【アルバム】「葡萄 / サザンオールスターズ」
事務所、レーベルから最も力を入れられていて、それに確実に応えられているバンドのひとつ。サザンオールスターズの最新アルバム「葡萄」。
大衆音楽の粋、ここに極まれり!
なんと素敵なコピーをつけたもんだ。大衆音楽とは歌い手に惹きつけられるカリスマ性、日常性と非日常性の間を彷徨う歌詞、馴染みやすいメロディが揃って初めて成立するものだ。全16曲すべてに、現代から見える昭和の匂いを醸し出しつつ、現代の若者にもレトロ感ではない大衆音楽を作り上げている。
サウンド面から真っ先に感じたのが、ほとんどの曲に何気なく入っているストリングスの美しさである。気がつくと鳴っている感覚にもかかわらず、しっかり主旋律の補助と裏メロの主役、印象的なイントロとして存在している。鍵盤とかぶりがちなストリングスだが、バンドサウンドと桑田さんの声との裏、もしくは隙間でとてもよくバランスがとれている。
次に印象に残るのが歌詞。リリース前にTOKYO FMのレギュラー番組でON AIRしつつ歌詞を朗読していた。漢字と読みもしっかりと紹介しているのが作詞家としての自信の表れでもあるだろう。確か同番組で2015年1月ころに「これから数曲の歌詞を仕上げなければ」というような発言があったと記憶している。当時、既存のシングル曲以外の曲になるだろうが、例の紅白歌合戦での騒ぎがあった時期に重なる。話題を逆手にとるような社会風刺的な一節も感じることは確かだ。
大衆音楽の粋、ここに極まれり!
もう一度書いてしまった 笑。まさにこのコピーに尽きる。完璧すぎない(完璧になるよう目指していたのかな?)世の中だった昭和時代から、架空の広場である平成に、そして自由でありたい未来に聴き継がれるであろう名盤である。