ロストマイン ♯5
―5-
『○○体はもう大丈夫なの?』
「まだ痛いけどどっちかというと心の方が痛いな。」
『もう大好きじゃん。』
―――
デート当日が来てしまった
大事な日はいつも通り…なんてうまいことはなかった
入念に髪をセットし、鏡の前で確認する
凪紗:○○がちゃんとセットしてるの初めてみるかも。
○○:俺も初めてやるよ。
「若って意外と山下の嬢ちゃん好きですよね。」
○○:うるせぇ。
みんなに冷やかされながら、家を出た
―――
??:ついにしーが男の子とデート…!
瞳月:美青は大げさだって。一応恋人なんだからデート位するでしょ。
的野美青
山下組の幹部クラス?の人でめっちゃ強いし頼りになる
美青:恋人作ってもデート行かなかったこととかザラだったじゃん。
瞳月:○○君優しいし、一緒にいて楽しいし…
美青:多分それ「好き」に片足突っ込んでると思うよ。
好き、かぁ。好きって何なんだろうね。
―――
浅草駅に集合
服装を聞いていなかったから見つけられるかどうか不安だったけど、明らかに雰囲気の違うその道の人がいた
瞳月:おはよ。待った?
○○:全然。電車一本分くらいかな。
挨拶もそこそこに俺たちは雷門に向かう
流石浅草のシンボル、とてもご立派だ
○○:写真撮ろうか。
瞳月:任せて。
瞳月の持ってきた自撮り棒を使い写真を撮る
瞳月は写真を撮るのがうまい
○○:じゃあ中にはいるか。
瞳月:あの…さ、人いっぱいいるから…
そこまで言われたら何を求めているのかは流石にわかる
あえて俺は瞳月と恋人つなぎとなるように手をつないだ
そしてそのまま浅草寺の方へ
瞳月:ちょっと○○君!?
○○:え、もしかして違った?
瞳月:違…くはないけど、積極的だね。
○○:だってほら、彼氏だし…
瞳月:ふーん。○○君も顔が真っ赤になることってあるんだ。
○○:今日は暑いしね!
瞳月:そういうことにしておいてあげる。
お寺を散策し、商店街へ
商店街では昼食がてら、食べ歩きに勤しむ
お団子、煎餅、饅頭などやはり浅草というべきか和食がおおい
瞳月は隣で、太っちゃう~とかなんとか言っているがそんなことを言う女子で実際太った子は見たことない
歩いているから実質プラマイゼロみたいなところもあるだろう
瞳月:○○君それ一口ちょうだい。
○○:ん、いいよ。はいあーん。
瞳月:へへ、おいしいね。しーのもあげる。
まるでカップルみたいな楽しい時間を過ごしていた
次に回ったのが歴史的な場所
「まじでこんな不便な場所来るもんなんだな。」
「麗奈様の言った通りでしたね。」
「もうやっちゃっていいんだよね?」
○○:ん?なんだお前ら。
前と後ろから囲まれ10人ほど
敵意があるのは間違いない
しかし、如何せん数が多すぎた…
―――
○○:!?
父:落ち着け。家だ。
○○:瞳月は?あれからどのくらい経った?
凪紗:瞳月ちゃんは今捜索中。○○が緊急発信ボタン押してから2時間よ。
○○:ギリギリだな…
凪紗:それで何があったの?
○○:10人くらいに囲まれた。俺のことは知ってたっぽいな。
父:今○○が倒したであろう構成員から話を聞いてるけど中々口を割りそうにないな。
凪紗:その道の人間だろうけどね。スマホ奪ったけど○○解析できそう?
○○:やらなきゃ瞳月の身が危ないし。すぐに終わらせないとね。
医者の診断では、骨は折れていないらしい
それだけで十分だ
極道の人間は、得てして痛みには強い
別室では俺が捕まえた構成員の拷問が行われているみたいだが、同じ道の人間なら痛みだけで口を割ることはまずないだろう
スマホ解析で答えが出ればいいのだが…
―――
瞳月:あんたらいったい何者なのよ。
「俺らって、何者なんだろうな。」
「さぁね。少なくとも一般人でないことは確かか。」
「麗奈様もそろそろ来るだろうし、それまでは俺らと楽しんでいようぜ?」
瞳月:絶対嫌。
「ひゅー、怖い怖い。」
「気が強い女は嫌いじゃない。」
謎の集団にさらわれ、暗闇でどこともわからない場所に私は縛れられている
早く助けに来てよ○○…
私を守ってくれるんじゃなかったの?
??:いいね、かわいい顔してるね。
瞳月:アンタが麗奈様ってやつね、誰?何するつもり?
麗奈:せいかーい!私は小田倉麗奈、海外でマフィアやってるんだけどさ、お金足りなくて。浅草観光ついでにお金持ってそうな子探してたら君を見つけたの。
瞳月:…うちじゃなければもっと楽に奪えたかもね。
麗奈:なんのことかしら?
瞳月:金持ちのボンボンを狙った方がよかったってこと。今にうちの人や○○君がここに来る。
麗奈:○○?八鎩會の坊ちゃんのことかしら。これはまた面白いものが釣れたわね。
瞳月:知り合い?
