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令和元年会社法改正と後見等開始審判

だいぶ久しぶりの投稿となりました。

令和元年会社法改正は、株主総会資料の電子提供制度や社外取締役の活用等に関する規定の改正など、かなり実務的(しかも主として上場会社など規模の大きい会社が対象)な改正がなされています。

私の場合は中小企業メインのお仕事なので、本業にはそれほど影響しないかなと思いつつ、一問一答はしっかり購入して勉強中です。

司法試験的にも、論文式試験には影響しなさそうな改正事項が多く、択一知識かなぁという感じがしています(そもそも今って商法の択一ないんでしたっけ)。

ところが、司法試験的にもなじみのある分野について、実はこっそりと改正がなされています。それは、取締役の欠格事由。

この記事では、取締役の欠格事由についても改正があるよ、という注意喚起と、個人的に気になった任意代理の終了事由との関係について「へぇ」と思った点があったので紹介したいと思います。

取締役の欠格事由についても改正があるよ

改正前の会社法331条1項には、次の規定がありました。

第三百三十一条 次に掲げる者は、取締役となることができない。
一 法人
二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
(以下略)

要するに制限行為能力者(未成年を除く)は取締役になれない、という規定です(準用規程によって、取締役だけでなく監査役、執行役、清算人、設立時取締役、設立時監査役にもなれない)。

この趣旨は、「会社の管理・運営をする適格性が疑われる」点にありました(田中亘『会社法〔初版〕』205頁)。

しかし、令和元年会社法改正により、会社法331条1項2号は削除されることとなりました。その代わり、成年被後見人等が取締役等に就任するには、その成年後見人・保佐人の同意(成年被後見人の場合には、同意+本人に代わる就任承諾)が必要となります(331条の2)

この改正は、成年被後見人等の権利制限は少ない方が良い(あまり制限が多いと制度利用を躊躇させてしまうし、本人のためにならない)という理念に基づくものです。

また、331条の2という代替措置があることによって、取引の安全も確保することができます。

このような、改正の必要性と許容性が揃って、今回の改正に至ったわけです。

任意代理の終了事由(原則の確認)

以上が改正の要点なのですが、ふとした疑問が浮かびました。

「あれ?じゃあ、取締役が就任後に後見開始審判を受けたらどうなるの?役員続けて良いとしたら、任意代理の終了事由の例外ってこと?」

基本事項の確認ですが、

①法定代理の場合には、

・本人の死亡

・代理人の死亡、破産、後見開始

によって法定代理が終了します(民法111条1項)。

②任意代理の場合には、

・本人の死亡、破産

・代理人の死亡、破産、後見開始

によって任意代理が終了します(民法111条1項、2項、653条)。

私が気になったのは、上記の②の「代理人の…後見開始」です。

会社と役員等の関係は、委任関係です(会社法330条)。

そうすると、代理人たる取締役等が後見開始の審判を受けたら、任意代理が終了するはず。

「でも、成年被後見人等であることは欠格事由ではないのだから、例外的に任意代理が継続するということか?」

と思ったわけです。

任意代理の終了事由との関係

で、気になって調べてみたところ、一問一答にしっかり明記してありました。

結論から申し上げれば、任意代理の終了事由に関する原則どおり、取締役等が後見開始の審判を受ければ、委任の終了事由に該当し、取締役等の終任事由となる、とのことです。

要するに、今回の改正は、「就任する時に成年被後見人等であっても就任可能(同意等は必要だけど)というだけで、就任後に成年被後見人等になったらやっぱり終任事由になるよ」ということですね。

株主が当該取締役等の続投を望むのであれば、会社法331条の2の同意等を得て再任してくださいと。当然に続投となると、むしろ株主の期待に反するおそれがあるという点も指摘されています。

ちなみに、「取締役等が後見開始の審判を受けても終任事由としない旨の特約」の可否は、民法653条第3号が任意規定か強行規定かという点とあいまって、解釈に委ねられているそうです。

個人的な備忘メモとしての投稿だったので、あまり参考にはならなかったかもしれません。今後もこんな感じの備忘メモ的投稿はたまにあると思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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弁護士 永野達也
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