Day5_DX人材育成講座 業務の棚卸しと自動化 -機械の頭脳は手に入れて終わりじゃない-
僕はSUNABACOに来るまで鉄郎だった。
機械の頭脳(AI)を手に入れれば、ハイパー院長になれると思っていた。でもそれは半分正しいが半分間違いだった。
1. 誰がためのDXか
DXはそれ自体が目的ではなく、可処分時間を作りその時間を再投資するために行います。
僕は常に業務でイライラしている。イライラしているというのは仕事に対してではなく、こんなことに時間を割かねばならない自分の力の無さにイライラしている。もっと課題解決するITの手法や、人を動かして可処分時間を作るマネジメントスキルがあればと思わない日はない
経営者を目指す目指さないは別にして、人は時間の価値に対してもっとケチになるべきです。「自分がこれをしなくてもいいようにできればなあ」と思いながら日々その解決法を探った方が良い。
時間が作るのはその分したいことがあるからであり、そのしたいこととは新しい仕事を創造することである。
仕事を創造するとは社会の課題を見つけることであり、これが課題解決の前に来る課題を発見することである。
これはビジネスの根幹となる能力で、VUCAの時代においては個人でもこの意識を持つことが必須となります。そうでなければ独り立ちする力はつきません。
この「課題を発見する」は最も能力が高い人間がすることになる。大学での研究でテーマを見つけ出すのは教授です。大学院生が研究しているというが、正確には教授の研究の末端を手伝っているか、自分で立案した研究にしろ教授からオッケーをもらうことでしか進まない。
逆に言えば、能力が高いとはその業務が解決することに価値があるかを判断する力があることになります。いくつもの楽器のハーモニーを聴き分け、音程やテンポ、表現のずれを指摘できる最も耳の良い人間が指揮者をやるのと同じです。
2.業務の棚卸し
講義で出てきたイーロン・マスクの本に出てくる業務の棚卸しの中で大事なのは『3. シンプルに最適化する』です。本当の必要性を可視化し、その上でDXする。
デジタル化とは、なんでもデータ化してAIやシステム化することではありません。守りのDXとはBPR(Business Process Re-engineering)のことでした。
BPRとは業務課程を見直し①人がすべきこと②機械がすべきこと③本当に必要か見直した方がよいものに分類し、イノベーションすることなのだ。
Day1の講義で時間をかけてなかまこさんが説明したことが生きている。ここがSUNABACOさんの一貫して伝え続けているDXのあるべき姿勢である。
3. ChatGPTとの付き合い方-責任は人間が取れ-
ChatGPTは「聞いたら答えるもの」と言う認識は正しくありません。
ChatGPTはランダム文字列を生成するマシーンです。つまりChatGPTは次に来る文字は何が来る確率が高いかを精度高く検索しつなぎ続けているだけなのです。
ChatGPTは知識を持つわけでも、賢いわけでも、知性を持つわけでもありません。インターネット上の数多の情報から、「次に来る文字は何の確率が高いか」をつなげているだけです。精度が高すぎて中に人がいるような気分にさせられるだけなのです。
「ChatGPTは間違ったことを言うからけしからん」=「ガチャポンで好きなものが出ない!」と怒っているのと同じです。そもそもの認識として「質問したら正しく答えてくれる」が間違いなのです。
このケースの場合まだ間違っていると判定できているから良いですが、判定できない場合は悲劇です。
ChatGPTが間違ったことを言ってそれがもとでトラブルになった場合、それはChatGPTの責任ではなくそれを採用した人間の責任です。
ChatGPTは「あなたができることをあなたがやらなくてよいようにしてくれる」だけなのです。
つまりChatGPTに文章を書かせるならば、自分に知識があり、自分にも書けるものでないといけません。「ChatGPTで検索しよう」が間違いなことがよく分かります。
4.ChatGPTが得意なこと
自分の専門分野であれば、前提条件となる知識があるので機械が出してきた情報から正誤を判断し取捨選択することができます。なので、機械の方が優れているシチュエーションは以下になります。
①自分がゼロから考えるよりも、ある程度たたき台があった方が良いケース
②自分が見逃していたけれど、別の視点をもって深堀りすることができる
以上から、「自分で責任が取れる」+「機械の方が優れていること」を探すことが業務改善の根底に持つべき考え方になります。
今回講座内では、0→1のアイディア出しも実演していただきました。
人間の習性として、ゼロからものを作り出すよりも、目の前にあるものに取り掛かる方が腰が重くないのです。たとえ最終的に9割方使わないものだったとしても。人間は仕上げの方が得意、機械は0→1の方が得意。ちぃ覚えた。(専門用語としてアンカリング効果と言う)
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また、ビジュアルデザインの修正案など、自分の知識が比較的薄いものも対応可能です。
そこで、Day3で行った「ユーザー体験を構成する5つの要素」をもとにChatGPTにデザイン分析をやってもらうことにしました。
Day3_DX人材育成講座 デザイン解決プロセス 想像するな、観察しろ|Soul-in@雇われ院長 Lv.5
これをChatGPTにぶち込んだ結果、想像を絶する反応が返ってくる。
やべぇー!!
