Day4_DX人材育成講座 データ・ドリブン思考
Day3の振り返りはこちらになります。
Day3_DX人材育成講座 デザイン解決プロセス 想像するな、観察しろ|Soul-in@雇われ院長 Lv.5
1.EBPMによる攻めのDX
Day1の講義を受けて、自分はBPRを守りのDX、EBPMを攻めのDXと表現しました。BPRは何を守るかというと働く人間の時間を守るためのDX、EBPMはその時間を用いて新たに価値創造するDXだからです。ビジネスにおいて利益とは顧客に提供できる価値のことなので、利益に直結する時間の使い方をDXでイノベーションする必要があります。
Day1_DX人材育成講座 イントロダクション 守りのDXと攻めのDX🍎🍏|Soul-in@雇われ院長 Lv.5
DXにおけるBPRは①人がやるべきもの②機械がすべきもの③本当に取り組む必要があるか検討すべきもの、の三者を仕分けすることでした。
ではDXにおけるEBPMとはどういうことか?というのがDay4の講義です。
2.経験則からデータに立脚した意思決定へ
EBPMとは、現実に即した合理性のある意思決定、つまりデータを用いた意思決定に向かうことです。
しかし、経験則にはバイアスが伴うことが知られています。
変化の激しい時代においては、経験則よりも実際のデータを用いて小さく始めて効果を測定し、修正、学習を繰り返していくことの方がより良いものが作れていきます。
3.相関関係と因果関係
エビデンスにはその情報がどれくらい信用に足るのかというレベルがあります。
この辺から統計の話になってまいります。「ん?なんで統計になるの?」と思うかもしれませんが、統計とは事象と事象の関連の強さを数値化する手法です。その関連を語る上で重要な言葉遣いがあるので、因果関係と相関関係の話が出てきます。
例として、「アイスの売り上げが上がるとき、ほぼ同時にビールの売り上げも上がる」は見せかけの相関であり、その裏には当然お気づきのように「気温の上昇」という第3の変数が隠れています。
上記の例のように一方向の矢印でしか成り立たないのが因果関係です。相関関係があるからといって、必ずしも因果関係があるわけではありません。
大事なことは介入すべき変数を自分でグリップする(=因果関係を見つける)ことで、相関関係にすぎないのに未知の変数に踊らされて因果関係と混同してしまうことを避けなければいけません。
今回われわれが学んだ手法は、デジタルの世界ではその特性上、非常に簡便にエビデンスレベルの上位であるランダム化(無作為化)比較試験(RCT)が行えるということでした。
4.ランダム化比較試験が我々の生活にもたらしたもの
RCTは医療の世界では日常的に登場する統計学的手法です。お薬を投与するのに本当に効くのか分からない時に、エントリーした患者さんを2群に分け、それぞれで極力条件を合わせて新薬と偽薬(プラセボ)に振り分けて効果を観察する方法です。
お医者さんが「新薬だから効くと思いますよ!」などと言うと患者さんも「(なんか良くなってきた気がする…!)」などと自身の状況を誤認してしまい、真のデータが反映されないことがあるので、お医者さんも目の前の患者さんに新薬と偽薬どちらが投与されているかわかりません。
「えっ、ひどくない?」と思うかもしれませんがそれを承知で参加いただいているのです。もちろん治験に関わる治療費はすべて製薬会社の負担です。
この2群に分けて経過を観察し、アウトカム(評価する目的となるイベント)を評価します。我々は発生する健康上のトラブルをイベントと呼びます。決して楽しいとかワクワクしているという意味はありません。最も評価すべきアウトカムとなるイベントは死です。死までの時間(生存期間)を変化させる介入たり得たか、が治療の効果になります。その次は心筋梗塞や脳梗塞と言った死に直結する疾患などが来ることが多いです。アウトカムとするイベントはその研究により異なります。
余談ですが、新型コロナワクチン(mRNAワクチン)が最初に登場した2021年、ファイザー社のワクチンはランダム化比較試験で「予防効果が95%」と発表がありました。これはどういう意味だったかご存じでしょうか。
これは上記のスライドと表の通り、①ワクチンを打った集団②ワクチンを打たなかった集団(Placebo)の2群を比較した際に、①ワクチンを打った集団の中で発症した率②ワクチンを打たなかった集団の中で発症した率を比べた場合に、プラセボ群と比較して発症予防効果95%という非常に高い効果が示されています。プラセボ(偽薬)はこの臨床研究では生理食塩水が注射されています。
もう少しわかりやすくご説明すると、ワクチンによる発症予防効果95%とは「95%の人には有効で、5%の人には効かない」または「接種した人の95%は新型コロナに発症しないが、5%の人は発症する」という意味ではありません。
「ワクチンを接種しなかった人の発症率よりも接種した人の発症率の方が95%少なかった」という意味であり、言い換えると「発症リスクが、20分の1になる」とも言えます。
