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デザインの深堀


世の中には様々なものがあります。
そして何気ないアイテムの背景には素晴らしい技術や伝統が往々にして存在します。

デザインの深堀ではその背景を深堀し毎週土曜日に更新していこうと思います。

第一回目は本金糸

本金糸とは和紙に金箔を貼り、それを芯糸に撚り付けて糸にしたものです。
そもそも紙からできているのが衝撃!
この糸は祇園祭をはじめとした日本各地のお祭りのかざり幕や、大相撲の化粧回しなどをはじめとして、古くからの日本の伝統文化に根ざす神事、祭礼、慶事に使われてきた歴史があります。

そしていまだに職人の手による部分が多く、伝統工芸にも指定されているんです。

But not for meに参加して下さっているアクセサリー作家のmahyaさんがこの糸を使っていたのがきっかけで知りました。この糸凄くきれいなんですよね!
さらに紙に金箔を貼ったものというのが驚きです。

本金糸の製造工程は以下の6つ。



1.金箔を引き延ばす

明治三十年創業の寺島保太良商店さんの金箔打ちの工房。
60年~70年前の機械を今でも大切に使われています。
金箔を数千枚重ねたものを機械を使って3/10000mmの薄さまで、金箔を打ち叩いて伸ばしていきます。

2.和紙に漆を引く工程 その1

本金糸を制作する工程で、純金箔を押すための下地づくり。
和紙に漆を引いていきます。
漆は和紙の表明を滑らかにして金箔の光沢を美しくするための「地漆」と、金箔を接着するための「押し漆」があります。
この工程では機械を用いて「地漆」を引いていき、「室(むろ)」と呼ばれる空間へ収納していきます。
この室に収納していく過程が美しいんですよね!
ぜひHPで見てみて下さい。

3.和紙に漆を引く工程 その2

表面に漆を引かれた和紙は、「室(むろ)」と呼ばれる空間へ収納されていきます。漆は湿度で定着していく特性を持っているので、室の中は打ち水をしたり加湿器を設置し、密閉して湿度の高い環境としています。
1~2日程度、室の中で定着乾燥した地漆は、茶色く光沢を放った表情を見せてきます。

4.純金箔押の工程

地漆を引かれた和紙は、約60cmの幅に長さが125mあります。
この和紙の上に3寸7分(12cm弱)四方の金箔を手作業で押していきます。
この工程で使用する純金箔は5800枚。
1万分の3㎜という薄さの純金箔は取り扱いが非常に難しく、それを狂いなく隙間なく貼りこんでいく技術は見事なものです。
漆は湿度によって定着の条件が変わるので、漆の状況の見極めも非常に難しいところです。高度な技術と経験と勘と根気が必要な工程です。

5.裁断

純金箔を押し終えた600mm幅125m長の原反を裁断加工していきます。
まずは大切り裁断で600mm幅を六等分にカットします。
そして六等分にカットした本金原反を、いよいよ金糸の太さに応じて細く裁断していきます。太い番手で約2mm程度、細い番手ですと約0.8mm程度の幅で裁断をしていきます。
裁断した箔紙は、撚糸のためにボビンへ巻き取られていきます。

6.撚糸

細く裁断した箔紙を芯糸にらせん状に撚りつけていきます。
芯糸は黄色く染めた絹糸や綿糸を使用しています。
すき間を作らないように柔らかい風合いをまもって撚り上げていくことが大切なポイントです。

7.仕上げ

工場から撚りあがってきた本金糸を、刺繍職人様にお使い易いように小分けしていきます。
金糸を掛けつける板の長さは33cmです。
30周ごとにこよりで仕切りを入れながら、150周掛けつけると100mの長さに仕上がります。少しひねりを加えて、こよりを束ねつけて本金糸の完成です。


mahyaさんが本金糸を使うようになった経緯がまた良いんです。
「まず、自分が安心できるものをつくろう」
もともとは金属を使ってアクセサリーを作っていた彼女。すやすやと昼寝をする息子のそばでも、安全に作業をするためにはどうすればよいのか。
そこで彼女が選んだのが糸でした。

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小さなお子様がいるお母さんや金属アレルギーの方にもアクセサリーを楽しんでもらいたい。糸はそれに最適でした。
糸を使っているので凄く軽いのもポイント。
But not for meにてぜひご覧ください。

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