#12 前十字靭帯損傷の秘密教えます ⑦手術ーその他自家腱
こんにちは!理学療法士のKEIです!
はじめに
#10、#11でハムストリングス腱と膝蓋腱をグラフトに用いたACL再建について記事にしました。
今回はそれ以外で特に大腿四頭筋腱(QT)を使用した場合についてまとめていきます。
ぜひ最後までご覧ください!
それではいってみましょう!
大腿四頭筋腱の特徴
現在はACL損傷に対しては、大半が再建術の適応となります。
過去、人工靭帯を用いて再建していた時期もありましたが、成績が振るわず現在では自家腱がファーストチョイスになっているようです。
その中でも日本では以前の記事でも書いたようにHT、BTBが主流となっています。
(外国では同種腱も選択肢のひとつです。)
近年では第3の自家腱として大腿四頭筋腱(QT)を用いるとの報告がなされています。
構造的特徴
HT、BTBのように単一の腱ではなく、いくつかの腱組織が複合して形成されています。
膝蓋骨直上では再表層に大腿直筋腱が確認でき、3層構造と呈しています。
膝蓋骨から上方に約6〜7cmが腱成分で構成されています。
メリット
・皮切が3〜5cmと小さい
・採取部痛の出現頻度が低い
・AKP出現頻度が低い
デメリット
・構造上利用可能であるが、体格により長さ不足が懸念される
再建術
採取できるQTグラフトは一重束であるため、解剖学的一重束再建法を用いる場合が多いようです。
骨孔作製
基本的には従来のACL再建術と同様の方法を用います。
腱の採取
3層構造であり、各筋によって走行が異なる。大腿直筋に細い部分があることなどから、採取にあたり細かな注意点があります。
実用性
ACL再建を行うにあたりQT腱をグラフトとすることは可能であり、臨床成績としてはその他自家腱と比較して劣ることはないようです。
しかし単一筋でないため腱線維の走行が異なることや、日本人は体格が小さく十分な腱が採取できない点が懸念されています。
そのため初回再建時には第1選択にはなりにくいようです。
再再建時などにおいて何らかの理由でHTやBTBを用いることができない場合、QTは有用なオプションの一つになると考えられています。
成績
膝安定性
HTおよびBTBの成績と比較して大差はないようです。
筋力
伸筋、屈筋ともに一時的に筋力低下は生じますが、術後6ヶ月になればほとんどが改善するようです。
これは一般的な自家腱での再建と同様ですね。
術後トラブル
採取部痛の発生頻度は低いようですが、やはり大腿部の筋萎縮は生じやすいようです。
十分なリハビリで1年程度で萎縮は改善できます。
解剖学的研究で懸念されていた残存大腿直筋の断裂は、明かな疼痛や機能不全が生じていないことから発生していないと考えられています。
後療法
〜1W 外固定+非荷重
3W〜 全荷重
3M〜 ジョギング開始
6M〜 ジャンプ、ストップ開始
9M〜 対人スポーツ開始
上記を基本に進めていきHTやBTBの術後と比較し、大きく遅くする必要はなさそうです。
まとめ
今回はACL再建でHTやBTB以外のグラフトとして、大腿直筋(QT)を用いた場合について記事にしてみました。
あまり出会うことはない症例かとは思いますが、非常に興味深いです。
(実際私もみたことはありません。)
★ポイント
何らかの理由でHT、BTBが使用できない場合のオプションとしてQTは有用
従来の自家腱と術後成績に大差はない
今回はここまで。
本記事をご覧いただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!
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