スワンスワン

「なんか姉ちゃん、標準語なったな」

　帰阪中、実家で妹に言われた。身体中の水という水が沸騰する感覚がする。赤く茹で上がった私を小さく刻んだ妹は、「なんか気持ち悪いわ」と丸い穴がたくさんの鉄板の並々の生地に沈めた。時たま生地を貫通してくる竹串を避けるのに必死になりながら、そして、天と地が何度も入れ替わり三半規管にさよなら言いながら、私の話し言葉への反芻をしてみた。

　私の「やな」は「だな」になっているし、「やねんけど」も「だけど」のときがある。まだ「じゃん」とか「だよね」とかになってないだけマシ「だろ」と思ったが、マシ「やで」じゃなかったことに気がついて顔面蒼白、近くにいた小ネギの輪っかが私の首を絞めてきた。

　関西人の標準語かぶれほど恥ずかしいものはない。私より先にいった関西人達を見て、おうおう染まってまんなあ、ルミネで買いもんして新宿のルノワールで休憩でっか？ハチ公にションベンかけられて井の頭公園で水洗い！なんて思ってたけども、私がちゃんと染まっている。こりゃ、スワンスワン。