【RSGT2024参加レポート】 スクラムの違いってどこから来るんだろう、ということ



はじめに

RSGT2024についてはどのような記事を書こうか迷った。初めての参加であり登壇でもあり、色々な方々との素晴らしい出会いを共有したい一方、せっかくなら自分ならではの観点でまとめたいと思った。本記事はあるテーマに絞って伝えたいことをまとめることにした。

まず、RSGTのGatheringについてはこの文言が示しているが、これは学会(アカデミック)の行うカンファレンスと思想が近いと思う。学会においても、目的は講演を聞くことではなく(内容はジャーナルみればわかるため)、それを通した議論によって知見を深めることにある。

スクラムを実践する人が集い垣根を超えて語り合う場を提供する

https://2024.scrumgatheringtokyo.org/

当然の帰結であるが、スクラムの実践者が集まるのだから、そこには多種多様なスクラムが集結している。この多様なスクラムチームに対して、スクラムの違いってどこから来るんだろう、と考えるのが今回の参加レポートのテーマである。

スクラムの違いってどこから来るんだろう

スクラムガイドが提供するのは誰にとっても同じように捉えられる文言ではなく、目的や意図を踏まえて良い具合に抽象化されたものである。各々はそれを読み解き、各々のコンテキストで考えて適応している。だからこそ、そこには多様性が生まれる。

多様なスクラムチームによる講演においては、それはうちでも取り入れてみよう、と思うこともあれば、もし自分だったらその方法は取らないなぁと、と思うこともある。何が違うかと言えば、前者は登壇者の感覚に近いが、後者の場合はそうではないため、なぜそのアプローチがその状況において取られたのか腑に落ちるだけの情報が足りないことがありうるからだ、と考える。
全てのセッションや会話を通して知見を深めることができたが、今回選ぶのは中でも特に、このテーマについてに気づかせてくれたセッションに絞って話を進めたい。

Badプラクティスを選んで失敗しながら進めた新規プロダクト開発

このチームは、ユーザーストーリーマッピングが作られた段階で開発Readyとしたり見積もりをしない、というスタイルだった。そのアプローチをとった背景は講演を聞いて理解できたが、正直それでも自分だったら別の手段を取る、とも思った。そうした時にじゃあその違いはどこから来るんだろうと考えたら、人に依存するんだろうと思った。

その判断をした人と僕では経験もスキルも違うから、背景や意図を聞いても腑には落ちない部分もあるのだろうと思った。なのでもう少し知るためにXを眺めていたところ面白い話が書いてあった。

それで「自分のスキルがここまでって分かったら、それはそれで嬉しいんよね。まぁ、うまくいくほうが嬉しいけど」って返事をして、中村さんは「それはおもしろいなぁ。がんばってな」って嬉しそうにしてた。

このやりとりでやっと、僕では選ばないが確かに登壇者ならそうしたんだろうな、と腑に落ちた。自分のスキルの検査って観点、面白い。

ここで気づいたのが、各スクラムチームには色々なコンテキストがあり意図があり思想があるということだった。どんな思いでスクラムを実践しているのか、そこまで考えたことはこれまでなかった。

価値提供のリードタイムを短くするための戦術としてのチーム替え「流動チーム体制」に取り組んでいたら実はLeSSでのモブプロだったお話

もう一つは、古いプロダクトを新しいプロダクトに移行する際、古いプロダクトについて知っている人が少ない状態のため、LeSS環境下でスプリント毎に目的に応じたリチーミングをすることで解決したという話だった。

超流動的でカッコいいなぁと思って聞いていたが、古いシステムについて知っている人が限られているというのは本当に流動チームで解決する必要があるのか、という疑問も沸いた。もともとリチーミングを半年周期でおこなっているとも言われていて、それならなぜそもそもその属人性を残しているんだろう。

うちでも似たように属人性によるボトルネックがある領域が存在していたが、解決としてはペアプロでパス係数を広げたり、やったことがない領域のタスクほど積極的にメンバーが取得するなどして対応してきた。リチーミングでは属人性の課題は隠されるのではないか、と考えていたが、これはこのチームという環境下のコンテキストがあったからこそ、実行された解決策だったのだろう。

こちらの場合は腑に落ちるまで理解はできなかったが、重要なのは背景や環境含めコンテキストや思想も違うと認識した上で、他のチームを理解しようとすることであり、理解を深めて知見を抽出して自分自身のスクラムに対する思想を深めることだと思う。

さいごに

僕の場合、考えや状況が違うしその人にとってよければそれでいいんじゃない、という段階で思考が終わることが多かった。そこで得られるのはただの情報であって、血が通っていないノウハウや事例にしかならなかったように感じていた。
あとは、良い悪いという観点でも考えることも多かった。でもそれってどういう測度で測ったんだろうと考え直した。やっぱり主観的に見ているのが正直な所だったので、そういう点を見直すことにもつながった。
RSGT2024を通して、なぜそのチームがその手段や体制をとったのか、思想に触れるレベルまで理解しようと試みることが重要ではないかと思った。そこまで理解してやっと、同じ状況下や課題に直面したときに応用できるのではないかと。
次は登壇した際の観点からレポートをまとめていきたい。


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