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「新しい価値を生むために、深化し続けるデザイン」 スマルナリブランディングを通して見えた“医療サービスの新しいカタチ”
スマルナの本質を保ちつつ、変化していくトレンドに応えたい。スマルナのリブランディング責任者が語る、ブランディングの挑戦と未来への展望
はじめに
スマルナは2018年にオンライン・ピル処方サービスを開始以来、オンラインでの医師への医療相談や診察、ピル処方を通じて、多くの女性に利用されるサービスへと成長しました。ユーザーの皆さまとの対話を大切に日々アップデートを続け、時代の流れやニーズに応えるため、これまで二度にわたりリブランディングを実施してきました。
今回、昨年12月に行った「スマルナの集大成」とも言えるリブランディングプロジェクトを担当し、その中核を担った、事業推進本部クリエイティブチームマネージャーの中村弓子さんにインタビューを実施しました。
スマルナのリブランディングを実施して1年が経った今、「医療」という新たな業界での挑戦に加えて、医療サービスとしてのブランドの価値を深めながらも、より多くの人に共感してもらえるようにするにはどうすればよいのか?また、新しい層にもアピールするという難しさを抱えながらどのように取り組んできたのか?詳しくお話を伺いました。
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<プロフィール>
株式会社ネクイノ
事業推進本部 クリエイティブチーム マネージャー
中村弓子さん
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、デザイン事務所を経て、2016年に株式会社BAKEに入社。ブランドプロモーションや店舗グラフィック制作に携わる。2023年、スマルナの集大成とも言えるリブランディングプロジェクトを前に株式会社ネクイノに入社し、クリエイティブチーム責任者として、オンライン・ピル処方サービス「スマルナ」のブランド戦略の策定から各種サービスのブランディング、アプリのUI設計に至るまで、デザイン全般を統括。企業の成長に向けたクリエイティブな課題解決を推進する。
「医療という領域で自分の経験を活かしたかった」 デザイナーとしての新たな挑戦
━━━まず、弓子さんのキャリアについて教えてください。なぜ医療業界に挑戦しようと思ったのでしょうか?
今まで異なる業界でのブランディングやデザインを手がけてきましたが、周囲や自身の身体の変化とともに、女性の健康や医療という領域に関心を持ちました。医療サービスのブランディングは、安心感や信頼性が特に重視される点で他の業界とは異なる難しさがある一方、今までの自分の経験がどのように役立つか試したいという思いもありました。
━━━医療業界ならではの課題や新しい発見はありましたか?
医療は人の健康に深く根付いているため、デザインにおいてもより慎重であるべき部分が多いと感じました。特に、「医療的な安心感」をデザインにどう落とし込むか、今まで手がけてきた他業種の商品やサービスとは異なる配慮が求められることが大きな発見でした。
「”女性らしさ”を再定義する」医療サービスにおける挑戦と継承
━━━スマルナのリブランディングにおいて、工夫した点や配慮した点について教えてください。
まずは、スマルナが掲げる「女性らしさ」の再定義が必要だと感じました。スマルナの過去のデザインは、やわらかいピンクを基調にしたものでしたが、日々進化する女性らしさのトレンドを取り入れることで、柔らかさや優しさを保ちながらも、より新しい印象を持たせることができるのではと考えました。
また、医療サービスである以上、「清潔感」や「信頼感」も意識し、ロゴにはブルーを取り入れました。ピンクは引き続き使いながらも、単なる「可愛らしさ」を表現するのに使うのではなく、医療的安心感や人の温かみを感じられるものに。色合いの変化を取り入れることでトレンド感を捉えながら「優しさ」を崩さず、幅広い層のユーザーに安心感を届けられるよう配慮しました。
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━━━医療分野でのブランディングという点において、特に意識した部分はありますか?