当時、コロナワクチンに対する疑念が広まる中で、自分は産業医をしていたのでいろいろな企業でこのデータについて説明して回った覚えがあります。結果としてはコロナワクチンは2024年4月1日時点で国民の8割以上が接種しており、mRNAワクチンの開発に大きく貢献したアメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の2人は2023年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は「彼らの発見が新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発を可能にした。彼らの科学への貢献が人命を救った」として、2人の功績をたたえました。
当時は新型コロナウイルスという答えのないバイオハザードに対し、世の中のデータを集めて必死でに向き合っていたのだなと思います。
5.デジタル×RCTの相性の良さ
こちらは講義で出てきたAmazonの一例ですが、デジタルの世界ではこうしてUI(システムの見た目)を変更し、無作為に選んだ2群で顧客の行動を観察することでアウトカム(クリック率や購買率)を評価することが簡単にできます。
医薬品の治験では、まず治験デザインに適合するユーザーを医療者が(意図しないように)集めねばならないですが、デジタルの場合はこちらが頼まずともユーザーからリーチしてもらえるわけですから、データを取得するのも自然とランダムになりますね。
どちらの群にあたったとしてもユーザーにとって侵襲性が低い(ダメージが小さい)ので医療の業界と違って、事前同意が不要です。
こうして日々、デジタルの力を借りることで、データ(証拠)集めることで、あらゆる感覚的なものを凌駕した因果関係を導き出すことができるようになりました。
いや、マジで「ぼくがかんがえたさいきょうのHP」とかやってる場合じゃない。
DX化の一つのゴールはこれであり、機械に任せることが増えてくると、その分裏ではデータ取りができるようになる。データがたまれば次にすべき施策を決定する材料がたまっていき、より高い生産性が生まれてきます。
6.人間が責任をもって意思決定をするために必要なプロセス
エビデンスベースの意思決定とは、選択の基準を形式知化(可視化)した上で関係のある数字を用いること。
組織とは意思決定を生産する工場である(ダニエル・カールマン)
EBPMとはその工場の生産をいかにデータにより手助けするか。より効率的な方法を授けることができるかになります。
ではまず何をするか?
それは職人や限られた人間にしかできなかった属人的な知識(結果を出すために因果関係のある因子)を、誰にでも判断できるように形式化していくことです。
医学はまさにその辺が体系化されている最たるもので、病気の傾向や特徴がデータとして多くの医師に共有されていることで多くの患者さんがその利益にあずかれるようになっています。
ちなみにこの2022年8月の自分のポストはめちゃくちゃバズってました。新型コロナの教科書とかあるようなないようなな状態だったのですが、自分が患者さんをたくさん診察した結果、ヒューリスティックながらも一定のデータを反映した情報たり得たのかと思います。この頃はうちのクリニックは、1か月で600人陽性者が出ていました。
現在16万いいね。なんと先日、大御所コピーライターの糸井重里さんにも引用RTされました!!!
が、、、
いいね♡23……糸井重里さん、いつもみたいにもっと頑張ってくださいよ←失礼
話を戻しましょう。
前述のように、人間が何をもって判断しているかを可視化し、それをAIに機械学習させると時に人間よりも高い精度で結果を出すということが起こりえます。しかも自動化されうる。
しかし当たり前ですが、AIの下した判断に対して最後に責任をとるのは人間です。AIは時に人間の経験値を凌駕しますが、それを信頼するかは人間か決めることです。あくまでAIの上に立てる背景知識があってこそのEBPMです。AIのせいにすることは、AIに使われることです。最後に顧客に接するのはAIではないのです。最後に顧客とコミュニケーションをとり、業務を完結させる者が顧客の合意を得ることが必要になります。
以上が、機械にできることは機械にさせ、人がすべきことは人がする。機械によってデータを基にした判断ができるようになり、それは人間の認知や処理能力を超えていき、機械をよりたくさん働かせられるようになる。
例:人口減少をどう食い止めるか
つまり、直感での考えたものは、現実問題に即しているようで即していないことが多いのです。きちんと変えたいものに対する関連要因を愚直に洗い出していき、それを使った判断ができるようにせねばならない。
7.目的意識を持ったデータ集め
目的=意思決定の改善 のためにデータ集めをします。
上記を利用して人の意思決定を代替・サポートすることができるようにすることが大事である。
非常にエビデンスレベルの高いRCTもデジタル技術を使うと低コストに導入することが可能であることが分かりました。
今後の講座でこれらを自分で扱えるようになり、組織内で内製化できるようにしていきたいと思います。