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サッカーをしたくてもできない子どもたちのために|love.fútbol Japan|ヨコハマ・フットボール映画祭2023『ある日突然に』レポート

今回は、ヤングケアラーである少年がプロサッカー選手を目指すイタリア映画『ある日突然に』の上映後に実施した、love.fútbol Japan代表の加藤遼也さんをお招きしてのトークショーをレポートします。

みなさん、こんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第91回を担当します、スタッフの細川です。

love.fútbol Japanとは

love.fútbol「世界中の地域コミュニティと協力し、社会成長のプラットホームとしてのサッカーグラウンドをつくる」をミッションとし、「世界中のすべての世代が安心してサッカーを楽しめる世界」を目指す団体です。2006年の設立で、2023年までに13カ国に計60カ所以上のグラウンドを建設しています。本部はアメリカにあり、日本とブラジルに支部があります。

日本支部であるlove.fútbol Japanは2018年に法人化、「子どもたちが安全にスポーツを楽しめる居場所」「サッカー界の力で子どもたちを支援する仕組み」の2つの環境を次世代に繋ぐことをミッションとして活動されています。

love.fútbol Japanの活動について

love.fútbol Japan 代表 加藤遼也さん

ーーlove.fútbol Japanでは具体的にどういった活動をされているのでしょうか?

加藤 あまり知られてないですが、日本にも経済的な貧困や、人種、ジェンダー格差によってサッカーをしたくてもできないとか、続けたいけど続けられない子どもたちが、推定で最大で9万人ぐらいいます。

年間で私達に応募してくる子たちは、最初の年で100人、今年が300人で、2年間で3倍に増加しています。決して他人ごとではないような問題になっていて、そうした経済的な理由によって参加をしたくてもできない子たちを応援する様々な活動をしています。

ひとつが、機会提供としてサッカーに限定した5万円の奨励金の給付や、スポーツブランドと連携した用具の寄贈をしています。あと、こういった子どもたちの傾向として、心の課題が関係しているケースが多いので、そのサポートとして毎月、プロサッカー選手たちとオンライン交流、もしくはリアルなサッカー交流を続けています。

あとは、こうした課題自体がそもそも知られていないので、それを知っていただくために調査活動や課題周知のための社会啓発をしたりしています。

あのプロサッカー選手も活動に参加!

ーープロサッカー選手がこのプロジェクトに関わってるっていうことですが、どういった選手がどういった活動をされているのでしょうか。

加藤 例えば、神奈川のチームの話をすると、川崎フロンターレの小林悠選手や家長昭博選手など、全部で18名(2024年8月現在では20名)の選手が登録しています。女子選手では、INAC神戸の山本摩也選手やマイナビ仙台(2024年現在はマンチェスター・ユナイテッドWFC)の宮澤ひなた選手も登録しています。

その方たちがどう関わってるかといいますと、年俸や活躍給の1%を寄付いただいています。

また、寄付だけではなく、実際に子供たちと交流をして、子供たちの精神的なサポートや、こうした課題を一緒に日本中に伝えていく、ということもしていただいています。

「1%フットボールクラブ」とは

ーー先ほどあがった、年俸や売り上げの1%を寄付する「1%フットボールクラブ」というプロジェクトですが、どういった経緯で活動されるようになったのでしょうか?

加藤 今日この話を聞くまで、日本の中で経済的な理由でサッカーをしたくてもできない可能性があるっていうことを、何となく知っていた方ってどのくらいいますか?(会場に挙手を求め、まばらに手が挙がる)

「何となく」っていう部分がおそらくJリーグが始まって以来、ずっと続いてきたんですよね。でも、一体どれぐらいいて、どこにいて、どういった課題を持っていて、何を必要としてるか、という具体的なことは誰も把握できていない状態がずっと続いてきました。

私自身、前職でいろんな子供の貧困や虐待問題に携わっていたこともありました。その中において衣食住や、生命に関わるものが優先されます。
文化的な支援や、スポーツ的な支援というのはどうしても後回しにされてしまうんですよ。支援としてなかなか難しい、というのがまず問題としてありました。

あとは、誰も把握できてない問題が故に、当事者の人たちも声を上げづらいんですよね。そして、声を上げたところ支援がないので、贅沢だとか、娯楽だとか言われてしまうんじゃないかなと思って声を上げられないという問題がありました。

あとはコロナ禍ですね。本当に多くの方が影響を受けたと思うのですが、その中で元々厳しい環境下にあったり、仕事を失ったり、給料が減ってしまうということがあって、学校外での子どもの体験学習の機会が損なわれてしまいました。

それを期に、私達も日本で子どもたちの応援をしたいと思い始めたのがきっかけです。

応援された経験が次の応援につながっていく

ーー実際にアクション起こして、やってよかったなって思えたエピソードを教えてください。

加藤 ずっと続けていくものだと思っているので、あまり「やってよかったな」と感じないようにしようとしているところもあります。

ただ、今年に入って3年目になって、3年間やっていると子供たちの関係性というのも変わってきていて嬉しいことも増えてきています。

その中で一つだけ挙げさせてもらうと、子どもたちが応援された経験が、次に誰かを応援する経験に繋がるんだっていうことをすごく実感しています。
特にプロサッカー選手と交流を続けてる子どもたちに関しては、自分の存在を見てくれる人たちが日本プロサッカー界にいるということ、自分の夢を応援してる人たちがいるんだってことを、もう肌身で体感するわけですよね。それが故に、「将来私が、僕が、大人になったら、同じ境遇の子どもたちを応援したい。」というような感想をよくいただきます。

そういう子どもたちがすごく増えてるんですよ。これは私自身が想像してなかったのですごく嬉しいというか、びっくりを含めた喜びにつながっています。

サッカーを愛する者で支援の輪を

ーーアンケート調査報告書(2023年度版)を読んでショッキングなこともたくさんありましたが、初めて知ることが多かったので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。

加藤 実は報告書の記事はWEBニュースにも載ったのですが、「それは自己責任だ」とか「他の競技はどうするんだ」とか、なかなか理解してもらうのは難しいな、というコメントが圧倒的に多かったです。
この問題は、結局、サッカーに何かしら恩恵を受けている人たちで解決していくしかないなというふうに思っています。


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6月6日に公開された、love.fútbol Japanの2024年度のアンケート調査報告書はこちらで閲覧いただけます。

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