医師の方々や製薬会社の方々がこれまで数十年にわたり大切にしてきた価値観を尊重すること、これは特に意識しました。私たちは、婦人科領域のオンライン診察プラットフォーマーとして、医師や製薬会社が築き上げてきた医療に対する志を大切に、同じ目標を見据えて、婦人科領域の課題解決に向けて共創していきたいと考えています。
これは会社としても、そして私自身にとっても、大切な根幹となる部分です。
婦人科領域に特化したオンライン診察プラットフォームの先駆者であるスマルナだからこそ、真っ当なことを真っ当に実行していくことが何よりも重要だと考えています。そのため、誠実に医療を提供するサービスとしての誇りを体現したデザインにこだわりました。
━━━リブランディングを通して伝えたいメッセージや、意識したユーザー体験の重要性について聞かせてください。
スマルナのユーザーにとって『信頼感』や『安心感』は大切な要素だと思っています。従来からのユーザーが安心して使い続けられるとともに、新しいユーザーも自然に受け入れやすいよう、ビジュアルだけでなく、使いやすさや操作した手に取ったときの感覚にもこだわりました。また、「寄り添う医療サービス」というコアの価値を保ちながら、現代の女性にとっての安心や信頼をデザインに反映させました。
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「自分と向き合うことがあたりまえになる世界を目指して」リブランディングで進化させたかったこと
━━━今回のリブランディングの目的や意識した点について、詳しく聞かせてください。
リブランディングにおいて、最も重視した点は大きく分けて3つあります。
まず一つ目は、「医療的安心感」です。
医療サービスとしての安心感や信頼性が視覚的にも伝わることが大切だと考えました。スマルナはオンラインで診察や医療相談を受け付けていますが、その画面の先には「人」が介在しています。ボットではなく、実際に医師や医療従事者が一人ひとりに対して向き合っているということがしっかり伝わるよう、デザインに反映させていきました。
二つ目は、「女性向けのサービスである」ということ。
スマルナは医療サービスの中でも婦人科領域に特化したサービスです。それを明確にするため、デザインにおいても「女性向けのサービスである」という点が自然に伝わるよう意識しました。その特化性を分かりやすく表現することで、ユーザーは一目で自分のためのサービスだと捉えやすくなり、より利用しやすくなるのではと考えました。
三つ目は、医療における「新しいあたりまえ」を創造することです。
リブランディング前のスマルナのデザインは、ピンクを基調にしていたのですが、これは当時のトレンドやユーザーとのコミュニケーションによって形成されたものでした。そのため、リブランディングでこのイメージを一掃するのではなく、世の中の動きや事業の進化に合わせて、スマルナが日常的に利用されるスタンダードな選択肢として感じられるように、デザインを進化させました。スタンダードな存在感を持つことで、スマルナを利用することやピルを選択することが日常生活の中で自然に存在する「あたりまえ」となるように。自分と向き合うことがもっと普通のことになる世界を作りたいと考えました。
━━━「医療的安心感」「女性向けのサービス」「医療における“新しいあたりまえ ”をつくる」これらを整理しながら進めるのは難しい部分もあったのではないかと思います。その中で、どのようなプロセスで整理を進め、形にしていったのでしょうか?
まず、「見やすさ」と「読みやすさ」を徹底することからスタートしました。リブランディング前のデザインは、優しく包み込まれるような印象がありましたが、次のステップとしてスタンダードさを追求するためには、視認性を高めることが安心感につながると考えました。そこで、ロゴや文字がはっきりと見えるように、読みやすい文字や色、遠くからでも認識できるデザインに仕上げました。
プロセスの初期では、「クリアさ」「シンプルさ」「見やすさ」を優先していました。その結果、当初はデザイン全体が青みが強くクールな印象だったのですが、これにスマルナユーザーのイメージを掛け合わせ、柔らかさやトーンの調整を進めました。具体的には、女性向けサービスとして馴染みやすい印象を大切にするため、ピンクではなくベージュトーンをブルーと組み合わせ、コントラストを作るなど、カラーの比率を調整することで実現しました。
一方で、議論をする中では「ピンクを基調にするべき」「ブルーは使うべきでない」という意見も根強くありました。ピンクの使用については、トレンドに左右されやすいことや古さを感じさせるかもしれないという懸念と、“女性だからこうあるべき“という固定観念を見直したいという意味でも、協議を重ね慎重に進めました。多様な意見を取り入れながら進めたことで、デザインの完成度を高めることができたと感じています。
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━━━リブランディングをはじめ、これまで携わったスマルナのクリエイティブの中で最も大変だったことはなんでしたか?
