《2021.03.16》ポッターでも、レノンでもなく。
眼鏡を買いに行った。
ちかぢか自動車の免許を更新しなくちゃならないんだけど、なにしろ黄金免許保持者(という名のペーパードライバー)なので、前回の更新から五年ほど経っており、たぶん今の眼鏡だと視力検査に通らないだろうな、とおもうので新調しに行ったのだ。
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実はけっこう目がわるい。
けっこう目がわるいわりに、ふだんは眼鏡をかけずに暮らしている。
パソコンを常用するようになってから急速に視力が落ちたらしいのだけれど、それまではわりと視力に自信があったためか、なかなか自覚できず、気がついたときにはすでにけっこう目がわるくなっていたのだった。
で、その、〈すでにけっこう目がわるい〉状態で〈はじめての眼鏡〉をつくったら、あまりにも世の中がクリアに見えて、なんだかこわくなってしまった。もはや、“あんまり見えてない世界”が、わたしのなじみの世界だったのね。
以来、仕事をするときとか、映画を見るときとか、必要に応じてはもちろん眼鏡をかけるけれども、そうでないときは、あんまり見えてない裸眼のままで生きている。
そんななので、けっこう目がわるいわりに、眼鏡についてはあんまり“生活必需品”みたいな認識がなくて、こうして何かのタイミングで視力検査が必要になるたびにハッとしてめがねやさんに走り、場当たり的に適当な眼鏡を購入してお茶をにごしてきたのだけれど、
待って、待って待って、今回は、なにしろ、ひっこし前のプチ断捨離まっさいちゅう!なんじゃないか、私よ。このタイミングでものを増やすのだから、これはもう、いっそものすごく好きなかんじの眼鏡をつくらねばならぬ。
ものすごく好きなかんじの眼鏡をつくって、愛しちゃったからだいじにするぞ!なんならお外でもガンガンかけていくぞ!みたいなスタイルで生きてゆくのだ。
と、決意したら、意外にもあっさりと、自分はロイド眼鏡がほしいぞ、とわかった。
眼鏡を買おう、と意識するまで、自分がロイド眼鏡がほしいとおもっているなんておもいもしなかった(文章にするとなんかややこしいな)ので、ちょっとびっくりした。
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…ロイド眼鏡。あの、ほら、
〈ハリー・ポッターみたいな〉と言ったらピンとくるタイプのひと、
〈ジョン・レノンみたいな〉と言ったらピンとくるタイプのひと、
双方に、にわたしは好感を抱く。
だけれどあれは、ポッター眼鏡ではなく、レノン眼鏡でもなく、ロイド眼鏡。
ハロルド・ロイドさんがかけていたからロイド眼鏡。
ハロルド・ロイドさんのことは、あまりよく知らないんだけれど。
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検索してみたら、生活圏内に〈ロイド眼鏡専門店〉があった。
…マジか。
そのお店の存在に気づいていなかった自分にがくぜんとしたり、ていうか丸めがね専門店て経営的にだいじょうぶなんだろうかと要らん心配をしたりしながら、さっそく、行ってきた。
ものすごく、いいお店だった。
内装も、商品も、展示の仕方も、ぜんぶぜんぶがカッコイイ。カッコイイのに、威圧感はぜんぜんなくって居心地がよく、お店のかたもあたりがやわらかく、それでいてプロフェッショナルで、ずいぶん時間をかけてフィッティングしてくださった。会話から推察するに70代とおもわれる(だけれどずいぶんお若く見える)、ニットベストがおしゃれな店員さんは、あとからもらった名刺を見たら、代表取締役で店長さんだった。
わたしたぶん、この街に住んでいるかぎり、他のめがねやさんには行かないとおもう。
なんか、自分の知っている〈めがねやさん〉の概念がかるくくつがえったくらい、いいお店だった。
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実物が手元にくるのはまだちょっと先なので、お店のHPからお借りした写真だけども、
これが、これからものすごくだいすきになる予定の、私のロイド眼鏡(と、おなじタイプの眼鏡)です。
※ややめんどくさいな、とおもっていた免許の更新にゆくのが、ちょっと楽しみになってきた、という思わぬオマケもついてくる。