Verve / A Storm in Heaven (1993)
ヴァーヴ(当時は「ザ・」なし)のファースト・アルバム。
アルバム・タイトルどおりの”天国の嵐”や、ジャケットどおりの洞窟の中の炎を想起させるニック・マッケイブのサイケな轟音ギターが生み出すウォール・オブ・サウンドと、呪術的で神秘性をも帯びた、ふてぶてしくも美しいリチャード・アシュクロフトのヴォーカルが、ドラッギー&トリッピーな酩酊感と宇宙的な浮遊感、原始的な恍惚を呼び起こす。
ローゼズやスウェード、レディオヘッドを(のちにミューズも)手掛けたジョン・レッキーのプロデュースにより、即興的に徹底的に実験を突き詰めた本作は、シューゲイザーの衰退とブリットポップの始まりという時代の流れとは離れたところで、初めから孤高の存在であったヴァーヴの姿を生々しく刻んでいる。
壮大なサウンドスケープが描かれる本作を、穏やかに火を消すように締めるラストも壮観。
激動のキャリアを続けたザ・ヴァーヴ。
デビュー作の時点では、のちの彼らの大仰なまでのポップさはまだ息を潜め、代わりにサイケ満載の音像が吹き荒れる。
これこそがヴァーヴ!、まさに”マッド”・リチャード!と、最高傑作として崇めるファンもいるが、たしかにヴァーヴの根幹の部分が一番ストレートに音に出ているのかもしれない。
1作目の時点で天然素材の大きな可能性を感じさせるし、このスケール感はなかなか出せるものじゃない。