特に大変だったのは、PTP包装(カプセルや錠剤などの医薬品を個別に包装するシート)と外袋のデザイン制作です。製薬業界には製造上の厳格なルールがあり、それを遵守しながらユーザーにとっても嬉しいと思ってもらえるようなデザインを実現する必要がありました。こうした医療用医薬品のデザインについては前例が少なく、最初はどのように進めていくべきか迷う場面も多かったですね。見間違いや取り間違いが絶対にあってはいけないため、医療サービスとしての安全性を最優先に、デザイン性を高めて楽しんでもらうものではなく、機能性を重視して真摯に向き合うというマインドを大切にしました。
リブランディングと並行して制作を進めていたため、時間的な制約や作業量の調整が求められる時期でもあったので、社内のメンバーにはよく「大変でしたよね?」と言われます。でも、私としては新しい挑戦として刺激にもなっていましたし、何より完成したデザインを見ると、その過程であった苦労などは全てが吹き飛ぶタイプなので(笑)。自分としては大変だったと感じていないかもしれません。
━━━リブランディングプロジェクトを進める中で、経営陣にデザインの意図を理解してもらうために工夫した点はありますか?
プロジェクト開始当初は経営陣との共通言語がない状態で悩ましいこともたくさんあったのですが、経営陣が意思決定をする上で、私としてできることはひたすらアウトプットをして理解してもらうことだ、というところに行きつきました。協議した内容を全てデザインに落とし、それを見ながらまた全員で協議するという感じで進めました。そうしてディスカッションを重ねるうちに、経営陣と自分のアウトプットが重なってきたタイミングがあって。言葉や想いをクリエイティブに乗せて表現することで共通のビジョンを共有できたと感じた瞬間でした。クリエイティブの持つ力や可能性を改めて実感できた貴重な経験になりましたね。
━━━“経営視点で考えるクリエイティブ” について、こだわった点について教えてください。
デザインを経営的視点から捉えることで、スマルナのブランドの価値を長期的に維持し、サービスの成長に寄与できるよう意識しました。単に見た目を作るのではなく、会社のミッションや事業の方向性や目標、ビジョンにマッチしたデザインを落とし込むことが重要だと思っています。具体的には、ユーザーが持つ印象を考慮しつつ、ビジネスの根幹に迫る形でブランドのストーリーを形成し、リブランディングを進めていきました。デザインは経営戦略の一部として機能し、より強固なブランドの基盤を築くことができる。これは私の信念でもありこだわったところです。
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━━━コンセプトが決まってからどれぐらいの期間でリリースまで辿り着きましたか?
約1年ぐらいですね。コンセプトが決まったらもうリリースに向けて全力で走り出すわけですが、実はアプリデザインは初めての経験だったんです。開発スケジュールが読めないということもあり、無事に間に合うかどうか...正直不安もありましたが、無事リリースできた時は心底ほっとしました。リリースしてからがスタートではありますが、クリエイティブチームをはじめ、社内メンバー一丸となって得たこの大きな達成感は忘れられないですね。
「チーム全員が“スマルナらしさ”の共通認識を持っている」それぞれの強みを活かして実現したリブランディング
━━━今回のリブランディングでは、チームメンバーそれぞれがどのような役割を果たし、どんな体制で進めていったのでしょうか?