このワークが一瞬で終わった!!!!11
もちろんこの分析がどれくらい妥当であるということが分かるのも僕の学習の効果なので、それはそれでよいのですが、この瞬発力は正直衝撃的でした。
学習や勉強はともかく、仕事は目に見える形にしてこそ評価を受けます。頭で考えがまとまらない、言語化できないなどで二の足を踏むことは多いと思います。
ここで知識が足りない方は調べねばなりません。しかし、表出させるフェイズで一行目が決まらない場合や、書いても小学生が書いたような文章になってしまう場合は、ChatGPTの力を借りると自分の思考の砂山からひとまず砂のお城にしてくれます。
ChatGPTは、世界のどこかにいる「あなたの困りごとが、その人にとってゴミみたいな仕事のレベル」のプロを連れてきて相手をしてくれます。
我々医療従事者に「リマプロストアルファデスクって何の薬ですか?」って訊かれたら、一瞬で「それはきっと、リマプロストアルファデクスの間違いです。」と訂正できますよね。
ただその召喚獣の呼び出し方には、上記のように知識に裏付けされたセンスが必要だというお話でした。
5.人の手を動かさねばならぬこと
さて、いままで機械やAIにさせる仕事を洗い出すことで省力化することの手順とその考え方について学んできました。ここで大事なことはテクノロジーの介入は「機械にさせられることは機械にさせる」で終わらないことなのです。
①本当に人の手でやらねばだめ?
例えば病院であれば病棟で「看護師から師長への確認事項が多くて仕事が進まない」があるとします。これをリアルタイムでの声かけではなく、メールフォームやLINEのような電子でのやり取りにし、優先順位をAIがソートし、対応の骨子を考えてくれるようなシステムを構築したとします。
その結果、最初はタイムラグがあったりAIの対応に慣れないこともあるでしょうが、上手く回ってきたとしてもスタッフには「やはり師長と直接確認したいのに対応してくれない」「師長が冷たい」とユーザーが感じるという新たな問題が生まれることがあります。
②その仕事は人の手でやる必要がないけど、他にできることは?
このようなケースで考えなければいけないことは「機械にさせる」は「人の手が入る仕事が増える」とセットで考えなければならないということです。
「機械にさせる仕事を仕分けする」は「人間がすべき仕事を創造する」こととセットということです。
師長さんは個別の対応に自分の時間を奪われることがなくなった分、病棟をこまめに回り報告すら十分にできていない新人に声をかけることができるでしょう。受動的→能動的なコミュニケーションへと形態が変化していますね。
このように機械化できることで生まれるメリットにばかり目を向けず、いまの雑務によりオミットされていた(省かれていた)業務を掘り起こさなければなりません。
もちろん「細やかに一例ずつ師長が対応する」は個別で人間がすべきコミュニケーションの一形態なわけで、それはそれでも良いかもしれません。
「機械化したらコミュニケーション減ったよね」というのは小さなPDCAだったわけです。その場合は、やはり「師長が一例ずつ対応すること」を人間がすべき仕事と定義して他の業務を自動化する方へと舵を切ります。
③人のために機械がある
「機械にさせる」「人間がする」はどちらが先かと言うと、やはり我々は「人間がすべき仕事」をまず定義し、そこに向かう過程で機械で自動化するものを選定することが人のすべき本当の棚卸しと考えます。
決して銀河鉄道999の鉄郎のように、機械の体を手に入れることばかりを目指していてはいけないのです。
さしずめ我々はAIという機械の頭脳に魅入られたAIの亡者です。わかる。SUNABACOさんの講座受けるまでワイもそう思ってた。
「全体として良くなるためにやっていますよ」という視点で始まり、その中で「部分最適としても便利ですよ」というバランスを考えることが大事というお話でした。
●おまけ Soul-inの実務の棚卸し
産業医はだいぶAIに置き換えることが可能そうですね。これは院内でともに仕事をする人がおらず、院外の会社と自分だけでしている仕事が多いので、自分だけの裁量でオペレーション改善ができるからかなと思います。
6.プロンプトの作成
新入社員に頼むように、状況を細かく設定した方がChatGPTへは出力が一定になりやすいです。特に専門用語を用いた方がChatGPTもそこを起点に回答を探すので同様のレベルの専門用語に繋がるようです。
長くなる、情報や条件が複数ある、情報の追記が前後する、などの場合はいちいち手入力せずに、音声入力が望ましいと思います。
我々は人に相談する時にメールやLINEでするよりも「あーちょっといいですか?」といくのに慣れているので、プレゼンが上手な人は音声入力の方が早いです。
自分は普段、perplexityとGensparkというAIアプリを使用しています。
どちらもAIの返答に対して、ソースを提示してくれるので助かります。
音声入力もChatGPTと同等でしたね。
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今回はChatGPTとの付き合い方でした。
いままでは検索ツールのように使うというアホ丸出しのようなことをしていましたが、組織全体の大きな業務改善ではなくとも自分だけでも雑務を減らすことができれば可処分時間が増える工夫がいくらでも出来そうですね。
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