拝啓、平凡な君へ
今年、何度、部活を辞めようと思ったことやら。
序
大学に入った当初、同期には大山望夢というバカみたいに速い奴がいました。先輩から速いねとチヤホヤされ、練習では望夢に圧倒され続け、いつしか闘争心が湧いていました。
こいつに勝ちたい、それが長大陸上部に入って最初の目標でした。
そこからは必死でした。
望夢が10すれば自分は11する。望夢が20すれば自分は21する。
それでも望夢には追いつけず、ただ、1年生にして駅伝には選んでいただきました。
駅伝後、自分は陸上以外にやりたい事を見つけ、陸上の優先順位が急降下しました。練習もあまり参加せず、5000mを17分で走るほど体力は底をついていました。
いつしか、部活で会える同期達と話すのが楽しく、勝つ事よりも参加する事に意味がありました。
そのため、走っても(自分にとっては)、いくら練習だけ熟せても、全く記録は更新されず。
ですが、周りの部員もそれくらいの記録であり、平然と過ごしていました。
破
そんなある日、同じくらいのタイムでずっと走っていた同期の安楽涼允が15分台を出しました。
涼允を格下と思っていた自分にとって(てへっ!🙏)、望夢に負けるならまだしも、涼允には負けてたまるか、と。
また、自分の闘争心に火がつきました。
そこから筋トレを毎日し、練習もしっかり行い、半年ほどで15分前半に突入することができました。そこで、陸上に味を占めた僕は去年の10月に14分台を出し、陸上に沼りました。
1度沼ると生活が怖いくらい陸上中心になりました。
研究室は定時きっかりで帰って走り、YouTubeで高校生の凄さに圧倒され、プロの練習を見て自分の練習にも取り入れてみたり、陸上関連の本を何冊も買ってVO2Maxなどと1年前なら全く使わなかったであろう単語を使い始めたり。。。
そんな波に乗った状態で挑んだ島原学生駅伝では1区5位と過去にない高成績。新聞にも自分の名前が載り、自分自身鼻が高かったです。
そして、世代交代をし、
「今年の目標は島原学生駅伝で優勝する事です。」とキャプテンが言った時、自分の超えるべき相手はアニーダ・サレー選手になりました。
去年、優勝を勝ち取った第一工大の要はアニーダ・サレー選手。5000mの記録上、彼を速さで無力化するのは自分の役割だと思いました。
そして、自分の目標は今年こそ、5000mを14分フラット、1500mでは3分代に突入して、春インでも活躍し、全日本学生駅伝に出るぞ!全国を知ってもっと自分は速くなってアニーダ・サレーを越えるぞ!
そう、意気込んだ矢先のことでした。
急
腸脛靭帯炎。
最初は良い休養期間と思っていました。
しかしそれが2ヶ月と続き、やっと治ったかと思ったら今度は坐骨神経痛。
さらに1ヶ月ほど休養期間を経て、痛みが和らぎ、1,2ヶ月練習を積むことができ、5000mの大会にでた後、腸脛靭帯炎の再発。
そしてその痛みが長腓骨筋腱炎へと転移し、さらに1,2ヶ月間練習に参加できず。
冬にも春にも走り込めず、夏の走り込みでも怪我をし、やっと継続的な練習が積めるようになったのはここ2、3ヶ月です。
ここでの怪我期間は限りなくメンタルがマイナスに偏っていました。
整骨院に行っても治らん、治ると言われる器具を使っても治らん、湿布貼っても治らん、休んでも治らん、叩いても治らん、神に祈っても治らん、
何しても治らん。
部員からは
「あいつまた怪我しとる、アニーダ・サレー選手を越す、そんなデカい目標を掲げたくせに、あいつ全然走らんやん、」そう思われているようにしか感じない。
もう、きつい。
走りたくても走れないのがきつい。
治したいのに、休めてるのに治らないのがきつい。
走らずご飯を食べる罪悪感がきつい。
どんどん体力が落ちていく感覚がきつい。
夏に走り込めないのがきつい。
駅伝の日がどんどん迫ってくるのがきつい。
周りが記録を更新していくのがきつい。
楽しそうに合宿してるのがきつい。
もう、部活に行くのもきつい。
相談したい同期も卒業し、各々の状況を鑑みることが難しく、気軽に相談することも出来ず。
自分がアニーダ・サレー選手を越すなんて馬鹿馬鹿しい事だったんだ、自分は1回14分代出しただけ、長大という小さな枠組みで少し速いだけで、14分なんて思い上がりだったんだ、
自分には無理なんだよ。
あぁ、平凡だ。
今書いてて、この時は軽度のうつ状態だったなと思います。
ただ、怪我をしている人、大事な時期にうまく練習が熟せない人は往々にしてそうだと思います。
特に今の時期にそうなっているとしたら尚きついと思います。
ただ、平凡な僕たちが休んでる暇はないんです。
自分たちの調子が上がるまで、怪我が治るまで他大は待ってくれるわけじゃない、
12月3日。
この日までに最高の状態に持っていかないといけない。
駅伝に再試は無いんです。
メンタルがマイナスに傾いているのかもしれない、調子が合わないかもしれない、
それでも走らないと、走りに活かせる行動を何か一つでもしないと、ただ、置いていかれるだけ。
何もせず駅伝でうまくいかないより、島原駅伝の映像を繰り返し見るでも、いろんな駅伝の映像を見るでもなんでも、やれる事を最後までやり尽くして調子を、メンタルを、12月3日に最骨頂に持っていか無いと、駅伝後に残るのは悔いだけだと思います。
自分はメンタルが極限に落ちた時、15分だけでも走りました。
嫌だ、今日は走りたくない、そう思って、声に出した事も何度もありました。
それでも走り続けました。
そのおかげか、去年よりもちょいパワーアップして今を迎えています。
自分はメンタルにおいて、何も問題ありません。
勝つ気、勝てる気しかしてないです。あとは真剣に足の調子を合わせていくだけです。
皆さんはどうでしょうか。
最後まで足掻きに足掻いて、泥臭く、勝ちに行きませんか?
長崎大学陸上競技部5年 鶴田理久