
『MAN EATER』で学ぶ、海水浴に行ったら気を付けたいこと【夏ゲー】
2020年7月のテーマは、ずばり“夏ゲー”だ。
夏ゲーとは何だ。知らん。夏を想起するものか、夏の思い出に買ったゲームなのか、その定義すらあやふやなまま踏み切っている今だ。
わかっていることは、夏とは生命の季節であり、その源たる大海原に抱かれんと毎夏多くの民草が海に群がるという現象があることと、今年はコロナの影響でそんな光景も恐らく見られないだろうという事実だ。
だが幸いにも、俺は灼熱の地獄のなか部屋から出るという趣味を持たない者である。ゆえに、このような緊急事態の下であろうとも、家にいながら母なる大海にアクセスすることが可能なのだ。そう、『MANEATER』ならね。
すでに精神的に海へ行き、身も心もサメとなってしまった俺が、『MANEATER』で得た知識をもとに、海水浴場の安全な利用方法を伝授しよう。
海にはサメが住んでいる
海というものは、地上に劣らずさまざまな生物が住んでいる。そのなかでもサメは非常に人気が高く、人類皆サメが大好きだ。
しかし気を付けなければならない。いくら人類がサメ好きでも、サメが人類を好きとは限らないのだ。
そして海というものはサメの領域でもある。つまり、人類が嫌いなサメに出会ってしまうとTHE END。あなたの肉体は木端微塵になる。
あなたがオーシャン・ラムジー氏でなければ、むやみやたらにサメに近づいてはならない。
昨今では竜巻に乗じて空を飛ぶサメや、幽体となったサメ、頭が無数に映えたサメなども登場するほどの進化を遂げた。
今やゾンビの次くらいにメジャーな生物兵器となったと言っていいだろう。
現に『MANEATER』のサメも、電気が流れる歯を持っており、ひとたび咬めば対象だけでなく、周囲の野次馬もろとも痺れさせる凶悪さを秘めている。
そして海面から姿を覗かせる背びれは、まさに悪鬼接近の狼煙。水面を滑る鋭利なナイフが自らに向かってくるさまを見ては、人は失禁を免れない。
海や川に不法投棄してはならない
今更言うまでもないが、不法投棄は犯罪である。ゴミ箱に捨てるのが面倒だからといってプラスチックやビン缶を投げ捨ててはいけないし、犯罪者に追われているからといって車で海にダイブをしてもいけない。サメの背びれにビビッて海中で放尿するのもダメだ。
ましてや、工業廃水や産業廃棄物といった汚染度が高いものを放出するなど言語道断だ。
かつて神は自然を荒らす人類に怒り、怪獣を遣わせた。そう、サメである。先述した空飛ぶサメたちも、神の使途かもしれない。主の御使いたる天使はサメだったのだ。
サメたちは、汚染された海川にすむ汚染された生物たちを糧にすることで超常的なパワーを得、やがて怪獣として目覚める。突然変異の食物連鎖だ。
放射性物質やダークマターなど、この世にはなんかスゴイパワーを発生させそうな名前の物質が山ほどあり、それらを取り込むことでなんかスゴイ生物ができあがるのはゴジラが証明している。
『MANEATER』のサメはまさにその象徴にして、身勝手な人類に裁きを下す断罪者だ。人に母親を殺された復讐という背景もあるが、基本的には気にしなくていい。
大事なのは、人類がもたらした汚染が、なんかスゴイサメを生み出すということだ。
海川で危険なのはサメだけではない
サメだけに注意を払えばいいかというと、じつはそうでもないのが大自然のやっかいなところだ。
海であればまだいいかもしれない。しかし川にはワニがいるので、さらなる注意が必要だ。そう、ワニもサメと並んで人気の高い生物である。ワニは俺たちの心の中だけでなく、世界中の川にも潜んでいるのだ。
しかもワニは、相手がちょっとしたサメくらいならどう猛に襲い掛かってくる程度には凶暴だ。なんならサメの稚魚程度であればかの有名なワニスクリューによって血祭にあげられるだろう。
何を隠そう、この伝統のワニスクリューからインスピレーションを得て野犬たちが編み出したのが、ドリル回転熊殺し殺法である。さらに発展させれば熊ですら一撃で断ち切る抜刀牙にすらなる。滅・変異抜刀牙くらい使えるワニがいても不思議ではない。
加えて言えば、海や川の各領域には、頂点捕食者こと“主”がいる。
例えばこのバラクーダ。ワニやサメが回遊する水域で頂点捕食者を張っていることから、相当な手練れであると推測できる。水には入らないから安心だとたかをくくった釣り人たちも、万が一主を釣り上げてしまったら、おそらくミンチはまぬがれない。
この手の話でよく持ってこられる「一番怖いのは人間だ」という結論は、『MANEATER』においてもある程度は通用する。一番怖いかはともかく、人間は銃を持っているとひたすらに攻撃的になるため、相手がサメであっても狂乱して銃を乱射するという習性がある。海水浴に行ったら、近くに銃を持ってサメと戦っている人間がいないかを確認しよう。
彼らはサメとは食われ食われつの関係性だが、どちらが有利かは陸上か水中か、戦場によって分かれるだろう。いくらサメが陸上活動が可能な生物だとは言え、脚がないぶん不利はいなめない。
秘匿されている真実:サメは空を飛ばない
政府から隠されている重大な真実を告げよう。これを書いたら俺はまっさつされるかもしれない。
じつはサメは空を飛ばない。陸上を飛び跳ねて人を喰ってまわったりもしない。だから、海水浴場に行っても、海中に行かなければ安全だ。
『MANEATER』はよくできたサメプロパガンダ作品なので誤解してしまうかもしれないが、サメは十万ボルトを気安く発する生命体ではない。
なので割とゲーム中も、サメザメしいムーブを決めていくことになるが、プロパガンダを抜きにしてもサメ好きにとっては良い作品だ。水中を高速で動き回り、水面から象徴的なナイフのごとき背びれを覗かせる。そしてビーチで海水浴をしている人間たちを食い荒らす。これだけでサメファンは絶頂して死に絶えるだろう。
真面目な話をすると、『MANEATER』はただ人間を食い散らすだけのゲームではない。母を殺し、自らにも傷をつけたにっくき人間をサツガイするため、生きとし生けるものすべてを喰らって進化を遂げた復讐のモンスターとなるゲームだ。
見事エヴォリューションを遂げるまでは、分身であるサメはフカヒレ候補でしかないが、ジョーズやメガロドンに並ぶ存在となった暁には、人間なんてポップコーンのような手軽なジャンクフードになりうる。
ゲーム全体の流れとしては、オープンワールドのいつものアレ的な感じでやや淡泊さも感じないではないが、サメザメしいアクションをキメられるというだけで、キラリと光るおもしろさがある。
サメの気持ちになればこそ、海水浴場でサメに襲われないようにするための自衛手段も身につくというもの。この夏と言わず、今後の人生で海や川で泳ぐ予定がある人は、将来の安全を買うと思って『MANEATER』を買うといい。
最期にいつもの宣伝だ。
2019年のゲームライターマガジンの記事106本がセットになった買い切りの単行本版も配信中。480円とかなりお得な値段でバックナンバーを読むことができるので、最近購読を始めた方や、購読前にどんなものが書かれているか知りたいという方は、ぜひこちらも読んでみてほしい。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?