麗奈:あそことは仲が悪くてね、うちらを海外まで追い出したのもあいつらよ。金もらってあいつらも潰せるなら一石二鳥だわ。
すると奴らは私から奪ったスマホを使い、パパに電話をかけた
二時間以内に身代金一億、逃走経路の確保などを要求した
それまでに○○君たちが助けてくれるのを待つしかない
私、信じてるからね
助かったらまたデート行こうね
―――
山下組から、ボスと幹部の的野さんがやってきた
奴ら、極道に身代金を要求してきたらしい
もちろんこちらに払う意思はない
しかし、時間内に瞳月の場所を特定することも必要だ
美青:それで?しーを危ない目にあわせた彼氏さんはどちらに?
凪紗:その言い方やめて。誰だって1対10厳しいでしょう。
美青:貴女も知っている通り、「守れなかった」という事実だけが彼には残る。
凪紗:そうね。だから今○○は最高にブチギレている。自分にも相手にもね。だから大丈夫。
しばらくするとスマホを持って○○が出てきた
○○:この度は瞳月さんを危険な目に合わせてしまい申し訳ありません。本来ならば指でも腹でも切るところ。しかしそんな場合でもないということで行って参ります。
○○は拷問が行われている部屋の方向に向かった
今なら○○の「誠意」が見られるだろう
父:行けそうか?こいつちょっとやそっとじゃ吐きゃしねぇぞ。
「当たり前だ。俺は麗奈様に忠誠を誓っているからな。」
○○:そいつは素晴らしい。その忠誠を俺にも見せていただこうかな。
「ふん。やってみろよ。」
○○:あんた仕事とプライベートはきっちり分けるタイプだな。このスマホには何もない。
ただ、仕事のスマホがiPhoneならプライベートのスマホはandroidにすべきだったな。
icloud上で全てつながってしまう。
そのつながったデータから面白いモン見つけちまったよ。
○○:この子との2ショットが多いな。調べさせてもらったよ。
谷口愛季
東京でアイドルをやっているらしいな。中々かわいい子じゃないか。
「おい待て!愛季に何するつもりだ!」
○○:何ってあんたの仕事の話をするだけだよ。
「それだけはやめろ!」
○○:だから言ったじゃん。麗奈様への忠誠を見せてほしいってね。
さっきまであれほど強気だった表情がみるみるうちに動揺と不安で満ちていく
瞳月の場所を言わなければお前のスマホからこの子に電話をかけるだけなんだけどな
「分かった!話す!話すから愛季に電話することだけはやめてくれ!」
○○:どこだ。言ってみろ。
「…教会だよ。」
○○:無事が確認されるまでこいつは預かるからな。もし嘘でもついたらお前の前で電話をかける。
拷問部屋を出ると凪ねえと的野さんがいた
美青:やるじゃん。
○○:これでスタートラインです。
凪紗:○○もえぐいことするよね~
○○:都合よく女がいて良かったです。
組の意図に沿わない女作ったら波紋だし、そもそも極道と付き合う普通の女はいない
あの動揺からするに、かなり偽りを重ねて付き合っていたのではないか
俺が同じ立場でも恐らく口を割るだろう
こうして俺たちは教えられた教会へと向かった
―――
教会の扉を開けると、瞳月が十字架に張り付けられていた
麗奈:おやおや○○君たちお金はちゃんと持ってきたかな?
○○:持ってくるわけねえだろ。さっさと瞳月を開放しろ。
麗奈:それなら難しいな~だってたった二人でしょ?この数に勝てる?
大勢の構成員が教会の裏から出てきた
○○:誰が二人って言った?
瞬間、銃声が聞こえ教会の天井を落として的野さんが現れた
天井の下でかなりの構成員がつぶれている
麗奈:ここ教会だぞ!神が怖くないのか!
美青:生憎うちらに祈る神はいない。
凪紗:ま、そういうことよね。だいぶ減ったかしら。
凪ねえが指を鳴らすと我々の構成員もでてきた
「よくもうちのお嬢を攫ってくれたなゴルァ!」
「若の敵討ちや!」
○○:いや俺死んでねえんだわ。
教会という神聖な場所で抗争が始まった
抗争のドタバタに乗じ、瞳月のもとに一直線
麗奈:ま、あんたならそうするよね。
○○:返してもらえないなら力ずくしかないんだけど。
麗奈:やってみなよ!
相手の右ストレートを腕ごと掴み、一本背負いの要領で投げ飛ばした後、顔面に向けて踵を振り下ろした
粗方他もケリがついたようで、撤退の準備を始める
○○:瞳月、帰ろう。
瞳月:…うん!
○○:もう絶対離すんじゃねえぞ。
瞳月:最初からそうしてよね、バカ。
○○:ごめんて。
瞳月:…すっごく寂しかったんだからね。
○○:二度と瞳月を一人にしないから。
こうして俺たちは崩壊寸前の教会から脱出した
―――
「おーおーどこの誰だか知らんが派手にやりやがって。」
麗奈:…誰だ…お前ら…
「君が知る必要はない。この抗争も、この教会も、全部なかったことになるんだから。」
麗奈:てめぇ…まさか…!?
…ボン
『たったいま入ってきたニュースです。今日午後教会が全焼し、焼け跡から複数人の遺体が発見された模様です。警察が出火原因などを調べています。』
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