションルート。緊張感と高揚感でドキドキだ。

ブルーが映える

天狗沢に入り、リーダーがルートを確認しながら着実に歩みを進める。足元はガレているけど、斜度が緩い間はそう歩きにくいことはない。こんな晴天、最近記憶にない。

だいぶ近づいてきた

次第に斜度が出てきて、一歩一歩を大切に歩く。落石も注意だ。とにかく、空が青い。

やっとこさ天狗のコル

岳沢小屋から約2時間半で天狗のコル。一気に視界が開け、笠ヶ岳が目の前に広がる。まずはここまでよく登った。信じられないくらい風がない。
ここで小休憩して、いよいよジャンダルムに向かって稜線を登る。足場はしっかりとあって、さほど難しさはないけど、落石、転倒に注意は怠らない。

稜線を登る

今回はザックを軽量化したおかげで、ここまで体力的な疲れはほとんどない。

人によって賛否は分かれるけど、僕は岩場でグローブを使う。山岳会御用達のSHOWAのゴム手袋で、指先を切ってフィンガーレスにしている。スマホが使えるし、鋭利な岩でも手のひらを痛めずに済むのだ。ただ、岩を掴むときに手の感触が薄いのが不安に感じることもあって、岩場では素手の人の方が多いと思う。

今回履いているワオナブーツは、低山用なので柔らかく、ガレ場や岩場では少々心許なかったけど、まぁ悪くはない。40ℓくらいまでのザックならアリだと思った。でもソールがすり減って全体的に痛みが激しく、そろそろアルプス級からは引退かもしれない。

相当、高度感がある

高度感があっても、鎖があるところは安心だ。問題は手がかりがないところ。平地なら普通に歩けるような場所でも、強烈な高度感があればなかなか歩けない。ハイハイする?いや、中腰でそろそろ進みます。

足場をしっかり確認しながら

リーダーたちが果敢に登っていく。
こういう岩場ではザックの重さがカギ。普段練習している岩では空身だから、重ければ負担感大。重いものを上に入れると左右に振られやすくなるので、今回は底の方に詰めた。
足で登れと言われるけど、どうしても手に力が入る。

ジャンダルム
無事に出会えた!

ジャンダルムの登り下りは、滑落の怖さよりも、石を落とさないことに神経を使った。ここだけでなく、岳沢小屋以来、どこも浮石だらけ。他の登山者との距離や声がけ、丁寧にしたい。
ジャンダルムの山頂は10人程度がザックを下ろして休憩できるくらいの広さがある。

落石注意!!


いよいよ馬の背

僕の感覚では、ジャンダルムから一段と厳しさが増す。
仕上げの馬の背。見た目からして尖ってて切れそうなくらい。もう一度手足とバランスを意識して、確実にホールドしながら慎重に登る。ここは下りでは足元が見えにくいだろうから怖いだろうな。

若い頃、剱岳や西穂に登りながら、なんでわざわざこんな怖いところに来てるんやろ、と半ば後悔しながら自問していた。その頃に比べると、今は難所を楽しめる余裕がある。おじさんになってもなにかしら成長しているのか。いや感覚が鈍ってるだけ?体力は確実に落ちてるから、油断は禁物。

馬の背を越えてほどなく、人が多いなと思えばあっけなく奥穂高に着いた。

ちょうどこの頃からみぞれが降り始めた。山頂での記念撮影をそそくさと終え、穂高岳山荘へと向かう。
ここから一般登山道とはいえ、疲れて油断した頃に事故は起きるものだ。降り方が激しくなって、フード付きのソフトシェルを羽織った。

階段が滑る

登山道に雪が積もり始めたので、とにかくスリップしないよう慎重に歩き、長いハシゴを下って2時半ごろ穂高岳山荘に到着。ホッとした。
テン場の上の方にスペースを見つけ、この日が初めてとなるモンベル・ステラリッジテント1型を設営し、巣作り。ホワイトって、やっぱ地味だったな。ここのテン場はペグがささらない。

この日デビューのモンベル・ステラ1


テントでひと段落着いて、ふと我に返る。無事に到着できた安心感、そしてジャンダルムを歩いた達成感がハンパない。岳沢小屋からのルートは、もう非日常感しかなかった。
賑わう小屋で暖まりながら、歩いてきたトレイルを仲間たちと振り返りながら反省会。しばらく休憩してテントに戻り、夕食を食べて寝る準備だ。

さて、ここから試練の夜。
シュラフマットはペラペラ、シュラフは真夏用でとにかく寒い。寝心地も悪い。何度寝返りを打ったのだろう。ふっと意識が戻って時計を見たらまだ12時前!疲れているはずなのに寒くて眠れない、なんということか!

登山冥利に尽きる

だがしかし、待ち続ければ必ず夜明けは来る。
ガサガサと周りのテントから音がし始める。東の空が少しずつ白み始める。雲海が地平線のように広がって、八ヶ岳や浅間山がよく見える。

しあわせ〜
夜はテントの夜景が綺麗だった

チェンスパを着けてザイテングラードを下り、涸沢カールへ。夜はテントの夜景が綺麗だった。とにかくすごい人。色とりどりのテントが無数にある。涸沢小屋でソフトクリームを食べる。うまい。

逆さ北穂

2日前に降った雨と昨夜の雪で小さな池ができ、撮影ポイントになった。

一眼レフカメラを持った登山者が多かったのも頷ける。そう、紅葉の時期、名所だもんな。いつ来ても(と言っても3度目だけど)、涸沢カールという空間は箱庭のような別世界だ。何時間も歩かないとたどり着けないからこそ、達成感も加わる。
今回は天気に恵まれただけではなく、リーダーの綿密な山行計画のおかげでまったく無駄のないスムーズな登山ができた。心から感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?