デザインの深堀 vol.6 カトラリー
毎週土曜日更新
一つのジャンルを深堀する連載企画
今回はカトラリーです。
なぜフォークが4本になったのか、気になるところです。
1.カトラリーの歴史
そもそもカトラリーとは、食卓で使うナイフやフォークの総称のことです。
お肉用やお魚用、スープ用などさまざまな種類がありますがコース料理にでも
いかない限り気にすることはあまりないかもしれません。
実はカトラリーがテーブルに並ぶようになったのは19世紀ごろからで、200年位しか経っていません。意外と歴史が浅いのです。
それ以前までは中世ヨーロッパの貴族も手を使って食べていました。
それには「指は神様が与えた優れた道具である」という宗教観が関係していました。
貴族は親指、人差し指、中指の3本を使用し、庶民は5本指で食べていたそう。
2.スプーン
ナイフ、フォーク、スプーンの中で一番歴史が深いのがスプーン。また形状もほぼ変わっていません。そして太古からスプーンのような形状のものが発掘されていますが、食事ではなく調理や化粧道具として用いられていたみたいです。
スプーンの形状の元祖は、水を掬うときの手のひらの形と言われています。
食卓に登場するのは14~15世紀、これは上流階級の人々がつい始めました。庶民が使うようになったのは17~18世紀になってからです。
ちなみにスプーンはキリスト教と深い関わりがあります。
キリスト教徒は子供が生まれると、洗礼を受けさせます。その時に、スプーンを贈るのです。そして裕福な家では銀のスプーンが贈られていました。
このことから「銀の匙を持って生まれた子供は幸福になれる」といういわゆる”銀の匙”が広まりました。
3.ナイフ
ナイフはカトラリーの中で最初に使われ始めたアイテムです。
大きな肉を切る為に使われはじめました。当初、ナイフの先は尖っていたため、食事の後にナイフの先に歯で掃除をしていました!
あぶない…
現在のナイフの先端は丸くなっているものが多いですよね。これは安全のためもありますが、実はフォークの代わりにナイフの表面で副菜を食べるためです。
すくいやすくしたんですね。
フォークは最初二股でした。今だとステーキフォークです。
この状態だと副菜をすくって食べることができず、こぼれ落ちてしまいます。そこでナイフをフォークの代わりとなるよう先端が丸くなりました。
そこからフォークの歯の数も変化していきます。なのでナイフとフォークは1セットでお互いを進化させていきました。
4.フォーク
カトラリーの中で最後に普及するのがフォークです。
ナイフの項でも触れましたが、最初フォークは二股だったので食事のためではなく、切り分けの際に押さえておいたり、大皿からそれぞれが取り分けるための調理器具として使われ始めます。
しかし、二股だと副菜をすくいづらいのとお肉を切り分けるさいにそのお肉が回転しまうのです。刺した際に固定するのにはあまり適していなかったので三股になりました。
三股になるとたしかにお肉は回転しなくなりました。しかしまだコーンなどの細かな野菜は取りづらいのです。そこでフォークの歯は4本になりました。そこでようやくお肉を固定しやすく、副菜もすくいやすい現在の形状になりました。
実は五本の歯のものも出てきたのですが、これは単に口に入れた時に邪魔だったので無くなりました。
こうして利便性を高めていったフォークですが、普及するにはすごく時間がかかります。調理器具としては認知されましたが、食事は基本的に手を使って食べる文化が根強く残っていたためです。
ルイ14世もフォークを嫌っていたとか....!
しかし徐々に食器としての認知が広まり文化として浸透していきました。
5.変遷まとめ
ナイフとフォークの歴史をまとめると以下になります。
1.ナイフ + ナイフ
↓
2.二股フォーク + ナイフ
(先端が丸くなる)
↓
3.三股フォーク + ナイフ
(お肉を固定しやすい)
↓
4.四本フォーク + ナイフ
(副菜すくいやすい)
↓
5.五本フォーク + ナイフ
(幅が広くて邪魔)
↓
4に戻る。
フォークが進化する過程で、ナイフも先端や長さなどの変化をしています。
フォークの歯がなぜ4本なのかなんて、普段考えないですよね。
現在では当たり前の形状でも、そこに至るまでにはさまざまな紆余曲折があります。深堀すると深い歴史があるものです。
ではまた来週ー!