見出し画像

第一回:マイクロフロントエンドとは何か - モノリスからの進化 -

皆さんはこんな経験はありませんか?

「社内の管理画面アプリを開発しているんですが、毎回の機能追加が大変になってきました。新機能を追加するたびに、既存の機能に影響が出ないかヒヤヒヤします。しかも、他のメンバーの作業が終わるまで、自分の担当箇所もリリースできなくて...」

「受注管理システムは3年前にReactで作ったんですが、新しく入った部署が使いたい機能を Vue.js で作りたいって言ってるんです。でも今のシステムに組み込むなら全部Reactで書かないといけなくて...」

このような課題を解決するのが「マイクロフロントエンド」というアプローチです。

身近な例で理解するモノリシックの課題

太郎さんは、30人程度の中小企業で社内の受注管理システムを開発しています。

最初は注文の入力と一覧表示だけのシンプルなReactアプリケーションでした

受注管理システム v1(シンプルな構成)
├── 注文入力フォーム
└── 注文一覧表示

ところが1年経過し、こんな要望が次々と...

  • 「営業部から、顧客管理機能も追加してほしい」

  • 「工場から、生産計画に関する機能も入れてほしい」

  • 「経理部から、請求書発行機能も欲しい」

結果、システムはこうなりました

受注管理システム v2(肥大化した構成)
├── 注文管理
│   ├── 入力フォーム
│   └── 一覧表示
├── 顧客管理(営業部用)
│   ├── 顧客情報入力
│   └── 顧客一覧
├── 生産管理(工場用)
│   ├── 生産計画
│   └── 進捗管理
└── 経理機能
    ├── 請求書発行
    └── 入金管理

すると、こんな問題が発生してきました

  1. 開発効率の低下

    • 顧客一覧の修正をしただけなのに、全機能を再テストする必要がある

    • ちょっとした変更でも、全体をビルドし直すので時間がかかる

    • 新人が入っても、巨大になったコードベースの全体を理解するのが大変

  2. チーム間の調整コスト

    • 営業部向けの機能を先にリリースしたいのに、工場の機能が完成するのを待たないといけない

    • 経理部が急いでほしい修正も、他の機能への影響を確認するのに時間がかかる

  3. 技術的な制約

    • 新しく入った開発者が得意なVue.jsを使いたいと言っても、既存のReactコードに合わせないといけない

    • 部門ごとに異なる要望(「うちはモバイル対応重視」「うちはExcelライクな操作性が重要」)に柔軟に対応できない

マイクロフロントエンドによる解決

では、同じシステムをマイクロフロントエンドで作り直すとどうなるでしょうか?

受注管理システム v3(マイクロフロントエンド版)
├── 共通メニュー(React)
├── 注文管理(既存のReact資産を活用)
├── 顧客管理(営業部の新メンバーが得意なVue.jsで開発)
├── 生産管理(工場独自のUI重視でSvelteを採用)
└── 経理機能(Excelライクな操作性を重視してAngularで開発)

これにより

  • 各部門の画面は独立して開発・リリースできる

  • 部門ごとに最適な技術を選べる

  • 新機能の追加も、既存機能への影響を最小限に抑えられる

具体的なメリット

中小企業のケースで考えてみましょう

1. 段階的なリプレース

古いシステム → マイクロフロントエンド化 → 段階的に新システムに移行
  • 一度に全てを作り直す必要がない

  • 優先度の高い機能から順次移行できる

  • リスクを抑えながら段階的にモダン化できる

2. 柔軟なチーム編成

チームA(2名): 注文管理担当
チームB(1名): 顧客管理担当
チームC(2名): 経理機能担当
  • 機能ごとに独立して開発できる

  • 各チームの都合に合わせてリリース可能

  • 新メンバーも担当機能に集中して学習できる

次回はマイクロフロントエンドについて、その基本概念から導入事例について纏めていきます。

いいなと思ったら応援しよう!