生理用ナプキンとおりものシートを間違えてしまった私が考えた、‟共感”の大切さ【#生理の話ってしにくい】
はじめまして、森内と申します。デザイナーとしてNHKに入局後、紅白歌合戦の舞台美術やドキュメンタリー番組のCG演出に携わってきました。
▼かつての仕事「鶴ヶ城プロジェクションマッピング」▼
おととしからコンテンツ制作の部署に異動。SNSや先端技術を活用した番組の開発に関わっていた中で、生まれたのが、特集ドラマ「雨の日」です。
この「雨の日」というドラマは、同僚の女性職員が集まって、今、社会の中で課題とされているジェンダーギャップや生理について当事者の女性以外に知られていない状況を打開するための企画会議から生まれた番組です。
女性中心のプロジェクトに「多様な視点」として参加
女性職員中心に何度も打合せをしながら検討を重ねるプロジェクトの進行を横目で見ていたのですが、議論の中で男性目線が希薄になっていた印象を受けました。
多様性に関わる課題では、男性の知識や経験の不足が要因とも言われている中、女性だけでなく男性の考え方や意見も取り入れた方が良いという話になり、男性の実態や受け止めを代弁する役割としてチームに参加しました。
会議の中で、自分自身が家族からナプキンを購入してきて欲しいと頼まれた時のエピソードを紹介しました。
ドラマにも採用された「ナプキンを買いに行った」エピソード
生理用品を買うのは初めてだったこともあり、買い物で立ち寄ったドラッグストアで戸惑ったのを覚えています。パステルカラーの似たような商品が並ぶ棚の前で、ものすごく迷いました。
女性専用の一角でじっくり選ぶのが気恥ずかしかったのもあり、急いでそれらしき商品を手に取ったところ、うっかり、おりものシートを買って帰ってしまいました。これでは役に立たない!と家族から言われたのを覚えています(笑) 。
その話を披露した時に女性陣からは驚かれたのですが、男性は多くの人が知らないのではないでしょうか。生理用品を売っているコーナーにいる男性もあまり見ることはありませんし、一般的に家の目立つ場所に置かれている訳ではないので、目に触れる機会は少なく、十分な知識はないように思います。
やや言い訳じみてますが、こういったことが、生理の話題がまだまだ男性から遠いところにある理由の一つかも知れません。男性が女性特有の生理に関心を持つきっかけになるかも知れませんので、パートナーやご家族に生理用品のことを話題にしてみてはいかがでしょうか。
実は、このエピソードを引用したシーンもドラマの中に入っています。男性視点が少しでも伝わればうれしいですね。
ナプキンを実際につけてみた
ナプキンの話が続きますが、実は身に付けたこともあります。「雨の日」のテーマが生理やPMS(月経前症候群)の実状を届けることに決まったこともあり、女性の感覚や苦労を実際に経験してみると、ドラマの構成や演出に返せることがあるかも知れないと思ったのがきっかけでした。
そもそもナプキンは“パンツに貼る”という使い方も知らなかったぐらいなので、装着するまでにはかなり手がかかりました。男性は女性と違う器官があるのも加わって、付けてみるとすごく違和感がありました。いつもないはずの所に何かの存在があるのは想像を越えて快適なものではなかったです。
一方で、いつか自分が病気や加齢によって何かを付けなければならなくなることも想像しながら、いろいろな暮らしに想いを膨らませることも。
毎月、こういったものを定期的に付けなければならない女性の苦労をわずかながら感じられる機会となりました。
私がこのドラマの制作過程で体験したことは、多くの男性には非日常的なことだと思います。生理を抱えている当事者ではないので、女性同士の話題についていけないことも多く、日々学びながら参加している気分でした。
そのような環境にいると、自分は、小学生とか中学生とか思春期を迎える時に保健体育の授業で導入だけ知って、そこから何もアップデートされずにそのまま過ごし、生理やPMSについてほぼ知らないまま、年を重ねて来てしまったことを感じました。
併せて、家族との経験に置き換えながら、あの時、実はこういうことだったのかもと振り返ったり、今後は対処を変えた方が良いなと気づいたり、ふだんの意識や振る舞いを顧みることができたのが良かったことです。
多様性と共感しあうコミュニケーション
また、会議に出席していて特に感じたのは女性の多様性と共感し合うコミュニケーションのしかたです。
女性は男性より個性的で、もう本当に10人いたら10人違う。女性ばかりのメンバーで会議をしていると、同じ言葉や事柄についても、一人一人の思い、感じ方、そしてそれに対する反応もかなり違います。
仕事中に生理が来た時の対処の仕方、周辺の女性がどう行動しているか、これらを話す時に、それぞれの経験や話がどんどん飛び交う。五感のセンサーの感度が高いというか、男性に比べて、好みや考え方が人によって異なるのだというのを改めて思いました。
一方で、異なる意見にも関わらず、互いの意見にしっかりと耳を傾けながら分かち合い、個性を認め合いながら議論を深めていくのも印象的でした。
男性同士の会議だと、ともすれば立場や職能をベースにピラミッド構造を中心に合意形成がされていくことが多いですが、女性同士だと一人一人の個性を尊重するフラットな雰囲気の中で進行することを大切にしているような気がします。
「雨の日」にも、仕事や立場の違う複数の女性の実情がリアリティをもって描かれていますが、丹念な取材や議論が女性中心の制作チームで重ねられたからこその成果なのではないかと思います。
態度やセリフなど、あるある!こういう人って周りにいるなぁとうなずきながらご覧いただけると思いますので、物語に入り込みやすいのではないでしょうか。
また、女性の多様性や今の社会の現状を映す“鏡”として重要な役割を担う男性の俳優陣の演技も見どころです。
ドラマの中では、あることをきっかけに生理やPMSについて男性の意識が変化していく様子に焦点が当てられますが、それはドラマに限ったことではなく、実社会でも一人一人の価値観がもっとしなやかになり、他者の個性を受け入れる大きなふところを持つことこそが、これからの男性に今求められているのだろうと感じています。
▼「雨の日」プロデューサーのnoteはこちら▼
この記事を書きながら、ふと思ったのですが、こうして、女性、男性と分けた捉え方や語り口自体がすでに過去のものかも知れません。
ジェンダーの在り方は、学校や企業の仕組み、ヘアメイクやファッション、トイレの設計などなど、社会や生活のベースでしょうから、今後はますます私たち人類の共通のテーマとなるはずです。
まずは私自身が変わっていくことを大切にしながら、人それぞれの個性を面白がり、多彩でカラフルな世界へ変わっていくことを楽しんでいきたいと思います。
最後になりますが、私は今、視聴者のみなさんへNHKの公共的価値や受信料制度をお伝えする仕事を担当しています。
この記事でご紹介した取り組みや経験、視聴者のみなさんからのさまざまなご意見を自分自身や周囲へフィードバックしながら、これからの社会環境に寄り添った多様な番組やサービスの充実に努めていきたいと考えています。
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デザイナー・森内
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