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メロンソーダったら

割引あり

 起きた瞬間に、今日は褒められたもんじゃない日になりそうだと肌感で思う日がある。そういう日に限って太陽は母なる宇宙から大絶賛を受けること間違いなしの昇りっぷりで、洗濯物は腹がたつほど乾いている。テレビを付けると知り合いの芸人がよそ行きの顔でよそ行きのまあるい言葉を放ち称賛を得ていて、SNSを見ると先輩がドラマに出ていて、賞レースへの気持ちを綴った後輩芸人のnoteがバズっている。
 世界中で私だけがうまくいってないような劣等感スタートの朝こそ、いざ、自分の悲劇のヒロインムーブを蹴飛ばし、自分が納得できるように仕事をモリモリして、面白い設定を湯水のように沸き立たせ、億劫な連絡を全て返し(億劫な連絡は無視することも正義)、1日の終わりにサウナとビールで優秀の美を締め括るぞと誓う。

 この褒められ太陽に乾かせようと、朝から洗濯機を回す。前回使い切った洗剤は雫しか落ちてくれなくて、こんな量じゃ真夏の汗を吸い込んで重くなったシャツや、新宿のライブハウスまで練り歩いて異臭と友達になった靴下が綺麗になるわけがない。洗濯を諦めると共に、ほんの数秒前の誓いも撤回する。

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