クリエイティブチームのメンバーは私以外に3名いて、それぞれに専門領域があります。アプリのUIUXデザイン、Webデザイン、リーフレットやパッケージなどの印刷物のデザインなど、さまざまな要素をそれぞれで作り上げていく過程で、お互いのアウトプットを共有し、何度もすり合わせながら進めていきました。方針が定まっていない最初の段階からチーム全員で一緒にクリエイティブを作りながら、徐々に方向性を固めていくというスタイルです。これによってみんなで共通認識を持って進めることができましたし、今回のリブランディングを実現することができたと思っています。
また、ローンチ後には、全体のデザインや方向性を言葉と画像で説明できるよう、ブランドガイドラインを作成しました。このガイドラインは、チームメンバーだけでなく社内の共通認識として、スマルナのブランドイメージを担保できる基盤となっています。仕組み化を進めることの重要性を改めて実感しました。
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━━━弓子さんにとってチームメンバーとはどんな存在ですか?
クリエイティブチームのメンバーは、それぞれ専門的なスキルを持つプロのデザイナーです。私を含めチーム全員が様々な部署の制作物を手がけており、その中で私はマネージャーとしてディレクションにも注力することができています。
インハウスのデザイナーは受け身になりがちな場面もあるのですが、チームのメンバーたちは、現場のニーズを捉えるために自ら積極的にプロジェクトに関わっていくんですよね。全員がスマルナに対する共通認識を持っているため、各部署で実現したいイメージや要望に沿ったアウトプットにつながっています。とても頼りにしていますし、誇りに思っています。
「ユーザーにとって安心できる場所でありたい」スマルナを通して提供したい価値とは
━━━リブランディングを経て1年が経ちました。その後の反響はいかがでしたか?
リブランディング後、SNSを通じてあるユーザーから「ブルーやコーラルピンクの配色が医療の清潔感や堅実さ、人の温かみを反映している」とのコメントをいただきました。私たちが伝えたかったブランドイメージがしっかりと伝わっていることを実感し、とても嬉しかったです。また、「サービスを使っていてストレスがなくなった」といったアプリUIに対する感想も非常に印象的でした。
リブランディングを行いましたが、提供する価値自体は変わっていません。実際にいただいたコメントを通じて、スマルナが医療サービスとして正しく伝わっていること、そして、ストレスなく使いやすい機能的なデザインを実現できたことを確認でき、本当に良かったと感じています。
━━━今後スマルナをどのような存在にしていきたいですか?
今後もユーザーにとって「安心できる場所」として、医療を身近に感じてもらえるような存在でありたいと思っています。また、私たちが挑戦することで、医療分野においても「新しい視点」を提供できるようなブランドを目指していきたいです。
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さいごに
━━━今回のリブランディングプロジェクトは、弓子さん自身の価値観や考え方にどんな影響がありましたか?
大規模なリブランディングには膨大なエネルギーが必要ですが、このプロセスを通じて私自身のデザインやブランドに対する考えが一層深まりました。日々のトレンドに敏感でいることはもちろんですが、何よりも、クリエイティブを通してサービスをユーザーに届けることの重要性を再認識しました。
特に、ユーザーが私たちのサービスを信頼し、安心して利用してくれる瞬間を想像すると、デザイナーとしての責任を強く感じます。このリブランディングの経験は、私にとって「仕事」以上の意味を持ち、スマルナの未来を築いていく一員であるんだということを実感しています。
今回のインタビューを通じて、弓子さんがデザインの力を活用し、企業としての成長に寄与しようとする姿勢が強く伝わりました。新たな「医療」という領域での大きな挑戦の中で、今回のスマルナリブランディングでは、経営視点を持ちながら、デザインを通じてユーザーにサービスを届けることに注力し、その思いを形にしました。
引き続きスマルナは、医療を身近に、人々の生活を豊かにする一助となるサービスとして、新たな医療のスタンダードを実現していきたいと考えています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。