page3 記憶ノpuzzle
it's the story of 神島 蓮
カタン…
マンションのドアを開けて
照明のスイッチを入れる
「ただ今…」
って言っても自分しか居ない訳だけど
首元のシャツのボタンを緩めて
洗面所で手を洗う
冷蔵庫の中のビールを探って
ひんやりとしたプルトップに手をかける
静かなリビングにプシュッと弾けた音を合図に
疲れた体をソファーに投げた
金曜の夜に一人で寂しくないかと聞かれても
俺はこの暮らしが気に入っている
クラブに入り浸ったりした次期も有ったけど
見たくない物から目を逸らしたら
見たくない物が余計に浮き彫りになるって
途中から気がついた
・
高校3年の夏、
付き合っていた彼女が死んだ
・
パソコンに彼女の面影を記録する事が日課になってしまっていた。
バラバラに砕けた想いを抱えながら
打ち込んだ彼女の記憶は
喉を通り抜けて行く酒みたいに
俺の身体の一部みたいになっている
同窓会だったあの日
「あの頃の夢は?」なんて聞きながら
本当は俺自身が方向を完全に見失っていた
・・・
「夢か・・・」
…カタン
外した時計がテーブルに硬い音を立てる
パソコンになんとなく「夢」と
ワードを打ち込んでみた
「夢のカケラ?」
〈3〉
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